ポイント
NISAは非課税で運用できる便利な制度ですが、いざというときにお金を引き出せるのか気になる人もいるでしょう。資金が必要になったときに備えて、仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、NISAの引き出し方法や制限の有無、注意点などを解説します。
NISA口座の商品は、いつでも売却して引き出せる
NISA口座で運用している商品は、いつでも非課税で売却できます。*1
2024年にスタートした新しいNISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがありますが、いずれも資金の引き出しに制限はありません。
つみたて投資枠または成長投資枠で保有中の投資信託は、全部でも一部だけでも売却できます。一部売却の場合は、金額または口数を指定して売却注文を出すのが一般的です。*2
成長投資枠で保有している株式は、通常の株取引と同じように成行注文や指値注文で売却できます。
売却後も積み立ては継続される
つみたて投資枠や成長投資枠で積み立てている投資信託を売却する場合、何もしなければ売却後も積み立ては継続されます。売却後に積み立てを終了する場合は、積立設定を解除しなくてはなりません。*2
ただし、将来に向けて資産形成に取り組んでいる場合は、途中で積み立てをやめてしまうと値上がりした場合に得られる複利効果が小さくなってしまいます。複利とは、運用で増えた利益を元本に加えて運用を続ける方法です。積み立てを続けて元本が大きくなるほど、その分複利効果も大きくなります。
資金が必要になったときに引き出すのは問題ありません。ただし、「資産が増えた」という理由だけでNISAの商品を売却したり、積み立てを終了したりすると複利の効果を弱めてしまうため、慎重に判断する必要があるでしょう。
売却分は非課税保有限度額の再利用が可能
NISAでは、生涯を通じての非課税保有限度額が設けられています。上限は1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円が上限です。*3
NISA口座で運用中の商品を売却した場合、翌年以降に売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。

出所)金融庁「NISAを知る」
たとえば、簿価100万円の商品を売却した場合、売却金額に関係なく翌年復活する非課税投資枠は100万円となります。
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NISAで投資したお金を出金する方法
NISAで投資したお金を引き出すには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、NISA口座で運用している商品を現金化して出金するまでの流れと注意点についてみていきましょう。
売却注文から出金までの流れ
オンライン取引の場合、NISAで投資したお金を引き出す手順は以下のとおりです。
- 金融機関の取引画面にログインして売却注文を出す
- 売却代金が証券口座に反映される
- 出金依頼をする
- 指定口座に入金される
まずはNISA口座で運用中の株式や投資信託を売却する必要があります。金融機関の取引画面にログインし、売却する商品を選択して売却注文を出しましょう。*4
売却注文が約定すると、数日後に売却代金が証券口座に反映されます。その後、金融機関の取引画面で出金依頼をすると、指定の銀行口座に入金されます。
運用商品の売却注文方法や出金手続きの方法は金融機関によって異なるため、事前に流れを確認しておくとよいでしょう。
投資信託は注文時の基準価額で売却できない
投資信託は、売却注文時の基準価額で売却が成立するわけではない点に注意が必要です。*4
基準価額とは、投資信託の一口あたりの値段のことです。(通常1万口あたりで公表されます。)投資信託を売却する際は、基準価額で取引が行われます。基準価額が更新されるのは1日に1回で、公表されるのは投資信託の取引申込を締め切った後です。そのため、投資家は当日の基準価額がわからない状況で売却注文を出すことになります。*5
また、投資信託の売却代金は、売却注文が成立する約定日の基準価額をもとに決まります。約定日は売却注文を出した日の当日、翌営業日、翌々営業日など商品によって異なります。(注文日の受付締め切り時刻も金融機関により異なり、時刻を過ぎると翌営業日の受付となりますので、ご留意ください。)*4
入金まで日数がかかる
売却注文を出してから資金が口座に入金されるまでは、数日から1週間程度かかるのが一般的です。運用商品の現金化、証券口座から指定口座への入金にかかる期間は、売却する商品や金融機関によって異なります。*4
必要なお金をすぐに引き出せるわけではないため、余裕をもって手続きを行うことが重要です。
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NISA口座の商品を売却すると手数料はかかる?
NISA口座での売却で手数料がかかるかどうかは、金融機関によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
投資信託の場合、ファンドによっては解約時に「信託財産留保額」が差し引かれることがあります。
信託財産留保額とは、投資信託を解約する際に手数料とは別に徴収される金額です。*6
信託財産留保額がかからないファンドも多くあるため、投資する前に目論見書などで確認しておくとよいでしょう。
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旧NISA(つみたてNISA・一般NISA)の商品は引き出せる?
2024年初から新しいNISAが始まりましたが、2023年末までの旧NISA(つみたてNISA・一般NISA)で保有している商品は、非課税期間が終了するまではそのまま保有できます。非課税保有期間はつみたてNISAが購入から20年間、一般NISAが5年間です。*7
旧NISAも引き出しに制限はなく、いつでも売却して出金することが可能です。
旧NISAの非課税期間終了後について
旧NISAの商品をそのまま保有した場合、非課税期間終了後に課税口座に移管されます。移管時の時価が取得金額になり、その後値上がりした場合は利益に対して課税されます。*2
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まとめ
NISAで投資したお金は、いつでも売却して出金が可能です。制度上の引き出し制限がないため、急に資金が必要になった場合にも対応できます。ただし、売却注文から出金までは数日から1週間程度かかる点に注意が必要です。
また、途中で売却したり、積み立てをやめてしまったりすると値上がりしている場合の複利の効果が弱くなってしまいます。NISAは長期的な資産形成を目的とした制度であり、投資開始時の趣旨を思い出して、安易な引き出しは避け、計画的に利用することを心掛けましょう。
*1 出所)投資信託協会「NISAについてのQ&A(Q.NISA口座の商品はいつでも売却できますか?)」
*2 出所)三菱UFJ eスマート証券「NISAを売却する場合に注意したいこと」
*3 出所)金融庁「NISAを知る」
*4 出所)三菱UFJ銀行「つみたてNISA(積立NISA)を途中で引き出す方法は?タイミングやデメリットも解説!」
*5 出所)投資信託協会「投資信託の基礎知識」
*6 出所)三菱UFJアセットマネジメント「用語集(信託財産留保額)」
*7 出所)金融庁「2023年までのNISA」