国債の金利はどう決まる?長期金利との関係は?

国債の金利はどう決まる?長期金利との関係は?

国債の金利や長期金利は、私たちの生活や経済に大きな影響を与える重要な指標です。しかし、その仕組みや決定要因について詳しく理解している人は少ないかもしれません。

この記事では、国債の基本的な仕組みから金利の決まり方、長期金利との関係、私たちの生活に与える影響についてわかりやすく解説します。

国債の基本的な仕組みと役割

まずは国債の基本的な仕組みや種類、金利についてみていきましょう。

国債とは

国債とは国の発行する債券です。
日本では、国が不足する収入(歳入)を補うために国債を発行しています。*1

財務省の資料によれば、令和6年度一般会計歳入における公債金(国債発行による収入)の割合は31.5%(35兆4,490億円)となっています。国の歳入の3割は国債発行によってまかなわれている状態です。

出所)財務省「財政に関する資料

国債は銀行や証券会社などの金融機関が入札で国から購入し、金融機関が保険会社などの機関投資家や個人投資家に販売します。
保有期間中は定期的に利子を受け取ることができるため、投資家からみると国債は投資対象となる金融商品となります。

上記から、国債には「国が不足する歳入を補う」、「金融商品として運用先になる」という2つの役割があるといえるでしょう。

国債の種類

国債は、発行から満期までの期間に応じて以下の4種類に区分できます。

この記事では、長期金利との関連性が深い10年満期の長期国債を中心に解説していきます。

国債の金利とは?

国債の金利という言葉については、大きく二つの意味合いで使われることがあるため、区別に注意が必要です。

まず、「表面利率」「利率」「クーポンレート」という国債発行時に決められた利息の割合を示す場合です。
これらは、利付債について半年毎に支払われる利子の大きさを表すものです。具体的には、固定利付債は額面金額に対する1年分の利子がパーセント表示で示されており、例えば額面金額100万円につき1年間に2万円(半年毎に1万円ずつ)の利子が支払われる場合、表面利率(利率、クーポンレート)は2%となります。国債の表面利率は、その国債が発行された時の市場の実勢により決定され、償還まで変わりません。*2

一方で、国債に投資した場合の収益率のことを「利回り」といい、こちらも金利と呼ぶ場合があります
利回りは、以下の計算式で算出できます。

表面利率とは、発行時に決められた利息の割合です。国債は債券市場で売買されるため、その価格は日々変動します。

なお、上記の式からわかるとおり、国債の価格と金利の間には、価格が上昇すると金利は下落し、価格が下落すると金利は上昇するという関係があります。*3

国債の金利はどう決まる?

国債の金利が決まる要因は主に次の3つです。

  • 需要と供給のバランス
  • 日銀の金融政策
  • 国の財政政策

それぞれ詳しくみていきましょう。

需要と供給のバランス

国債の金利は、債券市場における需要(買い手)と供給(売り手)のバランスに大きく左右されます。具体的には、次のような仕組みがあります。

  • 「国債の需要が弱い(≒買い手は少)→国債価格は下がる(≒金利(利回り)上昇)」
  • 「国債の需要が強い(≒買い手は多)→国債価格は上がる(≒金利(利回り)低下)」

国債は、国が破綻しない限り償還されることから安全資産だととらえられています。そのため、経済の先行きに不透明感が強まると、株式が売られる代わりに国債などの債券が買われる傾向にあります。

一方で、金利の上昇が続くとの見方が広がると、国債価格が下落するリスクが意識されて需要が弱まることがあります。

日銀の金融政策

日銀の金融政策のうち、政策金利(短期金利)の動向や国債の買い入れといった政策は、国債の金利に大きな影響を与えます。

政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利(誘導目標金利)*4です。一般的に、政策金利が上昇すると国債の金利も上がる傾向にあります。

国債買い入れとは、日銀が金融機関の保有する国債を買い入れることで市場に資金を供給し、金利を押し下げて景気を刺激する金融緩和策の1つです。

日銀は、2024年7月の金融政策決定会合で、長らく続けてきた国債買い入れの減額計画を決定しました。
この計画により、長期的には、国債の買い手である日銀が買い入れ金額を減らしたことで需給バランスが緩み、価格が下落する(金利が上昇する)との見方があります。ただし、そうした場合においても、機動的な買入金額の増額を実施することや、減額計画自体の見直しなどで金利急上昇を避ける柔軟な対応をすることが示されています。*5

国の財政政策

減税や不況による税収減、財政支出の拡大などにより、税収以上に政府支出が多くなった状態を財政赤字といいます。*6

歳入における国債発行への依存度が高まり、財政赤字が拡大すると、日本の財政に対する信認が低下する可能性があります。もしそうなれば、投資家は日本国債の保有に高い金利を要求するようになるため、新規に発行する国債の金利上昇につながってしまいます。

国債の金利と長期金利の関係

経済ニュースなどで報じられる長期金利は、国債の金利と密接な関連があります。ここでは、長期金利の概要や国債の金利との関係についてみていきましょう。

長期金利とは

長期金利とは、期間1年以上のお金の貸し借りに使われる金利です。国債の利回りや期間1年以上の預貯金金利などが該当します。
中央銀行の金融政策で決まる政策金利(短期金利)とは異なり、長期金利は基本的に市場で形成されます。景気の先行きや物価上昇の予測を反映して変動するため、「経済の体温計」と呼ばれています。*7

国債の金利は長期金利の指標となる

長期金利の代表的な指標として、国が償還までの期間10年の借金をするときに発行する「10年物国債」の利回りが使われています。
国債の中でも特に流通量が多く、市場の金利水準を反映しやすいからです。

10年物国債利回りの推移は以下のとおりです。

出所)三菱UFJ銀行「内外経済の見通し(2025年2月)」P7

日本は長らく低金利が続いてきました。しかし、近年は世界的なインフレや日銀の金融政策が金融引き締めに転換したことなどを背景に、長期金利は上昇傾向にあります。

長期金利の上昇が私たちの生活に与える影響は?

長期金利の上昇は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、プラスとマイナスの影響に分けてみていきましょう。

プラスの影響

長期金利が上昇すると、金融機関の定期預金の金利が引き上げられる可能性があります。定期預金金利は、長期金利と連動する傾向にあるからです。

近年の長期金利の上昇を受けて、大手銀行では定期預金金利を引き上げる動きがみられます。たとえば、三菱UFJ銀行は2025年3月3日から適用する円の定期預金の金利を引き上げると発表しました。このうち期間1年の適用金利は、従来の0.125%から0.275%に引き上げられます。*8

また、生命保険の予定利率が引き上げられ契約者が受け取るお金が増えたり保険料が安くなったりする可能性もあります。予定利率とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りです。
さらに、新規発行の国債の利率も上昇する可能性もあり、新規に国債に投資する人にはプラスの影響となります。

マイナスの影響

一方で、既に国債に投資していた場合、債券の価格下落となるため、資産減というマイナスの影響となります。

また、家計へのマイナスの影響として考えられるのが、長期金利に連動する住宅ローンの固定金利の引き上げです。新たに固定金利型の住宅ローンを組む場合、従来よりも金利負担が増える可能性があります。

ただし、借入後に長期金利が上昇しても、固定金利期間中は金利が上下しません。全期間固定型の場合、返済期間が35年であっても借りたときの金利がずっと続きます。

なお、金利の上昇局面では、長期金利は短期金利に先行して上がる傾向があります。変動金利は短期金利に連動するため、金利が上がり始めたら変動金利型から固定金利型に借り換えようと思っても間に合わない可能性があります。

まとめ

国債の金利は、市場の需給バランスや日銀の金融政策、国の財政政策などの要因によって決まります。特に10年物国債利回りは、長期金利の代表的な指標です。住宅ローン金利や定期預金金利、生命保険の予定利率など、私たちの生活に影響を与えるため、その動向を注視しておきましょう。

*1 出所)財務省「国債とは

*2 出所)財務省「国債の「表面利率」「利率」「クーポンレート」「利回り」はどう違うのですか

*3 出所)日本銀行「国債金利

*4 出所)三菱UFJ銀行「政策金利

*5 出所)日本銀行「2024年7月金融政策決定会合での決定内容

*6 出所)三菱UFJeスマート証券「財政赤字

*7 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「長期金利(ちょうききんり)

*8 出所)三菱UFJ銀行「円定期預金金利の改定について(2025年2月28日)

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