2024年10月から児童手当が拡充されることになりました。支給対象者が拡大し、子どもの人数によっては支給額も増額となります。
児童手当は、子育て世帯の家計を支える重要な支援制度です。拡充対象者の中には新たに手続きが必要なケースもあるので、制度変更の内容を理解しておく必要があります。
この記事では、児童手当の拡充による変更ポイントと注意点について解説します。
児童手当とは
児童手当とは、児童を養育している人に手当を支給する制度です。家庭生活の安定や児童の健全な育成を支援することを目的としています。
令和6年(2024年)6月5日に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立し、2024年10月から児童手当制度の内容が変更されることになりました。支給期間が中学生までから高校生年代※まで拡大されるなど、対象者や支給額が大幅に拡充されます。*1*2
※18歳の誕生日以後の最初の3月31日まで
児童手当が拡充される背景
日本は、少子化・人口減少が深刻な社会問題となっています。2022年に生まれた子どもの数は77万759人で、ピークの3分の1以下に減少しました。また、2022年の人口は80万人の自然減となりました。*2
このような少子化・人口減少に歯止めをかけないと、日本の経済・社会システムを維持することが難しくなります。そこで今後3年間の集中的な取り組みとして、2023年12月に子ども未来戦略の「加速化プラン」が閣議決定されました。*2
「加速化プラン」には、少子化・人口減少への対策として子育て世帯を対象としたさまざまな支援策が盛り込まれています。その支援策の1つが、今回の児童手当の拡充です。ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援を強化するため、児童手当の拡充が実施されます。*1
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2024年10月からの児童手当の拡充内容
2024年10月から児童手当は以下のように変わります。
出所)こども家庭庁「児童手当制度の概要」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成
出所)こども家庭庁「令和6年10月から児童手当制度が変わります」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成
ここでは、主な4つの変更ポイントを確認していきましょう。
支給期間が高校生年代まで延長
これまで児童手当は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童が対象でした。*3
2024年10月以降は、高校生年代まで支給期間が延長されます。高校生年代とは、18歳の誕生日後の最初の3月31日までのことです。*4
高校は義務教育ではないため、「中学卒業後は進学せずに働く」といったケースもあるでしょう。
新制度では「高校生年代」を対象としているため、高校生ではなくても、受給者がその子どもを養育している状態であれば児童手当は支給されますが、受給者が監護・生計要件を満たすかどうかにより判断されます。*5
詳しくは、お住いの市区町村にご確認ください。
第3子以降の支給額が3万円に増額
これまで第3子以降の支給額は、児童の年齢に応じて1万円または1万5,000円でした。
2024年10月以降は、第3子以降のカウント方法を見直したうえで支給額が3万円に増額されます。*4
引用)こども家庭庁「「第3子以降」のカウント方法」< PDF>
第3子以降のカウント対象の年齢は、これまでの18歳年度末から22歳年度末まで延長されます(親等の経済的負担がある場合)。子どもが3人以上いれば、必ず第3子以降としてカウントされるわけではない点に注意が必要です。*6
児童の兄弟等については、受給者が監護に相当する世話をし、その生計費を負担していることが要件です。*6
親等の経済的負担があれば、「進学しているか」「同居か別居か」にかかわらずカウント対象となります。*2
所得制限の撤廃
2024年10月からの新しい児童手当制度では、所得制限が撤廃されます。これまでは所得制限限度額および所得上限限度額が設けられており、収入(所得)が一定以上の人は児童手当に制限がありました。
例えば、扶養親族等の人数が3人(児童2人と年収103万円以下の配偶者)の場合、年収960万円超で所得制限限度額に達すると、児童手当ではなく特例給付(児童1人あたり月額5,000円)が支給されていました。また、年収1,200万円超で所得上限限度額に達すると、児童手当・特例給付は支給されていませんでした(いずれも年収は目安)。*3
2024年10月分からは所得制限が撤廃されるため、所得制限限度額および所得上限限度額を超過していた人も児童手当の支給対象となります。
支払回数の増加*4
2024年10月以降、児童手当の支給回数は年3回(4ヵ月分ずつ)から年6回(2ヵ月分ずつ)に増加します。
原則として、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月(偶数月)にそれぞれの前月分までが支給される仕組みです。例えば、6月の支給日には4月・5月分が支給されます。
支給回数が増えれば、児童手当を活用する計画を立てやすくなるでしょう。
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児童手当の拡充後に申請が必要なケース*2
制度拡充後に児童手当を受給するにあたって、新たに市区町村へ申請が必要な場合があります。特に注意が必要な人は以下のとおりです。
- 高校生年代の子のみを養育している人
- 多子世帯で22歳年度末までの上の子がいる人
- 所得制限によって児童手当・特例給付を受給していない人
2025年3月31日までに申請すると、制度拡充後の児童手当を2024年10月分から受給できます。申請の必要性や申請方法については、お住いの市区町村にご確認ください。
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まとめ
2024年10月から児童手当制度が変更され、支給対象や支給額が大幅に拡充されます。高校生年代の子どもだけを養育している人、所得制限により児童手当を受給していない人も2024年10月以降は支給対象です。
制度拡充後に児童手当の支給対象となる場合は新たに市区町村への申請が必要になるため、手続きを忘れないように注意しましょう。
*1 出所)厚生労働省「令和6年雇用保険制度の改正内容について(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律)」< PDF>
*2 出所)政府広報オンライン「2024年10月分から児童手当が大幅拡充!対象となるかたは必ず申請を」
*3 出所)こども家庭庁「児童手当制度の概要」
*4 出所)こども家庭庁「令和6年10月から児童手当制度が変わります」
*5 出所)こども家庭庁「第4回 子ども・子育て支援等分科会((参考)各検討会等における議論の整理) 」p.2< PDF>
*6 引用)こども家庭庁「「第3子以降」のカウント方法」< PDF>