1. はじめに
「おすすめの副業は?」と聞かれたとき、経営コンサルタントに相談するとどのような答えが返ってくるのか──これはなかなか面白い思考実験です。
でもこれは架空の話ではありません。私は採用面接の中で、一流ファームに勤めている「現役コンサルタント」のかなり多くの人が、転職ではなく「副業」をやりたがっていることに驚きました。
そして実際、売れっ子のコンサルタントは、会社で出世しつつ、知人の紹介で「業界特化型コンサルティング」や「スポットコンサルティング」でも稼いでいます。中には本業の給与1500万、副業で2000万以上を稼ぐ強者も。
そう。コンサルタントは副業上手な人が結構いるのです。
事実、総務省の平成29年の就業構造基本調査では、副業をやっている人は年収199万以下の人が生活のためにやっているケースと、年収1000万以上の人がさらに何かを得るためにやっているケースの両極端に分かれることがわかっています。*1
コンサルタントは専門性があり、収入が高い職業の代表でもありますから「一流の経営コンサルタントの副業率は高い」はあながち間違ってはいないのではないでしょうか。
そんな背景もあり、今回はコンサルタントの視点からの副業選びについて触れたいと思います。
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2. ゴールから考える
まずコンサルタントの思考のクセとして「ゴールから考える」というものがあります。文字通り、副業を始める際、最初に確かめるべきは自分が副業を通じて「何を得たいのか」というゴールです。
たとえば、純粋に収入増加が主目的であれば、短期間で稼ぎやすい副業を集中的に行うのも一つの選択肢でしょう。しかし、本業を補完するスキルアップや将来的な独立の足がかりにしたいのであれば、一定の専門性を発揮できる分野を選んだほうが合理的です。
経営コンサルタントが重視するのは、この「明確な目的意識」を持つというステップです。たとえば、20代後半~30代前半でデジタルマーケティング分野に興味がある方が、長期的にキャリア戦略を描きたいのであれば、単発のアルバイト的な副業ではなく、スキル活用や専門知識を発展させられる副業を探したほうが望ましいでしょう。スポットコンサルティングで経験活用を図る方法や、紹介事業者の副業サービスを使って案件を得る方法もあります。
また、ゴールによっては、コミュニティビルディングを通じて人脈獲得を重視することも考えられます。少し先の未来に、本格的に独立を目指す人は、新たな経験やネットワーク構築が重要なポイントになります。若手ビジネスパーソンが副業を始めるとき、「最初の一歩はどこから踏み出すか」という問題に直面するでしょう。
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3. ゴール別に考える副業
それでは、具体的にどんなゴールを設定し得るのか、そしてそのゴール別にどんな副業が合うのかを見てみましょう。ここでは代表的なゴールとして
「副収入を短期間で得たいタイプ」
「将来的な独立を視野に入れるタイプ」
の3つを例として挙げ、各ゴールに合った副業選定を考察します。
まず「スキルアップを重視するタイプ」の方は、単なる雑務や内職ではなく、自分の専門領域や興味のある分野で副業を探すとよいでしょう。スポットコンサルティング案件を受けながら新しい分野に挑戦する、あるいは人が足りないスタートアップ企業に参画し、手を動かせば感謝されるでしょう。
次に「副収入を短期間で得たいタイプ」の方は、スキルうんぬんよりも、成果型の営業をやるのが最も稼げます。「高給、ただし成果報酬」ならいくらでも仕事はあります。
そして「将来的な独立を視野に入れるタイプ」の方にとっては、人脈獲得や実績づくりが欠かせません。無償でもいいから、その分野で若いうちから実績を積み、対外的な見え方と評価を高めていくと、いずれは本格的に起業やフリーランスとしての道を選ぶ際にも強力な後押しになります。
……とまあ、このあたりまでは「普通」の話で、普通にやれば、結構稼げます。
まあ、まじめに時間を投入すれば、優秀な人であればどこでも歓迎されるものです。
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4. 一流のコンサルタントならきっとこう答える
ただし、真の意味で一流の、私の上司のコンサルタントなら、どう答えるかなあ、と想像してみると、上のような話は否定こそされないとは思いますが、
「それって大事?」
と言われると思います。
というか、「そこまでして副業やりたい?」と言われると思います。
そしておそらく、こう聞かれます。
副業しないと手に入らないのか、という質問は、恐らく急所を突いていると思います。というのも、副業ができるほどの技術や営業力があれば、おそらくどこの会社でも出世できるからです。なんなら、転職の方がはるかに手間もかからず、収入も安定するはずじゃない?と。
実際、ゴールが「スキル」「収入」などの場合は、転職の方が、副業よりも解決策として優れているケースが多いのです。
「転職なんかできないよ」という人もいるかもしれませんが、そもそも転職できないような人は、副業やっても儲かりません。残念ながら。
で、最後に上司はこう言うでしょう。
と。
副業が「本業の劣化版」に過ぎないのであれば、本業や転職にリソースを突っ込むほうがはるかに良い結果が得られるでしょう。
そうではなく、真の意味で副業が意味を持つのは「起業」を控えた人が、いきなり独立するのではなく、リスクヘッジをするための助走期間として、副業を設定したときだけなのです。
だから上司のアドバイスはこうなるはずです。
と。
*1 出所)総務省「副業・兼業の現状①」