金利のある世界とは 私達の生活への影響は何がある?

金利のある世界とは 私達の生活への影響は何がある?

日本は長期にわたって低金利が続いてきました。しかし、2024年以降は日銀が金融政策を変更したことで「金利のある世界」に移行しつつあります。市場金利の上昇は、私達の生活にどのような影響を与えるのでしょうか。

この記事では、日本で金利が上昇している理由や金利のある世界で私達が取るべき行動について解説します。

金利の基本的な仕組みと役割

金利のある世界の影響を理解するために、まずは金利の基本的な仕組みと役割について確認しておきましょう。

そもそも金利とは

金利とは、お金を借りたときに支払う利息の元本に対する割合です。通常はパーセント(%)で表記します。

利息は、お金の貸し借りにおいて、借りた人が貸した人へ支払う対価(レンタル料)を指します。そして、借りた金額に対してどれくらいの割合で利息(利子)が発生するのかを表すのが「金利」です。*1

金利が年10%で、1年後に返済するという条件で1万円を借りる場合、借り手は元金1万円と利息1,000円(1万円×10%)の合計1万1,000円を返すことになります。

金利は銀行預金や債券、各種ローンなど、さまざまな場面で使われます。

金利は誰が決めているのか

預金金利や貸出金利は、日銀が設定している政策金利に基づいて、それぞれの金融機関が決定しています。

政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目標を達成するために、中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利(誘導目標金利)です。*2

一般的に、好景気のときはインフレを抑制するために政策金利を引き上げます。反対に、不景気のときは経済活動を活性化させるために政策金利を引き下げます。

政策金利と長期金利の違い

長期金利とは、期間1年以上のお金の貸し借りに使われる金利です。代表的なものは10年物の国債利回りで、長期金利の指標としてよく用いられます。*3*4

政策金利(短期金利)は日銀の金融政策によって設定されますが、長期金利は債券市場の取引に応じて決定されるのが違いです。景気の先行きや物価上昇の予測を反映して変動するため、長期金利は「経済の体温計」と呼ばれることがあります。

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日本が「金利のある世界」へ移行している理由

日本が金利のある世界へ移行している背景には、日銀の金融政策の変更があります。ここでは、マイナス金利解除後の日銀の金融政策の流れと今後の見通しについて説明します。

2024年以降の日銀金融政策の流れ

日銀はマイナス金利などの金融緩和策を長く続けてきましたが、2024年に入り、日本の金融政策は大きな転換点を迎えました。*5
2024年以降、日銀の金融政策決定会合における決定内容は以下のとおりです。

  • 「2024年3月19日:マイナス金利解除、17年ぶりの利上げへ」
  • 「2024年7月31日:政策金利の引き上げ、国債買入額の半減へ」
  • 「2025年1月24日:政策金利を追加で0.25%引き上げ」

日銀が掲げる「2%の物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況になったとして、2024年3月にマイナス金利政策を解除しました。

その後も追加利上げを行い、2025年1月の会合では政策金利を17年ぶりの水準となる0.5%程度に引き上げることを決定しました。

日銀金融政策の今後の見通し

日銀は、2025年3月に開いた金融政策決定会合で、いまの金融政策を維持することを決めました。
米国のトランプ政権が関税政策を打ち出していることから、その影響を見極めることが狙いだと考えられます。

植田総裁は、会合後の記者会見で「経済・物価見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになる」*6と述べています。

ただし、2025年4月2日にトランプ政権が表明した「相互関税」の影響で、日銀の追加利上げの時期は先送りされるとの見方が広がり、5月の金融政策決定会合では追加利上げ見送りが今後の動向を注視する必要があるでしょう。

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金利上昇が私達の生活に与える影響

金利が上昇すると、私達の生活にはさまざまな影響が現れます。ここでは、「住宅ローン」「預貯金・保険」「物価」の3つについてみていきましょう。

住宅ローン

住宅ローンの金利タイプは、変動金利と固定金利の大きく2つに分けられ、借り手側の状況としては、これから住宅ローンで借りる人と既に借りている人に分けられます。

変動金利は、参照金利として短期プライムレート(1年未満の貸出に適用する最優遇金利)をもとに決まることが多いです。短期プライムレートは政策金利の影響を受けるため、日銀が利上げを実施すると、変動金利型の住宅ローン金利が上昇するかもしれません。*7

固定金利は、長期金利を基準に決められています。そのため、一般的に変動金利よりも借入時の金利は高めに設定されています。

変動金利で新たに借り入れする人や既に借り入れている人は、今後の金利上昇の幅や、何を参照金利としているか等に注意を払う必要があります。一方で、新たに固定金利で借り入れする人は借入金利の上昇で、借りにくくなるという影響が生じます。
しかし、固定金利で既に借入れしている人は、借入時に金利が固定されているため、影響が及びません。

預貯金・保険

金利が上昇すると、預金金利が引き上げられる可能性があります。2025年1月に日銀が利上げを発表した際にも、複数の銀行が普通預金の金利引き上げを発表しました。

また、保険商品にもプラスの効果が期待できます。「個人年金保険」や「学資保険」などの予定利率(利回りに相当するもの)を引き上げる動きが出始めました。

また、新規発行される国債などの利率が上がり、利子収入が増える可能性があるため資産運用にプラスの効果があります。ただし、基本的には金利が上がると債券価格が下がります。満期まで持てば原則として元本が戻る債券ですが、途中売却すると、元本割れになる可能性があるので注意が必要です。

物価

一般的に、金利上昇が続くと景気の過熱感が抑制されて、やがては物価の下押し圧力となることが知られています。例えば、個人で借りるローンの金利が上昇すると、住宅や車などの購入資金を調達しにくくなり、消費行動や購入意欲が抑えられます。こういった、買い控えと呼ばれる現象が発生して物が売れにくくなります。販売側は売上確保のためにセールや割引などをして商品の値下げをせざるを得ない状況に陥ります。そういった理由から、日銀の利上げが続くと、物価の下落につながる可能性があると考えられるでしょう。

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「金利のある世界」で私達が取るべき行動は?

金利のある世界では、金利上昇による影響を理解したうえで、次のような行動を取る必要があるでしょう。

住宅ローンの繰り上げ返済・借り換えを検討する

変動金利型の住宅ローンは、政策金利が上昇すると適用金利が上がり、金利負担が増える可能性があります。将来の金利上昇による返済額の増加を防ぐためには、ローン残高を減らしておくことが有効です。繰り上げ返済をうまく活用してローン残高を減らすことで、金利上昇による影響を小さくすることができるでしょう。

すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる場合は、他の金融機関で固定金利に切り替えることも選択肢になります。変動金利よりも借入時の金利は高めですが、固定金利期間中は金利上昇リスクを回避することが可能です。

家計を見直して無駄な支出を抑える

金利が上昇すると、住宅ローンや生活費などの負担が増加する可能性があります。家計を見直し、無駄な支出を抑えることで、金利上昇による負担を軽減することができるでしょう。

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まとめ

日銀がマイナス金利を解除して利上げに転じたことで、金利のある世界への移行が進んでいます。金利が上昇すると、私達の生活にさまざまな影響が出る可能性があります。金利の仕組みや影響を正しく理解し、適切に対応することが大切です。

*1 出所)三菱UFJ銀行「金利とは?利息の計算方法など仕組みや注意点をわかりやすく解説!

*2 出所)三菱UFJ銀行「政策金利

*3 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「長期金利(ちょうききんり)

*4 出所)日本銀行「長期金利

*5 出所)三菱UFJ銀行「【2025年最新】住宅ローンの金利は今後どうなる?今後の金利上昇リスクを踏まえた住宅ローンの選び方

*6 出所)日本銀行「総裁記者会見(2025年3月21日)」p.1

*7 出所)三菱UFJ銀行「利上げとは?住宅ローンや為替・株価・物価に与える影響をわかりやすく解説

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