金融政策決定会合は、日本銀行が政策金利を上げたり下げたりするなどの金融政策を決定するための会合です。2024年12月の会合では、日銀が追加利上げに動くのではないかとの観測が広がっています。利上げが実施された場合、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか。
この記事では、日銀の金融政策決定会合の仕組みやこれまでの金融政策の流れ、利上げ観測の背景・見通しについて解説します。
日銀の金融政策決定会合とは
金融政策決定会合とは、日銀の政策委員が金融政策の方向性について審議・決定する会合です。毎回2日間、年に8回開催されます。*1
主な議事内容は、政策金利の上げ下げなどの金融市場調節方針とそれを実現するための金利政策手段です。また、金融・経済情勢に関する基本的見解も示されます。
9名の政策委員(総裁、副総裁2名、審議委員6名)による多数決で決定され、会合終了後はその内容が直ちに公表されます。市場が敏感に反応することもあるため、金融政策決定会合の結果に対する市場関係者の注目度は極めて高いといえます。*1
2024年金融政策決定会合のスケジュール
金融政策決定会合のスケジュールは、日銀のホームページで公表されています。2024年の開催日程は残すところ12月18日(水)・19日(木)のみとなりました。*2
会合終了後は日銀総裁による定例記者会見が行われ、審議・決定された内容や金融・経済情勢に関する基本的見解、今後の見通しなどが説明されます。*3
日銀の金融政策は「金融緩和」と「金融引き締め」がある
引用)三菱UFJ銀行「金融緩和とは?私たちの生活にどう影響するの?」
金融緩和とは、政策金利の引き下げ(利下げ)などによって資金の供給量を増やす政策です。日銀が利下げを行うと企業や個人はお金を借りやすくなるため、経済活動の活性化が期待できます。
金融引き締めとは、金融緩和とは逆の政策です。景気がよすぎると過度なインフレが起こることがあります。インフレとは、モノやサービスの値段が継続的に上がることです。過度なインフレが起こると想定される場合、日銀は政策金利を引き上げ(利上げ)、景気の過熱を抑えることで経済活動を抑制します。
政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために日銀(中央銀行)が設定する短期金利です。金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を与えます。日銀は景気や物価の動向を見極めながら、金融政策決定会合において政策金利の誘導目標を決定します。*4
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日銀による金融政策の過去の流れ
日銀は2%の物価安定目標を実現するために、2013年から長期にわたって大規模な金融緩和策を続けてきました。
2016年1月には日銀の当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する「マイナス金利政策」、同年9月には短期金利に加えて長期金利の操作目標も設定する「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」を導入します。
コロナ禍の2020年3月以降は、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」を追加実施しました。*5
2022年に入り米国などの諸外国は利上げに踏み切りましたが、日本は金融緩和を継続します。その結果、海外との金利差が広がり円安が進行しました。
しかし、2024年に入ってから日銀の金融政策は転換点を迎えます。
2024年3月にマイナス金利政策を解除
2024年3月の金融政策決定会合で、日銀は大規模な金融緩和策の解除を決定しました。
マイナス金利政策を解除し、政策金利の誘導目標を0~0.1%に引き上げました。日銀による利上げは17年ぶりです。また、長短金利操作についても撤廃を決めました。*6
利上げを決めた背景として、日銀は「賃金と物価の好循環の強まりが確認され、物価安定の目標の実現が見通せる状況に至った」と説明しています。
2024年7月には追加利上げを実施
2024年7月の金融政策決定会合では、政策金利を0.25%程度に引き上げることを決定しました。同年3月のマイナス金利解除に続いての追加利上げとなります。この決定により、政策金利は2008年以来の水準となりました。*7
日銀は追加利上げを決めた背景として、個人消費は物価上昇の影響がみられる中でも底堅く推移していること、大企業だけでなく幅広い地域・業種・企業規模において賃上げの動きが広がっていることなどを挙げています。*8
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2024年12月の金融政策決定会合で利上げはある?
国内では、2024年12月に利上げが行われるのではないかとの観測が広がっています。
2024年9月の金融政策決定会合で、日銀は政策金利の誘導目標を0.25%程度で据え置くことを決めました。ただし、日銀総裁は会合後の記者会見で「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と説明しています。*9
賃上げの動きが継続し、経済・物価の見通しが実現していくと日銀が判断すれば、12月に利上げに動くかもしれません。
一方で、9月の会合で一部の政策委員からは「金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない」「政策変更には適切なタイミングを選ぶ必要がある」など、利上げに慎重な意見も挙がっています。*10
そのため、12月以降に日銀が利上げに踏み切る可能性は、経済や物価、金融市場の状況次第といえます。
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まとめ
日銀は2024年3月の金融政策決定会合でマイナス金利解除、同年7月の会合では追加利上げを決定しました。日銀総裁からはさらなる利上げを示唆する発言も出ています。そのため、賃金や経済、物価の状況によっては、12月の利上げがあるかもしれません。
利上げは住宅ローン金利や為替、株価などに影響を与えるため、日銀の動向を注視しておきましょう。
*1 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「日銀金融政策決定会合」
*2 出所)日本銀行「金融政策決定会合の運営」
*3 出所)日本銀行「講演・記者会見・談話」
*4 出所)三菱UFJ銀行「政策金利」
*5 出所)日本銀行「金融政策に関する決定事項等 2020年」< PDF>
*6 出所)三菱UFJアセットマネジメント「特別レポート(2024年3月19日号)」
*7 出所)三菱UFJアセットマネジメント「特別レポート(2024年7月31日号)」
*8 出所)日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について」P2
*9 出所)日本銀行「総裁記者会見(2024年9月24日)」P1
*10 出所)日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(2024年9月19、20日開催分)」P3