知識や経験を活かして老後も社会参加を続けるために

知識や経験を活かして老後も社会参加を続けるために

定年退職後の日々の暮らしや貯蓄等、生活面や金銭面で老後に不安を感じる人は多いようです。その一方で、高齢化社会においては知識や経験を強みとしたシニアの活躍も期待され、その社会参加を促進する政策も打ち出されています。高齢者となった際に活動の選択肢を広げるためにも、将来を見据えた行動を早めに起こすことを意識してみましょう

奨励される社会への参加

少子高齢化と言われてすでに久しい2019年。高齢者(65歳以上)の人口は3588万人と過去最多となり、総人口に占める割合も28.4%と過去最高を記録しています*1 (2019年9月15日現在)。
現役世代の減少に伴い、様々な分野における人手不足が深刻な問題となっている昨今、政府は地域包括ケアシステムの構築を急務とし、高齢者同士も含めた地域住民の支え合いによるサービス基盤づくりを目指しています。しかし、60代以上の男女を対象にした社会的活動に関する調査では「特に活動はしていない」が 7 割にも及び、活動を行っている人は3割程度にとどまっているのが現状です。活動内容としては「自治会、町内会などの自治組織の活動」が18.9%、次いで「趣味やスポーツを通じた ボランティア・社会奉仕などの活動」が11.0%と、積極性があまり見られない結果と言えるでしょう。

そんな中、厚生労働省では「高齢者生きがい活動促進事業」を進めています。「企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持っていきいきと生活できるよう、有償ボランティ ア活動等による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や 生活支援のサービス基盤となる活動を促進する」*2のが狙いで、生涯現役社会の実現に向けた取り組みを推進したい考えです。実際に地方自治体ごとに対策が練られ、高齢者向けのスキルアップ研修も行われる等、高齢者の社会参加が後押しされています。元気な高齢者が介護の必要な高齢者の支援を行う事例をはじめ、博物館・美術館での案内係や観光地におけるボランティアガイドを担う例も増えており、高齢者の更なる活躍が期待されています

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活動の幅が広がる有償ボランティア

先の調査では、社会的な活動を始めた時期について「60代」「70代以上」「定年退職後」が合わせて約50%と、高齢者もしくはそれに近い段階で活動を始めた人が半数を占めています。

報酬の有無については8割弱が完全な無償と回答*3、半数以上の人が友人や地域とのつながりをメリットとして挙げていることから、ボランティアによって収入を得ることに対しては消極的と言えるかもしれません。

一方で、政府は令和元年版の高齢社会白書において「豊富な知識、経験、能力を有し、かつ 途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年齢者が、JICA海外協力隊として途上国の現場で活躍できるよう、独立行政法人国際協力機構を通じ事業を引き続き推進する」との姿勢も示しています。*4
JICA海外協力隊にはシニア向けの制度*5があり、派遣期間は原則2年で69歳まで応募可能です。住居や渡航にかかる費用の他、現地生活費や経験者手当も支給されるため、一定の収入を得ながら活動を続けることができます。募集分野は医療や農林水産、コンピュータ技術に文化、教育等と多岐にわたり、15年程度もしくはそれ以上の実務経験をもとに求められる知識と技能が比較的高くなっています。
さらに海外派遣のため語学審査もあり、英語レベルは派遣地によってA〈十分なコミュニケーション可〉からD〈日常会話程度〉の区分で必要とされます。また、南アメリカで多く話されるスペイン語、アフリカに多いフランス語も重宝されるため、希望地域を絞ってその言語を勉強しておくと役立つ可能性があります。あくまで一例ですが、このような制度への挑戦を考えるのであれば、応募条件を満たすための早い段階からの対策が鍵となるでしょう

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「社会的処方」による心の健康 海外の事例

高齢者の社会参加を進めるヨーロッパの事例を見てみると、様々な効果がうかがえます*6
イギリスでは、高齢者から相談を受けたかかりつけの医者が、医療的な処置だけでなく、地域でのボランティア活動や運動サークルの紹介等、地域活動への参加を勧める取り組みを進めています。「社会的処方」と名付けられ、もともとは地域単位で自主的に行われていましたが、8割もの患者が救急外来、外来診察、入院の頻度を減らしたという実績が認められ、2018年には保健省の補助金も用意されることとなりました。
オランダには、各自治体の支援のもとにソーシャルヴァイクチーム(社会近隣チーム)と呼ばれる相談対応の医療・介護の専門家チームがあります。このチームが中心となって、主に社会的つながりを失った孤立しがちな高齢者に対する支援を、健康な高齢者が地域ボランティアとして担っています。この「処方による福祉」プロジェクトにより、支援される側も活発になるといった相乗効果も見られ、「福祉国家」から「参加型社会」への移行を進めています。
一方、ドイツでは年金生活者が中心となって、認知症患者等の日常生活支援を行う有償ボランティア団体があります*7要介護者に対して在宅訪問や施設等でのサービス提供を行い、介護士不足を補っています。その一方で、社会奉仕の気持ちだけでは継続が難しいとされ、ボランティアとは言え賃金が支払われている事例の一つとなっています。日本においても、上述の厚労省による促進事業で「有償ボランティア活動等による一定の収入を得ながら」とうたわれていることから、「ボランティア=無償」ではないという事例が増えていくことも予想されます。

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まとめ

2065年には日本の高齢者人口が 38.4%になると見込まれています*8。「今よりもっと活躍するために60代になる前からやっておけばよかったと思うこと」という調査結果*9では、「健康維持のための食生活への配慮や、体力づくりのための運動をすること」「知識・技能を習得すること」「趣味などに力を入れるための資金を貯めておくこと」 が上位を占めており、つまり「健康」「知識・技能」「資金」が老後に向けての3つの柱と言えるのではないでしょうか。
高齢者は社会参加によって孤立せず、生きがいを見つけて心の健康を保つ効果が期待できる他、それが年金以外の収入源にもなり得るといった利点もあります。培った知識と経験を国内外で社会貢献に充てる等、活動の幅を広げるためにも定年退職後のビジョンを持って今からできる準備をしておきたいものです。

*1  出所)『総務省「統計からみた我が国の高齢者」

*2  出所)厚生労働省「高齢者の生きがいづくりについて」

*3  出所)内閣府「平成28年高齢者の経済・生活環境に関する調査結果」第2章「3. 社会的活動への参加に関する事項」の「(6) 活動に対する報酬の有無」

*4  出所)内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)」

*5  出所)JICA海外協力隊「シニア案件」

*6  出所)内閣府「令和元年版高齢社会白書:イギリスの『社会的処方』」

*7  出所)内閣府「平成28年版高齢社会白書:ドイツにおける認知症の人への有償ボランティアのサービス」

*8  出所)総務省「統計からみた我が国の高齢者」

*9  出所)内閣府「平成28年高齢者の経済・生活環境に関する調査結果」第2章「3. 社会的活動への参加に関する事項」の「(10) 60 代前からやっておけばよかったこと」

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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