社会人になると、給与や家賃、投資などお金に関する幅広い知識が必要になってきます。海外旅行やビジネスで、海外と関わる機会も増えるかもしれません。その際、世界にはさまざまな通貨があることを知っておくと便利です。
この記事では、日本円の歴史から世界の主要通貨まで、お金の単位についてわかりやすく解説します。
日本のお金の単位「円」の基礎知識
日本では、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第2条第1項において「通貨の額面価格の単位は円」と定められています。*1
まずは、日本の通貨単位「円」の基礎知識についてみていきましょう。
日本で発行されている紙幣と硬貨
日本の紙幣は日本銀行が発行しており、正式には「日本銀行券」といいます。*2
2025年1月現在、日本で発行されている紙幣は以下の4種類です。*3
- 一万円券
- 五千円券
- 二千円券
- 千円券
これらのうち、二千円券を見かける機会は少ないかもしれません。2000年に開催された九州・沖縄サミットにあわせて発行された紙幣で、表には首里城の守礼門が描かれています。現在も一定の流通量を保っており、他の紙幣と同じように使えます。
一方、硬貨は日銀ではなく、政府が発行しています。*4
2025年1月現在、日本で発行されている硬貨は以下の6種類です。*3
- 500円貨
- 100円貨
- 50円貨
- 10円貨
- 5円貨
- 1円貨
偽造抵抗力の強化を目的に、令和3年11月1日から新500円貨の発行が開始されました。新500円貨が発行された後も、従来の500円貨は引き続き使えます。*5
円の由来は?
明治政府は1871年(明治4年)に「新貨条例」を制定し、全国統一の新しい通貨単位を円(圓)としました。*6
その際の資料が残っていないため、円が導入された経緯は正確にはわかりません。*7
円の由来には諸説ありますが、以下のような説があります。*6
- 中国で西洋の円形銀貨を「銀円」「洋円」といっていたことが幕末に伝わり、金の単位「両」を「円」ということがあった
- 硬貨の形状を円形に統一したため「円」と名付けた
- イギリス香港造幣局の機械を譲り受けたため、香港銀貨の名称「円(圓)」を採用した
円未満のお金が使えなくなったのはいつから?
円未満の計算単位として、「銭(せん)」と「厘(りん)」があります。銭は円の100分の1、厘は銭の10分の1です。*8
円未満の紙幣や硬貨は、1953年(昭和28年)に制定された小額通貨整理法により発行が停止され、同年12月31日に通用力を失いました。*8
終戦後の日本では、復興費用等で巨額の財政支出が行われていました。激しいインフレが発生し、円未満の紙幣や硬貨は使用価値を失っていたため、円のみが使用されることになりました。*9
ただし、利息や外国為替などの計算には、現在も円未満の単位が使われています。*8
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日本のお金の歴史
次に、古代から現代まで、日本のお金の歴史を紹介します。
古代*10
古代の日本では、米や塩などを物々交換することで経済が成り立っていました。その後、中国の影響を受け、7世紀後半に国内で初めて「富夲銭(ふほんせん)」が作られます。さらに、708年には「和同開珎(わどうかいちん(ほう)」が鋳造されました。
しかし、国内産の銅の不足などによって再び物々交換の時代に戻ります。江戸時代に「寛永通宝(かんえいつうほう)」が発行されるまで、国内での新たな通貨発行は途絶えました。
中世*10
国内での通貨発行は途絶えましたが、取引に便利なお金は人々に求められていました。そのため、中国から輸入された「渡来銭(とらいせん)」が広く流通しました。
15世紀には「私鋳銭(しちゅうせん)」をはじめ、個人が国の許可なく作った通貨が多く出回りました。16世紀には精錬技術が発達し、戦国武将や商人の間で金や銀が使われるようになります。中でも豊臣秀吉は全国の鉱山を接収し、金によって支配力を高めました。
近世*10
江戸時代に入ると再び国内発行の通貨が登場し、貨幣制度も統一されます。
徳川家康は、1601年に大きさや重さ、品位(金銀の含有率)を揃えた5種類の金貨・銀貨を発行しました。1636年には、徳川家光により銅銭「寛永通宝」が作られ、金・銀・銅による三貨制度が確立しました。
しかし、江戸中期を過ぎると、経済の発達や幕府の財政難から金銀の品位や重さを変える改鋳がたびたび行われました。地方では大名が発行した藩札、公家や寺社らによる私札などの紙幣も使われました。
近代*10
明治新政府は、近代化のため政府紙幣を発行し、新しいお金の単位「円」を導入しました。しかし、偽札が多く出回ったため、ドイツの印刷会社に製造を注文し、新紙幣「明治通宝札(めいじつうほうさつ)」を発行しました。
明治9年(1876年)には、国内初の人物の肖像を入れた紙幣が製造されます。また、造幣局が設置され、日本のデザインを活かした硬貨が作られました。
その後、西南戦争が起こると、戦費調達のために大量の紙幣が発行されて価値が下落します。通貨の安定化を図るため、中央銀行である日本銀行が設立されました。
現代*10
昭和17年(1942年)の日本銀行法制定により、現在のように政府や日銀が経済の状況によって通貨の発行量を管理・調整するようになります。
戦後は国内の物資が少なくなる一方でお金だけが増え、通貨価値が暴落しました。そのため、お金の単位を引き上げ、新しいお金が発行されました(新円切りかえ)。
その後、印刷技術や偽造防止の仕組み、デザインの工夫などが進み、現在のかたちに至っています。
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世界にはどんなお金がある?通貨単位は?
世界には、日本円以外にもさまざまな通貨が使われています。世界の主な通貨と通貨コードは以下のとおりです。

出所)三菱UFJ銀行「外国為替相場一覧表」
通貨コードとは、国際的に決められた通貨に関する規格です。貿易や商業、金融業(クレジットカード・外貨両替機)などの分野で利用されています。*11
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世界の主要通貨の特徴と歴史
国際決済銀行(BIS)の「2022年世界外国為替市場調査」によると、世界で最も取引額が多い通貨は米ドルです。次いでユーロ、日本円の順となっています。*12
米ドル
米ドルは、世界最大の経済大国である米国が発行する通貨です。世界の基軸通貨として利用されており、国内のニュースでも毎日のように米ドル円の為替レートが報じられています。
米ドルの起源は、北アメリカで勢力のあったメキシコとスペインのペソだとする説があります。アメリカ合衆国は1785年に正式にドル記号を採用しました。この記号はスペインアメリカのペソの図から進化したのもです。植民地時代から現代に至るまで、アメリカ合衆国は、さまざまな目的に応じた複数の種類の紙幣を発行してきました。*13
ユーロ
ユーロは、1999年に当時のEU(欧州連合)加盟15ヵ国中11ヵ国において、単一通貨として導入されました。2024年8月現在、EU加盟27ヵ国中20ヵ国で利用されています。*14
ユーロ紙幣の発行権限は欧州中央銀行(ECB)にありますが、各国の中央銀行が分担して印刷しています。硬貨については、ECBの管理のもと各国政府の造幣局が発行しています。*14
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まとめ
お金は決済手段であると同時に、その国や地域の歴史、文化、経済状況を反映するものでもあります。お金の知識は、家計管理や海外旅行、ビジネスなどさまざまな場面で役立ちます。興味があれば、世界各国のお金の単位や歴史、特徴についてさらに調べてみてはいかがでしょうか。
*1 出所)e-Gov法令検索「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(第2条第1項)」
*2 出所)国立印刷局「お札の特長」
*3 出所)日本銀行「日本のお金」
*4 出所)日本銀行「銀行券・貨幣の発行・管理の概要」
*5 出所)財務省「新しい五百円貨幣の発行開始日について」
*6 出所)日本銀行金融研究所「お金の歴史に関するFAQ(Q9 円という単位はいつから使われたのですか?)」
*7 出所)財務省「日本のお金は、どうして「円」というのですか」
*8 出所)日本銀行「1円未満のお金が使えなくなったのはいつからですか?」
*9 出所)日本銀行金融研究所「お金の歴史に関するFAQ(Q14 銭という単位はいつまで使用されたのですか?)」
*10 出所)三菱UFJ銀行「貨幣史年表 ~日本の貨幣 そのあゆみ~」
*11 出所)ISO/TC68 国内委員会事務局「ISO 4217 - 通貨コードに関する国際規格 - P4 」
*12 出所)BIS「Turnover of OTC foreign exchange instruments 」< データ>
*13 出所)Regulations.gov「U.S.CURRENCY EDUCATION PROGRAM 」
*14 出所)EU MAG「単一通貨ユーロと硬貨のデザイン」