ポイント
新生活の準備は、家具や諸手続きと同じくらい「お金の整理」が大切です。引き落とし漏れや二重払いが起きやすく、余計な出費につながります。
この記事では、引越し前後にやっておくと安心な整理の手順を解説します。
新生活前にまずやるべきお金の整理の全体像
整理する際に重要な3つの観点
新生活前の「お金の整理」では、
- 給料などの家計の入口と、引き落としや支払いの出口をそろえて、お金の流れを止めないこと
- ムダな固定費を増やさないこと
- 引越しで起きやすいトラブルを避けること
の3つに分けて考えましょう。特に引越しは、住所・契約・支払いが一気に動くタイミングです。
ここで「どこから引かれて、いつ払うか」を整理すると、引越し後の生活費の管理が楽になります。
整理に必要なもの
用意するのは、情報を集める場所と、書き出す場所です。紙でもスマホのメモでもかまいませんが、引越し中に見失わないように保存しましょう。
まとめておきたいものは、住居や生活インフラの契約内容が分かる書面や画面です。
転居時に契約書面や重要事項の画面が手元にそろっていると、確認漏れが減らすことにつながります。
書類の原本と、契約情報をわかりやすくまとめたものの二種類を用意しておくとよいでしょう。*1
優先順位のつけ方
優先順位は、無いと生活ができなくなるものからの順です。
たとえば、
- 住まい(家賃など)
- 生活インフラ(電気・ガス・水道・通信)
- 収入の受け取り(給料など)
- 毎月の自動引き落とし(保険や奨学金など)
の順です。
また、新生活における支出を見直す際は「何にいくら使っているか」を項目で分けて見える形にしておきましょう。
総務省統計局の「家計消費状況調査」などが参考になります。*2
ここでは地方別、項目別に、世帯(単身)の平均的な支出を知ることができます。
引越し月の資金繰り
引越し前後の1か月は、家計がいちばん不安定になります。
敷金礼金や家具家電、引越し代などの一時的な出費が増える一方で、旧居・新居の家賃や光熱費が重複して発生することもあるためです。
資金が足りなくなると、支払い遅れや延滞のリスクが高まります。
そのため、新生活前にやっておきたいのが「引越し月だけの特別予算」を作ることです。
項目は
- 引越し費用
- 初期費用(家賃・敷金礼金・仲介手数料)
- 家具家電
- 通信工事費
- 当面の生活費
に分け、大まかに合計を出します。そのうえで、最低でも1〜2か月分の生活費は、すぐ動かせるお金(普通預金など)で確保しておくと、予定外の出費が出ても支払いを止めずに済みます。
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給料などの家計の入口と、引き落としや支払いの出口をそろえる
家計管理の準備の進め方
新生活の家計管理においては、給料などの家計の入口と、引き落としや支払いの出口をそろえると良いでしょう。
ここでは、
- 口座を決める
- 支払いを棚卸しする
- 住所変更が必要な契約を洗い出す
の順で進めます。
給料の受け取り口座と生活費口座を決める
最初に決めたいのは、給料が入る口座と、生活費を動かす口座です。自動で引き落とされる支払いは、口座振替にすると納め忘れを防ぎやすくなります。
入口の口座と出口の自動引き落としをつなぐことは、新生活の準備では必要です。
引き落とし先と支払い手段を棚卸しする
次に、現状の引き落とし先と支払い手段をすべて確認します。
ここで大事なのは、支払いの種類を減らすことよりも、「どこから、いつ、いくら落ちるか」を把握することです。
口座振替を使っている支払いは、口座変更が必要になる条件も押さえると手戻りが減ります。
たとえば、日本学生支援機構によると、奨学金の返還では、現在返還している口座と別の口座で返還を希望する場合、口座名義を変更した際に、振替口座の変更手続が必要となる可能性があります。
棚卸しをすることで、引っ越しに伴って支払い方法の変更が必要なものと、不要なものを分けると、手続きが進めやすくなります。
住所変更が必要な契約を洗い出す
住所が古いままだと、重要な案内が届かず、支払いのミスや手続き遅れにつながりますから、住所変更が必要な契約を、家計の入口(給料・返金などの受け取り)と出口(引き落とし・カード決済)で分けて洗い出します。
また、日本郵便は転居・転送サービスを提供しています。
これは、転居届を出すと旧住所あての郵便物を原則1年間、無料で新住所へ転送してくれるサービスです。荷物の転送にかかる費用を抑えることができます。
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月の生活費・固定費を最小限に整える
以前よりも家計が苦しくなる原因
新生活で家計が苦しくなる原因は、単発の出費よりも、毎月出ていく固定費が増えることです。
引越しは契約が増減しやすいために、二重契約などで余計な出費をしてしまうリスクがあります。
このリスクを防ぐためには、まず契約全体を見える化して二重払いを防ぎ、連絡先と支払い情報を整理することが必要です。
毎月の自動引き落としを全部書き出す
固定費の整理は、まず「毎月自動で落ちるもの」を全てリスト化するところから始まります。
- 家賃
- 電気
- ガス
- 水道
- 携帯
- 固定回線
- 保険
- 会費
など、細かくリスト化しましょう。
一人暮らしの光熱費は、目安となる数字を知っておくと、チェック時に役立ちます。
政府統計によると、一人暮らしの水道光熱費の全国平均は1カ月あたり12,816円で、内訳は電気料金6,756円、ガス料金3,056円、水道料金2,282円、その他光熱費721円です。
自分の固定費を書き出したあと、こうした平均と比べて見直しましょう。*3
通信費と光熱費を二重払いしない確認ポイント
二重払いを防ぐコツは、旧居の停止日と新居の開始日を先に決め、請求がいつまで発生するか確認することです。
電気は停止日当日中、ガスは閉栓作業開始まで使えるため、退去日に合わせて止めやすくなります。
ただしガスの開栓は立会いが必要な場合があり、希望日に予約できないこともあるので早めに申込みましょう。
通信は、移転か乗り換えか先に決めます。
光回線は、工事まで2週間~1か月程度かかることがあり、開通前に旧回線を止めるとネットが使えない期間が生まれるので、注意が必要です。
最終請求が終わるまで口座・カードは残し、レンタル機器の返却も期限管理します。
保険と会員費は連絡先と支払いだけ整える
保険や会員費は、住所や電話番号を速やかに変更しないと、更新や重要な案内が届かず、手続きが遅れて追加費用が出ることがあります。
新生活の準備では、まず案内の連絡がつきやすい状態を作ることが必要です。
また、証券口座、クレジットカードなどの金融サービスでは、郵送物が不着になると取引が制限される場合もあるため、住所変更は「資産管理」の作業として扱いましょう。
手続きは、各社のマイページやアプリで完結できる範囲と、本人確認書類が必要な範囲が異なります。
引っ越し前に「オンラインで何が変えられるか」を一度確認し、ログイン情報と登録メールアドレスを整えておくと、繁忙期でも変更漏れを減らせます。
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引越し費用の見える化とトラブル予防
見積書と約款の確認で余計な出費を防ぐ
基本運賃のほかに、梱包、開梱、エアコンの取り外しなどの附帯サービスが入ると、合計が変わります。
約款には、キャンセル料や責任の範囲など、トラブル時のルールが書かれています。
引っ越しのキャンセル料は標準引越運送約款で当日50%以内、前日30%、前々日20%以内と定められています。
また、事業者が附帯サービスに着手していた場合、その料金も併せて請求されることがあります。
契約時に約款と見積書で解約手数料と附帯サービスを確認し、請求の内訳を事業者に確認することで、余計な出費を防ぎやすくなります。*4
キャンセルや追加料金の注意点を押さえる
引越し時は、契約したつもりがないのに料金やキャンセル料が発生している、などのトラブルも起きます。
たとえば、引っ越しをキャンセルした場合に、段ボールの返送料を消費者が負担しなければいけない可能性があります。
さらに、契約は口頭でも成立するため、申し込みと受け取られる発言(「お願いします」など)に注意し、トラブルを防ぐため、契約前には段ボールを受け取らないようにするなどの対策が必要です。
見積り依頼と契約は別であると毅然と対応することで、追加料金の不安を減らせます。*5
貴重品と高額品は申告と記録で守る
引越しでは、貴重品や高額品の扱いをあいまいにしないことが大切です。
現金、貴金属、重要書類、精密機器などは、運ぶ前に自分で管理するか、預ける場合は状態を記録しておきます。
荷物の破損や紛失があった場合、荷物の引き渡し後3カ月以内に申し出ないと事業者の責任が消滅し、保証が受けられません。
引っ越し完了後はすぐに荷物の状態を確認し、貴重品や壊れやすいものはあらかじめ事業者に申告しましょう。*6
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引っ越し前のお金の整理チェックリスト
最後に、引っ越す前に行うべきお金の整理を、チェックリストにまとめました。
- 全体的な整理
支払いの優先順位は決まっているか?
引越し月の特別予算はあるか? - 支払いの入口と出口をそろえる
受け取り口座・生活費口座は決まっているか?
引き落とし先の棚卸はしたか?
住所変更が必要な契約を把握しているか? - 月の生活費・固定費を最小限に
自動引き落としの内容を把握しているか?
通信・光熱の停止日と開始日を確定したか?
保険・会員費の連絡先と支払いを更新したか? - 引越し費用の見える化とトラブル予防
見積書と約款を確認したか?
キャンセル料と追加料金条件を把握しているか?
貴重品・高額品を申告し、状態を記録したか?
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おわりに
新生活の「お金の準備」は、順番が重要です。
入口と出口をそろえ、固定費を最小限にし、費用のルールを確認するだけで、引越し後の不安が減りやすくなります。
まずは、引き落としの一覧を書き出し、住所変更が必要な契約を洗い出すところから始めましょう。
また万が一、引越しでの契約や料金、破損・紛失などで困ったときは、国民生活センターが案内する消費者ホットライン「188(いやや)」などに相談しましょう。*6
*1 出所) 国民生活センター「【若者向け注意喚起シリーズ<No.13>】初めての一人暮らしで気を付けてほしい5大消費者トラブル-入学・就職など新生活のスタートでつまずかないために-」
*2 出所) 統計局 「家計消費状況調査」
*3 出所)e-Stat(政府統計の総合窓口)「1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)」
*4 出所) 国民生活センター「相談事例 > 消費者トラブル解説集>引っ越しのキャンセル料が高い!」
*5 出所) 国民生活センター「相談事例 > 消費者トラブル解説集>引っ越しをキャンセルしたら、契約の際に渡された段ボールの返送料を請求された」
*6 出所) 国民生活センター「注目情報 > 見守り情報 > 見守り新鮮情報 一覧」










