投資初心者は、早く大きな利益を得ようとするあまり、かえって多額の損を出してしまいがちです。「長い目で見て利益を得る」ことを意識して、リスクを抑えた投資を心がけましょう。
本記事では、堅実にリスクを抑えた投資を行うために、投資初心者が気をつけるべきことを解説します。
投資初心者が気をつけるべき主なポイント
初心者の方が投資に取り組む際には、特に以下のポイントを意識するとよいでしょう。長期的な目線で、堅実にリスクを抑えて利益を得られる可能性が高まります。
- 余裕資金で投資をする
- さまざまな資産に分散して投資をする
- 短い期間で大きな利益を得ようとしない
- 下落したときに焦って売らない
- 投資詐欺に注意する
余裕資金で投資をする
株式や投資信託などの投資には、生活に必要なお金をつぎ込んではいけません。
近いうちに使う予定がなく、なくなってもすぐに困ることはないお金は「余裕資金」と呼ばれています。投資は余裕資金だけを用いて行うのが鉄則です。
どこまでが生活に必要なお金で、どこからが余裕資金なのかは、毎月の生活費の額や将来的なライフプランなどによって決まります。
特に、将来的に大きな買い物(家や車など)をする予定がある場合は、それに充てるお金も踏まえて投資に回せる金額を考えましょう。
さまざまな資産に分散して投資をする
投資にはリスクが伴い、購入した株式などの価値が大幅に下落する可能性もあります。そのため、さまざまな資産に分散して投資をすることが大切です。
たとえば、A社の株式に投資資金全額をつぎ込んでいたとします。もしA社が倒産すれば、株式の価値はゼロになり、投資資金をすべて失ってしまいます。
これに対して、投資資金の10%ずつを用いて、A社を含めた10社の株式を購入していた場合を考えます。この場合、A社が倒産して株式の価値がゼロになっても、他の9社の株式の価値が変わらなかった場合、失う投資資金の割合は10%だけで済みます。
株式と債券、国内の資産と国外の資産など、多様な資産(特に値動きが異なる資産)を組み合わせて投資をすると、特定の資産の価値が下落しても他の種類の資産は価値が上がることがあるなど、大幅に損をするリスクを抑えられます。
自分で銘柄を選ぶのが大変なら、さまざまな資産を分散して組み込んだ投資信託を購入するのもよいでしょう。
短い期間で大きな利益を得ようとしない
短期間で求める利益が大きいほど、大きな投資のリスクを取る必要があり、その分うまくいかなかった場合の損失も大きくなります。
たとえばFXやCFD、株式先物などのレバレッジ取引(=借金をして投資額を増やす取引)などは証拠金を差し入れて差金決済する金融取引で、株式や債券など資産の裏付けのある有価証券を売買する金融取引とは全く異なります。短期間で大きな利益を得られる可能性がある一方で、元手の大半を失ってしまうリスクだけにとどまらず、レバレッジをかけすぎて損失が膨らんで決済期限を迎えた場合、巨額の借金を負ってしまうことも往々にしてあります。投資初心者の方が、これらのハイリスクな取引に手を出すのはお勧めできません。ご注意ください。
投資は、すぐにお金が2倍、3倍……と増えていくものではありません。10年、20年……と長い時間をかけて、少しずつ利益を積み重ねていくものです。
短い期間で大きな利益を得ようとせず、長い目で見て利益を得ることを目指しましょう。
下落したときに焦って売らない
株式や債券などの資産の価値は、日々の相場状況によって変動します。ネガティブなニュースが出た場合などには、1日で大幅に下落することもあります。
相場が下落した際、これ以上損をしたくないと思って、持っている株式などを売ってしまう方がよく見られます。
こうした行動は、デイトレーダー(=毎日株式などを取引する人)であれば合理的かもしれませんが、長期投資をしている場合は適切とは言えません。過去のデータから長い目で見れば一時的な調整で下落してもその後は元に戻り、むしろ値上がりする可能性もあるからです。
買った株式や債券などの長期の資産価値を意識して投資していれば、一時的な相場の下落に反応し、焦って株式や債券などを売却して利益や損失を確定する必要はありません。腰を据えてどっしり構えるつもりで投資に取り組みましょう。
投資詐欺に注意する
投資初心者をターゲットとする投資詐欺が横行しています。知り合った異性やタダで物品がもらえるセミナーなどを入口とする古典的な詐欺手法に加え、近年ではSNSやネット上での相手から取引を勧められて騙されるケースが急増しています。
投資詐欺に共通している特徴は、すぐに大きな利益を得たいという甘い考えに付け込んだ上で、特別な幸運がすぐに逃げてしまうと思わせ焦らせることです。「確実に儲かる」、「1年で資産が倍になる」、「あなただけ特別に」、「今だけ限定で」、「皆やっている」などの誘い文句を用いたり、複数の登場人物が入れ替わり立ち替わり勧誘したりして、巧みにあなたを騙そうとしてきます。
そのほとんどすべては、金融庁の登録を受けずに営業している違法業者です。
投資詐欺に引っかからないようにするためには、「投資には必ずリスクがある」「甘い話には必ず裏がある」と十分に理解することが大切です。また、すでに取引実績のある信用のおける金融機関や大手のネット証券などで、小口での取引をすることで投資のイロハを学ぶことや、取引する相手の社会的な信用(登録や免許、実体のある会社施設、取引実績)に着目することも重要です。
SNS上でよさそうに見える投資話を持ち掛けられても、絶対に応じてはいけません。もしその話が本当なら、SNS上で見ず知らずの人を誘ったりせず、自分で投資をして利益を得ているはずです。
SNS上で投資を勧誘する人の多くは、参加者をだまして不正な利益を得ようとする隠された意図を持っています。「自分だけは騙されない」などと過信せず、投資詐欺である可能性を強く警戒しましょう。
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初心者に向いている投資方法
初心者の方が投資で堅実にリスクを抑えて利益を積み重ねるためには、以下のような方法が効果的です。
- インデックス型の投資信託:自動的に分散投資ができ、管理費用もアクティブ型の投資信託と比べ安い傾向
- 自動積み立て:手間が少なく、高値掴みしにくい
インデックス型の投資信託:自動的に分散投資ができ、管理費用もアクティブ型の投資信託と比べ安い傾向
「投資信託」とは、投資家から集めた多額のお金をまとめて、専門家が運用する投資商品です。
投資信託にはさまざまな種類がありますが、その中でも「インデックスファンド(インデックス型)」と呼ばれる投資信託は初心者に向いています。
インデックスファンドには、日経平均株価やNYダウなどの指数(=市場全体の値動きを表す数値)に連動するように株式などが組み込まれています。自分で細かく銘柄を指定しなくても、市場全体へ自動的に分散投資ができるため手軽で便利です。
投資信託では信託報酬などの管理費用が発生しますが、管理費用が安い傾向にあることもインデックスファンドの大きな特徴です。近年では管理費用が年0.1%未満のインデックスファンドも登場しており、コストを抑えながら長期投資に取り組むことができます。
自動積み立て:手間が少なく、高値掴みしにくい
株式などの市場が日々変動する中で、「値下がりしたタイミングで買おう」などと考えても上手くいくとは限りません。
特に初心者の方にとっては、購入のタイミングを見極めるのはかなり難しいでしょう。毎日市場の値動きを観察し続けるのも大変です。
初心者の方にとっては、同じ投資信託などを定期的に定額買い続ける「自動定額積み立て」が有力な選択肢となります。
あらかじめ決めたタイミング(例:毎月○日など)で定額を購入し続けるので、市場の値動きを気にする必要がありません。価格が高いときにも購入しますが、安いときにも購入するので、全体として高値掴みのリスクを抑えられます。
NISAの「つみたて投資枠」は、投資信託の自動積み立てに限って利用することができます。
これから投資を始めようとする方や、始めたばかりの方は、NISA口座を開設して「つみたて投資枠」を利用し、投資信託の自動積み立てに取り組んでみましょう。
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まとめ
初心者でも投資によってリスクを抑えて堅実に利益を得るには、長期的な視点を意識することが大切です。
すぐに大きな利益を得ようとせず、インデックス型の投資信託や自動積み立てなどを活用して、長い目で利益を積み重ねていきましょう。
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。










