初任給の平均は?手取り計算の目安を含めてわかりやすく解説

初任給の平均は?手取り計算の目安を含めてわかりやすく解説

社会人デビューを控え、希望と不安の入り混じった気持ちを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に初めての給料日は、一生に一度の特別なものです。
気になる初任給は、一体いくらでしょうか。
額面と手取りの違いは? 

この記事では、初任給の金額から、給与明細書の見方、手取り収入の計算方法まで、わかりやすく解説します。

初任給はいくら?

まず、初任給の金額をみていきましょう。

2023年の初任給(6月分の賃金)

厚生労働省の調査によると、2023年6月分の新規学卒者の賃金は、男女計・学歴別で、高校186,800円、専門学校214,500円、高専・短大214,600円、大学237,300円、大学院276,000円となっており、いずれも前年より増加しています(表1)。*1

表1【新規学卒者の学歴別、性別の賃金および前年比】
出所)厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」(2024年3月27日)p.15

2024年の学歴、年齢階級別賃金

次の表2は、新規学卒者に限ったものではありませんが、2024年6月分の賃金を学歴、年齢別にまとめ、前年同時期の賃金と比較したものです(速報値)。*2

この表をみると、2024年6月分の賃金は、高校卒19歳以下の賃金は199,800円、大学卒20~24歳の賃金は250,800円で、いずれも2023年同時期の金額を上回っています

表2【2024年の学歴、年齢階級別賃金】
出所)令和6年賃金構造基本統計調査速報(2024年12月26日)p.3

2025年卒の初任給の引き上げ

マイナビが2025年卒の新卒採用について2024年6月に行った調査によると、総合職採用の初任給の引き上げを行った企業は84.4%で、2024年卒に比べて14.4ポイント増加していました(図1)。*3

図1【初任給の引き上げを行った企業の割合】
出所)マイナビ「マイナビ2025年卒企業新卒採用活動調査」p.12

2025年卒の初任給の引き上げ額でもっとも多かったのは1万円~2万円未満(35.9%)で、5,000円から1万円未満がもっとも多かった前年より値上げ幅が大きくなっています(図2)。
特に上場企業では「1万円~2万円未満」の割合が前年の21.9%から42.8%へと2倍近くになりました。

図2【初任給の引き上げ額】
出所)マイナビ「マイナビ2025年卒企業新卒採用活動調査」p.12

以上のことから、初任給の金額は増加傾向にあるといえます。

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給与明細書の見方

給与明細書は所得税法などにおいて、事業主に発行が義務付けられているもので、項目ごとにさまざまな情報が盛り込まれています。
その見方を確認し、「額面」と「手取り」の違いも押さえましょう。

主な項目

給与明細書に記載されている主な項目は、「勤怠」「支給」「控除」「合計(差引支給額)」の4つです(図3)。*4

図3【給与明細書の項目例】
出所)MUFG三菱UFJニコス「給与明細の見方は?確認すべき項目やもらった後の対応方法も解説」(2024年8月26日)

それぞれの項目内容を順にみていきましょう。

勤怠

まず、勤怠欄には、その月にどのくらい働いたかが記され、出勤日数をはじめ、欠勤・有給日数、勤務・残業・休日出勤時間などが記載されています。

給与明細に記載される期間は、締め日までの1か月分で、会社によって締め日は異なります。
たとえば15日締めの25日払いであれば、前月16日~当月15日の間に働いた分の給料が当月25日に支給されますが、月末締めで翌月末払いというように、月をまたぐ場合もあります。

勤怠は給与計算のもととなる勤務状況なので、間違いないかチェックする必要があります。

支給

支給欄には、会社から支給されるさまざまなお金が記載されています。*5
「基本給」に加え、「住宅手当」「通勤手当」「時間外手当」など会社から提供される各種手当の詳細が書かれています。
支給額の合計(総支給額)は、いわゆる「額面」の金額で、実際に支給される金額ではありません。

「基本給」とは、給与の中で最も根本的な部分を占め、年齢、学歴、勤続年数、経験、能力、資格、地位、職務、業績など労働者本人の属性又は労働者の従事する職務に伴う要素によって算定され支給されるものです。*6

手当には、法律上支払い義務のある時間外手当や休日出勤手当と、福利厚生の一環として会社が独自に支給する「通勤手当」「住宅手当」「家族手当」などがあります。
このうち通勤手当は、月15万円までは非課税です。

控除・合計

「控除」には、給与から天引きされる金額が記載されています。*5
一般的に、会社勤めの場合、会社が従業員に代わって税金を納める源泉徴収を行うため、給与から所得税や住民税のほか、社会保険料を天引きします。

(1)控除される税金
所得税とは、その年の所得(副業をしていない従業員の場合は給与)に対してかかる税金のことで、国税庁の「源泉徴収税額表」に基づいて金額を算出します。*7

住民税とは、居住する都道府県や市町村に納付する税金で、毎年5~6月に1年分の住民税が通知され、その通知書どおりに毎月の給与から控除されます。
住民税は前年の1月から12月の所得に対する税金のため、一般的には社会人2年目から天引きされます。

(2)控除される社会保険料
控除される社会保険料には、従業員全員が支払う「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」と、40歳以上の人が支払う「介護保険料」があります。*5

健康保険料を支払っていれば、病気やケガで診療を受けた場合の医療費の支払いが原則3割の自己負担で済みます。
また、厚生年金保険料を支払っていれば、障害を負ったときには障害年金が、死亡したときには遺族に遺族年金が支払われます。
厚生年金保険料は、65歳に達したときから老齢年金の支給を受けるための保険料です。
さらに、雇用保険料を支払うことによって、失業した場合に失業手当(基本手当)を受けることができます。

社会保険料のうち、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、会社と従業員の双方が負担することになっているため、給料から控除されるのは従業員が負担する分です。

ちなみに、「年収」とは、一般的には税金を引く前の金額のことを指します。そのため、ローンやクレジットカードなどの申し込みの際に「年収」を尋ねられたら、基本的に税金や社会保険料などの「控除」を差し引く前の金額で回答します。*8

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手取りの計算方法

総支給額から上記の控除額を差し引いた「差引支給額」が給与口座に振り込まれ、それが、実際に支出や貯蓄に使える「手取り」となります。

以下の表3の給与明細例から、初任給の手取り収入を具体的に計算してみましょう。*9

表3【初任給の給与明細例(単位:円)】
参考)金融庁「家計管理とライフプランニング~働いて「稼ぐ」ことと将来設計について」p.4を参考にして三菱UFJアセットマネジメントが作成


初任給なので、満40歳に達したときから徴収される介護保険料と社会人2年目から支払う住民税は徴収されないものとして計算します。

総支給額-(税金+社会保険料)=手取り収入ですから、これにそれぞれの金額を当てはめると、以下のような計算になります。

218,000 円-(3,910 円+31,674 円)=182,416 円

したがって手取り収入は182,416円になります。
額面の218,000円が支給されるわけではないので、注意が必要です。

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おわりに

本稿では、初任給の金額の動向、給与明細書の見方、そして手取り収入の計算方法について解説しました。初任給は、自分の仕事への初めての対価です。給与明細書を受け取ったら、しっかり確認しましょう。

自分の収入について理解することは、社会人生活を豊かにするための第一歩といっていいのではないでしょうか。

*1 出所)厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」(2024年3月27日)p.15

*2 出所)厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査速報」(2024年12月26日)p.3

*3 出所)マイナビ「マイナビ2025年卒企業新卒採用活動調査」p.12

*4 出所)MUFG三菱UFJニコス「給与明細の見方は?確認すべき項目やもらった後の対応方法も解説」(2024年8月26日)

*5 出所)金融広報中央委員会 知るぽると「給与明細、チェックするのは振込額だけでいい?

*6 出所)厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況:用語の説明

*7 参考)国税庁「給与所得の源泉徴収税額の求め方」p.19、20

*8 出所)東証マネ部!「給与明細の見方を知ろう!控除や所得税の意味も解説」(2023年4月8日)

*9 参考)金融庁「家計管理とライフプランニング~働いて「稼ぐ」ことと将来設計について」p.4

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