日本国内に住む人は全員、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられています。
しかし、仕送りやアルバイト代をやりくりしながら生活する大学生も多く、「国民年金の保険料を払うのは正直厳しい…」と感じることは珍しくない状況です。
そこで、収入の少ない大学生には、国民年金の支払いを猶予してもらえる制度があります。
この制度を利用すれば、将来の年金受給資格を守りつつ、在学中の負担を軽くすることができます。
では万が一、未納のままにしておいたら、どうなるのでしょうか。
大学生が知っておきたい年金の仕組みについてわかりやすく解説します。
大学生の収入と支出
まず、大学生の収入と支出はどの程度なのでしょうか。
独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度 学生生活調査結果」から、2022年度の収支をみていきましょう。*1
大学生の収入
昼間部の大学学部生の収入は以下の図1のようになっています。
図1 大学学部生の収入
出所)独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度 学生生活調査結果」(2024年3月)p.9
令和4年度(2022年度)の収入総額は196.7万円で、そのうち最も大きな割合を占めているのは「家庭からの給付」の109.7万円(全体の約55.8%)、次が「奨学金」で40.8万円(約20.7%)、「アルバイト収入」が37.6万円(約19.1%)、「定職収入・その他」が8.7万円(約4.4%)となっています。
学生は学業が本分なので、授業の合間にするアルバイトにも限界がある状況がみえてきます。
大学生の支出
次に、支出はどのくらいなのでしょうか。
下の図2は、住居形態別の支出を表しています。
図2 学生の支出
出所)独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度 学生生活調査結果」(2024年3月)p.7
このうち、一番左の大学学部(昼間部)にフォーカスしてみましょう。
「自宅」の場合には生活費が42.4万円、学費が121.8万円で、計164.3万円です。
一方、「アパート等」では生活費が107.2万円、学費が105.2万円で、計212.4万円となっています。
「自宅」と「アパート等」では生活費に差があり、「アパート等」で暮らす学生の支出は、先ほどみた収入額196.7万円を上回っています。
以上のことから、特に実家を離れてアパートで暮らす大学生の苦しい経済状況が窺えます。
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年金の仕組みと保険料
ここでは、年金の仕組みと保険料についてみていきます。
年金の仕組み
若いときに公的年金制度に加入して保険料を納め続ければ、年をとったとき、病気やケガで
障害が残ったとき、家族の働き手が亡くなったときに、年金を受け取ることができます。*2
公的年金は、下の図3のように「2階建て構造」になっています。
図3 公的年金の「2階建て構造」
出所)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」p.3
1階部分の国民年金(基礎年金)は、国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が被保険者です。
65歳になると、加入期間 や支払った保険料に応じて国民年金(基礎年金)を受け取ることができます。
会社員や公務員は、これに加えて、2階部分の厚生年金保険に加入します。
そうすると、国民年金(基礎年金)の上乗せとして過去の報酬(給与)と加入期間に応じた報酬比例年金を受け取れるようになります。
年金の保険料
国民年金(基礎年金)の老齢年金を受け取るためには、原則として、保険料を納付した期間と免除または猶予された期間を合算して10年の年金加入期間が必要です。
国内に住むすべての人は、20歳になった時から保険料の納付が義務づけられています。*3
ただし、学生には、申請すれば在学中の保険料の納付が猶予される制度があります。
ちなみに、2025年度(令和7年度)の国民年金保険料の金額は、1か月あたり17,510円です。*4
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「学生納付特例制度」とは
学生が在学中の保険料の納付が猶予される制度は、「学生納付特例制度」といいます。
その内容はどのようなものでしょうか。
控除される「学生」とは
「学生納付特例制度」の対象となる学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および認可を受けた各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する方で夜間・定時制課程や通信課程の方も含まれ、前年所得が一定基準以下の人です。
ただし、学校教育法で規定されている修業年限が1年以上の課程がある学校に在籍していることが条件です。*5
前年所得の基準は、次の計算した金額以下です。
128万円+扶養親族等の数×38万円
手続き方法
申請手続きには、申請書による申請と電子申請があります。また、「ねんきんネット」の画面上で申請書を作成することもできます。
それぞれの手続き方法を見ていきましょう。
- 申請書の入手
申請書は、市(区)役所や町村役場の国民年金窓口、年金事務所、日本年金機構ホームページで入手できます。 - 申請書の記入
記入例を参考に申請書に記入します。 - 申請書の提出
提出先は、住民票を登録している市(区)役所または町村役場の国民年金窓口です。
申請の際には、学生証など、学生であることを証明するものが必要です。 - 審査結果の確認
申請後、日本年金機構から「承認通知書」または「却下通知書」が届きます。
・「承認通知書」が届いた場合、承認期間は4月~翌年3月の1年間です。その時点で既に保険料を納めた月分は、学生納付特例の期間にはなりません。
・「却下通知書」が届いた場合、保険料を納付しなければなりません。
- マイナンバーカードを準備し、マイナポータルへログインします。
- マイナポータルのトップ画面の「年金」を選択し、「国民年金保険料の免除」から希望する手続きを選択します。
- 案内に従い必要事項を入力します。
申請の際は、在学期間がわかる学生証の画像(裏面に有効期限、学年、入学年月日の記載がある場合は裏面も含む)、または在学証明書の画像をアップロードする必要があります。
-
「ねんきんネット」の画面上でも学生納付特例申請書を作成することができます。*3
- 必要項目を入力のうえ、印刷用ファイルをダウンロードし、届書を印刷します。
- 印刷した届書に必要事項を記入します。
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口に持参するか、郵送します。
手続きをしないとどうなるか
年金は、老後に受け取るだけではありません。*5
国民年金加入中の病気やけがで一定の障害状態にある間は、障害基礎年金を受け取れます。
しかし、「学生納付特例制度」の手続きをしないまま保険料を納めていないと、万一、病気やけがで障害が残ったときに、障害基礎年金が受け取れなくなる可能性があります。
ちなみに、令和7年度(2025年度)の障害基礎年金の年額は、1級が1,039,625円、2級が831,700円です。
承認された場合、将来受け取る年金に影響はあるのか
「学生納付特例制度」が承認され、保険料を払っていない期間も、将来受け取る年金の受給資格期間に算入されます。
ただし、年金額には反映されません。
年金保険料の「納付」「学生納付特例」「未納」の違いは、下の表1のとおりです。
(注) 障害基礎年金および遺族基礎年金を受け取るためには一定の要件があります。
出所)日本年金機構「国民年金保険料の納付が猶予される学生納付特例制度のポイント 令和7年度版」p.3
学生納付特例の承認を受けている期間中の保険料は年金額に反映されないため、保険料を全額納付したときに比べて、将来受け取る老齢基礎年金額は少なくなります。
ただし、承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納めること(追納)ができます。その場合、承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に追納する場合は、承認当時の保険料に経過期間に応じた加算額がプラスされます。
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おわりに
国民年金の保険料は、大学生にとって決して軽い負担ではありません。
しかし、「学生納付特例制度」を活用すれば、将来の年金受給資格を無理なく確保することができます。
一方、未納のままにしておくと、万が一のときに障害年金を受け取れない場合もあり、将来に大きな影響をおよぼす可能性もあります。
学生生活に追われていても、20歳になったら、自身の年金制度について確認することが将来の安心につながります。
*1 出所)独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度 学生生活調査結果」(2024年3月)p.7, 9
*2 出所)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」p.2, 3
*3 出所)日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」(2025年9月11日)
*4 出所)日本年金機構「国民年金保険料」(2025年4月1日)
*5 出所)日本年金機構「国民年金保険料の納付が猶予される学生納付特例制度のポイント 令和7年度版」p.2, 3










