ポイント
病院や薬局に行った時、領収書に「初・再診料」「検査」などいくつもの欄があり、そこには「金額」ではなく「点数」が記されています。
しかし「合計点数」と支払う金額は違います。
ではこの「点数」とは何なのでしょうか。保険との関係、医療費の仕組みについて、知っておくべき基礎知識を見ていきましょう。
診療報酬制度とは
健康保険を使って病院などで治療を受けたり薬を貰ったりした時、患者が病院や薬局に支払う金額は実際にかかっている金額の一部、いわゆる自己負担分(1~3割)だけです。
では残りの7~9割は誰が支払っているのでしょうか。これは月々の保険料を収めている「保険者」と呼ばれる団体です。国民保険の場合は自治体、健康保険の場合は勤め先などの健康保険組合ということになります。
そこからのお金の流れは下のようになっています(図1)。
出所)厚生労働省「診療報酬制度について」を基に三菱UFJ国際投信作成
上の図に沿って説明すると、
1.被保険者(患者)は医療保険者に月々「保険料」という形で自治体や企業の健康保険組合などに保険の掛け金を支払っています。
2.そして病気や怪我などの場合に医療機関を受診し、病院などから診察や治療、あるいは薬などを受けることになります。
3.診察など医療行為は「技術やサービス」の提供であり、患者は病院にその対価を支払いますが、これは全額ではなく一部負担金です。年齢や所得などによって1割~3割までの自己負担分を窓口で支払うという形です。
4.病院にとっては窓口で受け取った金額が収入の全てではありません。よって、実際にかかった費用(診療報酬)を保険者に請求します。
その際に審査支払機関を通じて適切な請求かどうかのチェックを受けます。この時、病院が審査機関に提出するのが、「レセプト」と呼ばれるものです。
5~7.審査を通過すれば請求通り、保険者から残りの金額が、再び審査機関を通して医療機関に支払われます。
このような手間のかかる仕組みになっているのは、必要のない医療を提供して診療報酬を不正に請求することがないようにする目的があります。
診察や注射、検査などにかかった費用は、種類によって一律の「点数」が細かく決められています。医療機関は、その月に何点分の技術サービスや費用がかかったかを報告し、1点=10円としてのちに診療報酬を受け取るという仕組みです。
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領収書と点数表の見かた
実際、病院などでもらう領収書の項目ごとの点数を見ることで、どんな医療行為に対してどのくらいのお金を支払っているのかがわかります。
1点=10円で、10円未満は四捨五入して支払い額に反映されます。
ただ、いつでもどこでも同じ点数になるとは限りません。
例えば「初・再診料」の場合は、初診と2回目以降で変わりますし、時間帯によっても違います。例えば平日の場合、同じ病院でも夕方以降になると診療報酬の「時間外加算」が発生することがあります。
これは、病院が閉まった後に対応してもらったという意味ではなく、病院の診療時間内でもある時刻以降は、診療報酬の面では「夜間」とみなされ料金が少し高くなるのです。
何時以降に夜間加算をするかは病院によって違いますが、18時以降とするところが多いようです。病院によっては、「昼間に受診した方がおトク」とも言えます。
事前に医療機関などに確認しておくのも良いでしょう。曜日によって時間帯が異なることも多いですし、早朝の場合も「早朝加算」を設定する病院もあります。
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診療報酬点数の改定
診療報酬点数は、通常2年に一度見直され、改定されます。
医療技術の進歩で同じ治療でもコストが下がったり、逆に新しい技術の場合はその分コストもかかりますから、高い点数を設定しなければなりません。
また、その時々の経済状況も考慮されています。経済状況によっては収入に対して医療費が高くなってしまい、必要な医療を受けられなくなるという事態を防ぐためです。
しかし一方で診療報酬を下げすぎると、病院の収入は減ってしまいます。特に人口の少ない地方のクリニックなどは、経営が困難になってしまう可能性があります。
そのため、診療報酬の改定は両者のバランスを取りながら考えなければならないという側面があります。
また、少子高齢化の影響で、医療費は年々増加しています。
財務省によると、過去10年間で国民医療費は年平均2.4%のペースで増加しています*1。ただ、人口の変化や高齢化を理由とするものだけでなく、新しい医薬品にかかる費用や過去の改定が大きく影響しています。
このような現状のなかで、今のところでは診療報酬の引き下げの必要性が議論されています。
若い世代の負担をどうすれば減らすことができるかが大きな課題にもなっているからです。
近年、ジェネリック医薬品の利用を勧められるのには、このような事情も背景にあります。新薬よりも安い医薬品になるべく多く切り替えることで、医療費を抑えようという狙いです。
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まとめ
ここまで解説してきたように、病院の領収書に記されている点数を見ることで、どんな治療にどのくらいの費用がかかっているのかがわかります。
そして近年では、この診療報酬点数に連動した給付金を受けられるような民間の医療保険も出てきています。
通院1回あたり、あるいは入院1日あたりいくら、といういわゆる「日額型」の保険と違い、実際の診療内容に応じた保険金を受け取れるというものです。
日額型の保険で契約した金額以上に高額の治療を受けることになってしまった場合には、このような形の保険が良い場合もあるでしょう。
しかし保険料が違ったり、保険金の支払いにあたって日額型とは違う条件が設定されていますので、実際にはしっかり検討する必要があります。
また今後、高齢化や景気の変動で、診療報酬点数がどのように変化し、自分が病院に通う時はどのようになるのかについて一度チェックしてみるのも良いでしょう。
*1 出所)財務省「社会保障について②(医療)」