2024年1月からスタートした新NISAでは、これまでのつみたてNISAや一般NISAに比べて年間投資枠が大幅に拡大されました。投資できる金額の枠が増えたのは喜ばしい一方で、毎月いくら積み立てればよいか悩んでいる人もいるでしょう。
この記事では、新NISAの積立金額の決め方や運用シミュレーションを紹介します。
新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠を併用すると毎月30万円まで積立可能*1
まずは、新NISAの制度内容を確認しておきましょう。
引用)金融庁「NISAを知る」
旧制度のつみたてNISA、一般NISAはそれぞれ新制度では「つみたて投資枠」、「成長投資枠」に名称が変わり、これまでどちらか片方しか選択できなかったものが、両枠の併用が可能になりました。
NISAで毎月積立する場合の積立金額の上限は、つみたて投資枠が月10万円(年120万円)、成長投資枠が月20万円(年240万円)です。この2つの投資枠を併用することで、月30万円(年360万円)まで積み立てられます。
また、新NISAでは、生涯を通じての非課税保有限度額1,800万円が新設されました。1,800万円のうち、成長投資枠で投資できるのは1,200万円までが上限となります。
つみたて投資枠の商品は成長投資枠でも買える*2
つみたて投資枠の対象商品は、成長投資枠で投資できる投資商品の要件も満たしています。そのため、つみたて投資枠と同じ商品を、成長投資枠でも積み立てることが可能です。
つみたて投資枠の対象商品の要件は、従来のつみたてNISAと同じです。「手数料が一定水準以下」「毎月分配型でない」など、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託とETFに限定されています。
新NISAの最低積立金額は?
新NISAの最低積立金額は金融機関によって異なり、中には月100円、月1000円など低額に設定されている場合もあります。途中で家計が苦しくならないように、無理なく積み立てを続けられる金額にするといいでしょう。
ボーナス月などに積立金額を増やすことも可能
ボーナスや臨時収入があったときは、いつもより新NISAの積立金額を増やしたいと思う人もいるでしょう。金融機関によっては、ボーナス月など特定の月だけ新NISAの積立金額を増やすことが可能です。
増額設定をする場合は、年間投資枠の上限を超えないように設定しなくてはなりません。つみたて投資枠の場合、毎月の積立金額と増額分の合計が年120万円に収まるようにする必要があります。
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新NISAの積立金額の決め方
新NISAは年間投資枠が拡大しましたが、毎月10万円、30万円といった大きな金額を積み立てられる人は多くないでしょう。また、年間投資枠が拡大したゆえに、かえって毎月いくら積み立てるかを決めるのが難しいかもしれません。
そこで、ここでは新NISAの毎月の積立金額を決める考え方を紹介します。
保有資産の状況を整理して投資に回せる金額を把握する*3
資産運用は貯めることを目的とした「預貯金」と、増やすことを期待した「投資」の2つがあります。まずは保有資産の状況を整理して、預貯金と投資に回すことができるお金の範囲を明確にすることが大切です。具体的には、自分のお金を次の3つに分類してみましょう。
- 日々の生活に必要なお金
- 数年のうちに使う予定のお金
- 当面使う予定がないお金
投資することでお金が増える可能性がある一方で減ることもあり、ましてや元本は保証されていません。1と2のお金で投資をすると、現在の生活や将来の予定に影響が出る恐れもあります。そのため、1と2は預貯金で準備し、投資は3の「当面使う予定がないお金」で行うのが基本です。
新NISAの積立金額を増やしたい場合は、日々の生活費や将来のライフイベントでかかる費用を見直してみるといいでしょう。
毎月の収入と支出から積立金額を決める
収入の一部を積み立てる場合は、毎月の手取り収入から生活費(食費、住居費、水道光熱費など)を差し引いた残りがいくらあるかを計算して毎月の積立金額を決めます。生活費については、月によってぶれることがあるので、できるだけ上限を考慮した方がよいでしょう。
例えば、手取り収入20万円、生活費15万円の場合、新NISAの積み立てに回せるのは最大5万円です。
先ほど紹介した保有資産の整理を行い、「数年のうちに使う予定のお金」と「当面使う予定がないお金」が十分に準備できているなら、毎月5万円を積み立ててもいいでしょう。しかし、その準備ができていない場合は、2万円など無理のない金額を積み立て、残りは急な出費が必要になった場合に備えて預貯金にしておくのがよいかもしれません。
目標金額で決める
運用シミュレーションを行い、目標金額をもとに毎月の積立金額を逆算して決める方法もあります。目標金額が決まっていれば、積立期間や想定利回りを設定してシミュレーションをすることで、目標達成に必要な毎月の積立金額を把握できます。ただし、実際に運用シミュレーション通りにいくとは限らない事に留意する必要があります。
目標金額は「65歳までに2,000万円準備したい」「子どもの大学費用として600万円貯めたい」など、今後のライフプランをイメージすると決めやすいでしょう。
積立期間は、目標金額を準備したい時期が明確になれば、現在の年齢をもとに自然と決まります。例えば、35歳の人が「65歳までに2,000万円準備したい」と考えるなら、積立できる期間は最長30年です。利回りゼロで仮定した場合、2000万円÷30年で、年間66.7万円程の金額を30年積み立てると達成できる目標だと分かります。
利回りとは、投資金額に対する利益の割合です。2013年1月に日銀は「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしました。これが実現した状態を平たく表現すると、同じものやサービスが去年と同じ値段で買えず、毎年2%ずつ今のお金が目減りしていくことになります。こうしたことから、日本における資産運用の利回りの目安は、物価上昇率の年2%を超える年3~5%に設定すると良いといわれています。しかし、利回りは投資商品や投資期間、投資開始時期などによって異なるため、一概にはいえません。想定利回りが高いほど、大きなリスク(価格変動)も伴い、投資元本を割り込み確率も高くなります。そこで、投資期間は長くなりますが、想定利回りを実現しやすい低めの値に設定しておくほうが、目標金額は達成しやすくなるでしょう。
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新NISAのつみたて運用シミュレーション
新NISAで積み立てを続けると、将来どれくらいの資産を形成できるのでしょうか。ここでは、毎月の積立金額別に新NISAの運用シミュレーションを紹介します。
あくまでもシミュレーション結果であり、将来の成果を保証するものではありません。
まずは、毎月3万円を積み立てた時の想定利回りと積立期間の関係が分かり易くなるように、値動きを示すリスクを0%と仮定した結果をみてみましょう。
出所)三菱UFJアセットマネジメント「つみたて投資シミュレーション」をもとに筆者試算
上記の表は値動きを示すリスクをゼロとした前提のため、同一の金利で毎月3万円を預金し続けた場合の複利効果を示しています。毎月3万円を30年間積み立てると、投資元本だけでも1,000万円を超える資産を形成できます。30年間積み立てて想定利回り3%、リスクゼロで運用できたならば評価額は約1,736万円、想定利回り5%、リスクゼロで運用できたならば評価額は約2,446万円となります。
しかし、実際の投資商品にはリスク(値動き)があります。高い想定利回りを得ようとすることと引き換えに、高いリスク(値動き)を受け入れる必要があります。そして、リスク(値動き)の大きな投資商品に長期間投資するほど、上記表の金額の上下両方向に振れが大きくなります。
つぎに、初期投資額0万円、毎月のつみたて額3万円、積立期間20年、想定リターン(年率)5%に加えて想定リスク(年率)15%での運用シミュレーションの一例を見てみましょう。
出所)三菱UFJアセットマネジメント「つみたて投資シミュレーション」をもとに筆者試算
グラフの線は上から順に、運用成績が上位5%、上位30%、想定リターン、下位30%、下位5%のシミュレーション結果を示します。また、薄青色の面グラフで示された最下層の部分が投資元本を示しています。このシミュレーション結果は、リターン5%、リスク15%の水準でつみたてを続けた場合、下位30%~下位5%の水準では投資元本を割り込んでしまうことを示しています。もちろん、リターンは想定リターンなので、固定されたものではありませんし、リスク(値動き)についても一定ではありませんので、上記はあくまでシミュレーションの結果であり、実際のファンドの値動きや将来の成果を保証するものではないことに注意が必要です。
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まとめ
新NISAは、旧制度に比べて年間投資枠が大幅に拡大しました。しかし、年間投資枠を使い切ろうとして無理に積立金額を増やすと、急な支出が必要になった際に生活に支障が出る恐れがあります。新NISAで毎月積み立てをするなら、保有資産や家計を見直したうえで、無理のない範囲の金額を設定することを基本としたうえで、運用が当初想定していた通りかどうかを定期的に確認し投資商品などを見直すことが大切です。
本記事で紹介した決め方や運用シミュレーションを参考に、自分にとって最適な積立金額を検討してみましょう。
*1 出所)金融庁「NISAを知る」
*2 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「2024年からのNISAよくある誤解10選「つみたて投資枠は600万円まで」は誤り?(誤解5:成長投資枠ではつみたて投資枠の商品が買えない)」
*3 出所)日本証券業協会「資産運用とは?」