2025年から始まる大学無償化 年収による違いは? わかりやすく解説

2025年から始まる大学無償化 年収による違いは? わかりやすく解説

2025年度から、多子世帯(子ども3人以上の世帯)を対象に大学等の入学金・授業料の無償化(以下、大学無償化)がスタートします。大学費用は4年間で数百万円のまとまった出費となるため、無償化の対象となれば経済的な負担は大きく軽減されるでしょう。

この記事では、2025年から始まる大学無償化の内容や支援を受けるための要件、手続き方法などをわかりやすく解説します。

2025年から始まる大学無償化とは

2025年から始まる大学無償化は、「こども未来戦略」の加速化プランに盛り込まれた施策の1つです。*1

こども未来戦略とは、少子化対策を実現するために、国の基本的な考え方や今後の具体的な取り組みなどをまとめたものです。令和5年12月に策定されました。加速化プランは、今後3年間の集中取組期間において実施する具体的な政策です。*2

現行の「高等教育の修学支援新制度」においても、2020年4月から大学無償化はスタートしています。返還を要しない給付型奨学金と入学金・授業料の減額または免除によって、大学などの教育費を無償化する制度です。給付型奨学金の対象者は、授業料と入学金の減免を受けられます。*3

ただし、現行制度には所得制限が設けられており、世帯収入に応じて支援額が変わる仕組みになっています。支援対象は、世帯年収の目安が600万円程度までの世帯です(年収目安は世帯構成などによって異なります)。

一方、2025年度からの大学無償化は、子ども3人以上の多子世帯が対象の制度です。現行制度とは異なり、所得制限はありません

多子世帯の大学無償化が実施される理由

子育てや教育にお金がかかりすぎることから、子どもをもつことを諦めたり、理想の子どもの数をもつことを諦めたりする夫婦が多くいます。これは、理想の子どもの数を3人以上と考える夫婦で特に顕著となっています。理想の子どもの数をもてない状況を払拭するため、少子化対策の一環として、多子世帯の大学無償化が実施されることになりました。*4_P1

先述のこども未来戦略において、国は「少子化は日本が直面する最大の危機」と位置づけています。*2_P1

2022年に生まれた子どもの数は77万759人で、統計を開始した1899年以来、最低を記録しました。少子化は人口減少を加速化させています。現在、日本の総人口は1億2,500万人ですが、このままでは2050年代に1億人、2060年代に9,000万人を割り込むと予測されています。

急速な少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、日本の経済・社会システムを維持することが難しくなる可能性が高まります。国は「若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化トレンドを反転させるラストチャンス」として、さまざまな少子化対策に取り組んでいます。

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2025年から始まる大学無償化の内容

2025年から始まる大学無償化の制度内容は以下の通りです。

出所)文部科学省「高等教育の修学支援新制度」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成

各項目について詳しく見ていきましょう。

開始時期・支援対象

2025年度からスタートしますが、2024年度以前から在学している学生も対象です。支援対象は子ども3人以上の多子世帯で、3人以上同時に扶養されていることが要件のひとつとなっています。*3

例えば、「第1子(大学生)、第2子(高校生)、第3子(中学生)」のように、3人同時に扶養されている間は第1子から支援対象です。子どもが3人の世帯でも、第1子が就職などを機に扶養から外れた場合、第2子以降は支援対象外となります。

引用)文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」P9<PDF>

なお、大学院生は支援対象にはなりません。ただし、第1子が大学院に進学した後も引き続き扶養され、同時に扶養されている子どもの数が3人以上であれば、第2子以降は支援対象となります。*4_P4

引用)文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」P4<PDF>

支援額

2025年度からの大学無償化では、進学先に応じて以下の入学金・授業料が支援されます。

引用)文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」 P5をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成<PDF>

私立大学4年制の場合、4年間の支援額の合計は306万円(入学金26万円+授業料70万円×4年間)です。現金支給ではなく、各学校の入学金・授業料が減額されます

学校ごとに授業料等が異なるため、国が支援上限額を設定し、その上限額まで支援する仕組みになっています。*4_P5

支援対象の学校

2025年度からの大学無償化は、一定の要件を満たした大学、短期大学、高等専門学校(第4学年・第5学年)、専門学校が支援対象です。*3
進学先の学校が支援対象に含まれるかどうかは、必ず文部科学省のホームページで確認してください。*5

支援対象外の学校に入学する場合、本制度の支援を受けられないので注意しましょう。*3

所得制限

給付型奨学金と授業料等の減免を組み合わせた現行制度の大学無償化は、子どもの数が2人以下の世帯でも利用できますが、所得制限が設けられています。*3

一方、2025年度からの大学無償化は所得制限がありません。「子ども3人以上を同時に扶養している」などの要件を満たせば、世帯収入に関係なく支援を受けることが可能です。

学業要件

学業要件については、「学修意欲があれば採用」となっていますが具体的な要件があります。継続して支援を受け続けるには、一定の学修意欲と学修成果にかかる要件を満たさなくてはなりません*3

2025年度からの要件は以下の通りです。

出所)文部科学省「高等教育の修学支援新制度」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成

ただし、学生自身や家族が病気になったときなど、やむを得ない事情で要件を満たせない場合は、継続して支援を受けられる可能性があります。その場合は早めに学校に相談しましょう。

申込手続

2025年度からの大学無償化は、入学後に各学校で申込手続を行うことになっています。手続きの詳細は、進学先の学校にご確認ください。*3
繰り返しとなりますが、支援が必要な場合は、支援制度の対象校に進学する必要がある点には注意が必要です。

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まとめ

2025年から始まる大学無償化制度は、さらに多くの家庭にとって大きな支援となることでしょう。特に、多子世帯や低所得世帯にとっては、教育費の負担が軽減されることで、子どもたちがより高い教育を受ける機会が広がります。この制度は、将来的に社会全体の教育水準を向上させ、経済的な格差を縮小する一助となることが期待されています。さらに、この制度は、学生自身にも大きな影響を与えるでしょう。学費の心配が減ることで、学生は学業に専念できる環境が整い、学業成績の向上や自己実現のための活動に積極的に取り組むことができるようになります。また、経済的な理由で進学を諦めていた学生にも、新たな希望と機会を提供することになります。

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