インフレ懸念等から上昇を続ける長期金利が株価の重しに

インフレ懸念等から上昇を続ける長期金利が株価の重しに

情報提供資料2026年5月18日

上昇する期待インフレ率と長期金利

インフレ懸念による金利上昇が株価を下押し

先週は日経平均と独DAX®が下落しS&P500はほぼ横ばい、日米独の10年債利回りは上昇、為替市場では米ドルが独歩高。中東情勢に伴うインフレ懸念等から各国の長期金利が上昇を続ける中、ハイテク株主導で上昇してきた株価は週末にかけて反落しました。日本では10年物物価連動債が織り込む期待インフレ率が上昇し(1.954%→2.237%)、10年国債利回りも上昇(2.483%→2.717%)。12日の日銀会合「主な意見」(4月分)や14日の増日銀審議委員講演は予想以上にタカ派的であったものの、利上げの遅れへの懸念は根強い模様です。米国では金利先物が織り込む今年末の米政策金利が先週末に3.784%と前週の3.648%より上昇と、市場は利上げの可能性を意識。4月の物価指数の高い伸びや堅調な小売売上高が注目されました。

中東情勢や主要国の金融政策動向に注目

今週も中東情勢や主要国の金融政策の動向が注目点です。米国は20日のFOMC議事要旨(4月分)や19日のウォラーFRB理事講演における物価上振れリスクへの言及が焦点。21日のPMI(5月)では価格関連指数の動きも注目されます。日本では小枝日銀審議委員が21日に講演予定。先週14日の増審議委員と同様にタカ派的なコメントがあれば日銀の6月利上げへの確信が高まるでしょう。欧州では19日にレーンECB理事が講演。6月利上げに向けた姿勢が注目されます。英国では地方選での与党惨敗を受けてスターマー首相おろしの動きが表面化。補欠選挙を通じて与党労働党左派が次期首相との観測が高まれば、財政の悪化懸念から長期金利が上昇するでしょう。(入村)

今週の主要経済指標と政治スケジュール

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金融市場の動向

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日本 金利上昇でハイテク株に逆風、日経平均株価は前週末比下落

金利上昇でハイテク株に重し

先週の国内株はTOPIXが上昇した一方、日経平均株価は下落。グローバルで金利が上昇するなか、今年大きく上昇したキオクシアHDの決算発表を前に警戒感が強まり(図1)、AI・半導体などのハイテク株が軟調でした。

国内債券市場では、原油価格高止まりのほか、政府による補正予算編成の可能性が報じられたことも加わり、財政拡張やインフレ懸念で金利が上昇しています。10年債利回りは2.7%を超え、1997年以来の高水準を更新。国内企業の決算発表がおおむね一巡するなか、先行きも金利上昇がハイテク株の重しとなる可能性に要警戒です。

3月個人消費はマインド悪化で弱含み

3月家計調査における実質消費支出は、前月比▲1.3%と2カ月ぶりに低下。実質賃金は前年比プラス圏で推移しているものの、中東情勢混乱を受けた消費者マインドの冷え込みなどが重しとなった可能性があります(図2)。

4月景気ウォッチャー調査は、総合の現状判断DIが40.8と3月の42.2からさらに悪化。全体として中東情勢による物価高を懸念する声が目立ち、家計・企業・雇用全項目のDIが低下するなど景況感は引き続き弱含んでいます。特に住宅関連の低下幅が大きく、イラン情勢をうけた資材価格高騰や供給制約などで住宅建設自体が難しくなっているとの声も。先行き判断DIは、一部項目で小幅な改善見通しではあるものの、物価の先高観が節約志向を強め、家計消費減となる展開に要注意です。

4月日銀会合は多くの委員が利上げを志向

12日公表の4月金融政策会合における主な意見では、「企業の価格改定行動は積極化しており、物価の上振れリスクは高い」など、多くの政策委員が物価上振れを強く警戒するなか、4月の国内企業物価は前年比+4.9%と3年ぶりの水準まで急上昇。ナフサが同+79.4%と急騰したほか、石油・石炭製品や化学製品の上昇も目立ち、中東情勢悪化の影響が顕在化しています(図3)。今週22日公表の4月全国消費者物価への波及度合いが注視されます。

主な意見では「仮に中東情勢の帰趨が不透明な状況が続いても、次回以降の会合で利上げの判断は十分にあり得る」など、早期利上げを志向する意見も多数みられました。14日の講演で増審議委員も「できる限り早い段階での利上げが望ましい」と発言しており、市場では8割弱の参加者が6月利上げを見込んでいます。今週18-19日のG7中央銀行総裁会議、21日の小枝日銀審議委員の講演など、引き続き日銀高官の発言に注目です。(大畑)

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米国 エヌビディア決算と金利高に身構える米国市場

エヌビディア決算は無難に消化できるか

先週のS&P500は上昇。急騰していた半導体株を中心に、週前半は物価指標の上振れを契機に一時調整も、堅調な企業業績を受けた成長期待は底堅く、反発。しかし、再度のインフレ懸念と金利上昇を向かい風に再度下落する不安定な展開となりました。5月14-15日の米中首脳会談では、双方が安定的な関係性を築く姿勢を示すも、地政学や貿易問題にかかわる具体的な進展は見られず、金融市場の反応は軽微なものに留まりました。

今週は主要経済指標の公表が無く、20日の半導体大手エヌビディアの決算発表が主要な指標となる見込みです。市場の高い期待値(図1)を超える業績見通しを示せるかが、半導体相場の分水嶺の一つとなるでしょう。

インフレ懸念加速で金利高が進展

先週公表の4月消費者物価と生産者物価はいずれも市場予想を上回って加速。一部項目の統計計算上の歪みの影響を除いても、ホルムズ海峡封鎖を受けた資源高の中で、エネルギー価格とそれらの影響を受けやすい運輸や航空運賃価格の上昇が加速をけん引しました。川上側の価格上昇は年後半にかけて消費者価格に波及すると見られ、物価上昇圧力が続くことが予想されます。

市場ではインフレ懸念が加速。年内の利下げ見込みは後退し、足元約半数が年内1回以上の利上げを織り込んでいます。結果、先週は30年債金利は5%超となるなど金利上昇が続き、株式市場への向かい風となるとの懸念が広がり始めています。長期の期待インフレ率が安定している中では拙速な利上げは見込みがたいものの、先週正式にFRB議長として承認されたウォーシュ氏にとっては、難しい舵取りを迫られる門出となりました。

物価高の中でも堅調さ保つ米国個人消費

こうした物価高を受けて実質所得が下押しされる中でも、先週公表の4月小売売上高は前年比+4.9%(前月同+4.2%)と堅調でした。株式相場の上昇による資産高効果や例年より高水準の税還付が上押し要因と見られます。

消費意欲を示す裁量支出項目は衣類や家具が減速も、娯楽用品の支出が加速しており、大きな方向性は見えません。しかし、今後税還付の追い風が剥落するにつれて、ガソリンや食品等の物価高の影響を受けやすい低所得者層を中心に支出抑制姿勢は強まる見込み。今週決算公表予定の米ディスカウント小売大手のウォルマートやターゲットの決算から、全体統計に表れにくい低所得者層の消費実態を探る展開となる見込みです。(牧)

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欧州 ドイツ景気への先行き懸念継続、英首相への辞任圧力強まる

ドイツの5月ZEW景況感期待指数は改善も、景気先行きへの慎重姿勢は継続

12日に公表されたドイツの5月ZEW景況感期待指数は▲10.2と、市場の悪化予想に反して改善も、依然としてマイナス圏で推移しています(図1)。米国・イラン紛争の早期収束期待を背景に、4月の過度な悲観はやや修正されたものの、生産活動の弱含みやエネルギー価格の上昇、域内の2%を上回るインフレが引き続き重しとなっている模様です。加えて、現況指数は▲77.8へと一段と悪化して足元の苦境を反映。年後半に向けた回復には地政学リスクの緩和や財政拡張策の効果発現が不可欠とみられ、ドイツ景気の先行きは楽観し難い状況が続いています。

英国の3月実質GDPは底堅くも、先行き不透明感は根強く

14日に公表された英国の3月月次実質GDPは前月比+0.3%と市場予想(同▲0.2%)を大きく上回り、前月から伸びがやや減速も、拡大基調を保ちました(図2)。サービスおよび建設部門が押し上げに寄与し、公表元は小売やIT関連など幅広いサービスの拡大が主因と指摘。一方、鉱工業部門は弱含み、産業間の乖離が残ります。また、公表元は、3月値には中東情勢緊迫化の影響が一部含まれるものの、限定的と評し、消費減速の影響が前倒し需要などにより相殺された可能性があると示唆。英国景気は、サービス主導で底堅さを維持したものの、外部環境悪化等を背景に先行きの不確実性は根強いままです。イングランド銀行(英国中銀、BOE)のブリーデン副総裁は先週、エネルギーショックの経済への影響を慎重に見極める必要性を強調し、6・7月の利上げは不要との考えも提示。今週はPMIに加え、賃金・物価指標も公表予定であり、景気・インフレ動向を見極める展開が続きそうです。

高まるスターマー首相への辞任圧力、 労働党党首選への動きが加速

英国政局を巡る不透明感も強まっています。7日に行われた地方選挙での大敗を受け、スターマー首相は続投を表明したものの、党内では指導力への不満が顕在化し、交代圧力が高まっています。党首選を見据えた動きも加速するなか、次期有力候補とされるストリーディング保健相は辞任。9月にも労働党党首選が実施されるとの観測も浮上しています。景気の先行き不透明感や利上げ観測の後退も重なり、先週の英国金融市場ではポンド安が進行(図3)。党首選を巡る動向や政権の政策姿勢を注視する状況は続き、当面はポンド相場や英国資産が上値の重い展開となる可能性が高いとみられます。(吉永)

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フィリピン 昨年より低迷していた景気に燃料価格の上昇が追い打ち

GDP成長率はコロナ感染期以来の水準へ低下

不正資金流用疑惑から公共投資が落ち込み昨年後半より急減速したフィリピンの景気。燃料価格上昇という重しも加わり景気は今後いっそう冷え込む見通しです。

今月7日、政府は1-3月期の実質GDPが前年比+2.8%(前期+3.0%)とコロナ感染拡大期以来の水準へ低下したと公表しました。需要側では、民間消費が鈍化し固定資本投資も低迷(図1)。民間消費は前年比+3.0%(同+3.8%)と5年ぶりの水準へ鈍化しました。内訳では食品が同+0.3%(同+3.8%)へ鈍化。食品物価の上昇を受けて中低所得家計が支出を抑制した模様です。運輸や飲食・宿泊も低迷。エネルギー節約に向けて3月に政府が公務員による在宅勤務や週4日出勤制を導入し飛行機を減便した影響とみられます。政府消費は同+4.8%(同+0.7%)へ加速。公共投資を抑制し経常歳出を積み増した2026年予算の執行が始まった影響です。固定資本投資は同▲2.7%(同▲6.4%)と2期連続のマイナス。建設投資が同▲4.5%(同▲9.2%)、設備投資も同▲0.1%(同▲1.7%)と下げ幅を縮めつつ軟調でした。外需では、総輸出が同+7.8%(同+13.3%)へ鈍化した一方、総輸入は同+6.1%(同+3.2%)へ加速しました。

今年のGDP成長率は+3.4%前後へ鈍化か

生産側では、主要部門のほぼ全てが軟調でした。農林漁業は同▲0.2%(同+1.0%)へ反落し、鉱業は同+3.8%(同+5.1%)、製造業も同+0.5%(同+1.8%)へ鈍化しました。建設業は同▲ 2.8%( 同▲ 6.0%) と軟調。公的建設が同▲ 31.5%( 同▲ 38.6%) と低迷し民間建設も同+5.3%( 同+16.8%)へ鈍化しました。サービス部門は同+4.5%(同+4.9%)へ鈍化。政府の経常歳出実行を受けて公共サービス等が加速したものの、運輸倉庫、宿泊飲食、金融保険、不動産等多くの部門が鈍化しました。

民間消費は今後さらに冷え込む見込み。物価上昇による購買力の低下、雇用環境の悪化、中東地域への就労者の帰国による郷里送金の落ち込み等が重しとなるでしょう。4月の総合消費者物価は同+7.2%(3月+4.1%)へ上昇(図3)。運輸燃料が同+65.8%(同+31.3%)へ急伸した影響です。食品も同+6.0%(同+3.0%)へ加速。今後は輸送コストや肥料価格の上昇が同物価をさらに押し上げる見込みです。燃料価格上昇の影響で電力料金や公共運賃の上昇も不可避でしょう。1-3 月期の失業率は5.3%(2025 年平均:4.2%)へ上昇。公共投資低迷に伴う建設部門の雇用の落ち込み等によります。昨秋より急減速した公共投資は今後回復するものの、建材供給の混乱や資材価格上昇が重しとなる見込み。今年通年のGDP成長率は+3.4%前後(昨年+4.4%)と景気は低迷すると予想されます。(入村)

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主要経済指標と政治スケジュール

※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定

注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。

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