金融リテラシーとは、個人が金融に関する知識を持ち、適切な判断を下す能力を指します。
実際、私たちの生活は多くの金融商品やサービスに囲まれており、これらの正確な理解と運用は「時間を味方につけることができる」若手ビジネスパーソンにとって、平たく言えば低リスクで「金持ちになる」最も現実的な手段です。
ところが「金融リテラシー」という言葉が、なじみのない言葉のため、その実態については正確な理解が進んでいません。
例えば、家計の管理ができているか、も金融リテラシーの一部です。
あるいは預金やローン、クレジットカードの仕組みを理解しているかと言う話。
あるいは株式や債券とは何か、投資信託、そしてNISAとは何が有利なのかを理解しているか。
こうしたリテラシーを身につけることで、家計を健全な状態に保ち、無駄な利息を支払わず、投資商品を用いてリスクを分散しながら資産を増やすことが可能になります。
金融庁は「金融リテラシー・マップ」というドキュメントを公開しており、この中で「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を、年齢層別に、体系的かつ具体的に記しています。
*https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/literacy_map.pdf
例えば、「若年社会人」の家計管理の項目には、次のように書かれています。
- 家計の担い手として収支管理の必要性を理解し、赤字を出さない(黒字を確保する)意思をもっている
- 収入のうち、一定額を天引きにするなどの方法により、貯蓄を始めている
- 必要性や収入等、様々な要素を勘案して、支出の適否を的確に判断できる
- 趣味や自分の能力向上のための支出を、計画を立てて行うことができる
- 各種のクレジット機能を利用する場合、将来の支出である(借金である)ことをよく理解し、将来の決済時点で収支がバランスする範囲内で利用する(クレジットカードでは、一括払など以外は金利がかかることを認識する)
- 借入に際しては、返済計画を立て、将来の収支がバランスする範囲内で行うことができる
- 高い金利で借りることを避けることができる
- 収入のうち手取り額(可処分所得)について、給与明細書等で把握している
- 給与明細書や源泉徴収票に記載されている内容(税金、社会保険料など)を理解することができる
- 支出(生活費等)について把握している
- 収支残高帳または家計簿などで、収支管理を適切に行っている
詳しくは出典を見ていただいたほうが良いと思いますが、国が「金融リテラシー」の定義をしてくれているのですから、利用しない手はありません。
今回は「金融リテラシー・マップ」を参考とし、「金融リテラシーの高い人は、何を心がけているのか」について話をしたいと思います。
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金融リテラシーの高い人は何を心掛けているのか
1.家計は記録と天引き
そもそも、金融リテラシーが高い人は、リスクを取る前に、家計管理をしっかりと行うことを考えています。特に無駄な支出を抑制することが、金融リテラシーの高い人が考える「金持ちになるための道」の第一歩です。
これはコンサルティングの現場での経営改善でも同じなのですが、
「売上を高める」ことと「コストを下げる」事のどちらを優先するかと言えば、100%、コストを下げることから入ります。
当たり前ですが、売上に係る施策は100%の効果が見込めるわけではありません。
決定権は我々にないので、最終的には顧客に結果を依存しているのです。
逆にコストに関する決定権は100%我々にあります。
したがって、「コスト施策」は、常に、絶対に効果があるのです。
無駄なコストを削ぎ落すこと。
これが全ての金融リテラシーの基本だからこそ、「金融リテラシー・マップ」の最初に家計管理が載っているのです。
家計管理の基本は、収入と支出を正確に把握し、無駄遣いを防ぐことにあります。
ぜひ、家計簿をつけましょう。といっても、イマドキは手書きの家計簿を作る必要は全くありません。レシートを取っておく必要もありません。
家計簿はアプリ、またはwebサービスを使い、銀行やクレジットカードと連携しましょう。買い物の履歴が自動的に家計簿に反映されます。
よく「クレジットカードを使うとお金を使いすぎてしまう」と言う方がいますが、今はむしろすべてが記録されるクレジットカードの方が、使いすぎを抑制できます。
そして給与口座からは、貯蓄または投資のために天引きをしましょう。
振り込まれたら、すぐに投資用口座にお金を一定程度移動し、残りのお金でやりくりをするのです。金融リテラシーの高い人は、自分の意思を信用しません。
給料が上がるなどして、収入が増えた際には、その増加分は必ず投資に回します。
生活レベルを無駄に上げてしまう行為は、金融リテラシーの高い人はやりません。
一度上がった生活レベルを落とすことは至難の業だからです。
2.投資は難しいことをしない、わからないことに投資しない
金融リテラシーを高めるためには、金融経済情報に対する関心を持つことが不可欠で、ニュースや新聞を通じて、経済の動向や金融市場の変化を常にチェックする習慣をつけましょう……といった言説をよく見かけます。
もちろん金融リテラシーを高めるために、各種の情報に目を通すこと事態は悪いことではありません。
しかし、我々は金融の専門家ではないため、金融の専門情報に対して「わからないこと」が数多く出てくることは当たり前です。
ですからただ一つの法則だけ、まずは心に留めておくと良いと思います。
それは「難しいことをしない、わからないことに投資しない」です。
例えば、個別株の売買はプロですら、非常に難しい行為です。
売買の対象となる会社の将来性や、社内の事情、リスクなど、考えるべき要素は無数にあります。
これを、多少経済の勉強をした程度の人間が、適切に扱えるのか、といえば、ほとんどの人には無理であると言わざるを得ません。
そういう意味では、本来であれば「投資信託」という金融商品ですら、本当はうかつに素人が手を出すべきではないのです。金融商品の特性やリスクを理解し、自分のニーズに合った商品を選ぶことは、基本的にはかなり高度な、難易度の高い行為だとあきらめましょう。
でも、貯蓄だけでは将来が不安だし、インフレに対して負けてしまう……それでも投資を考えたい、という人は、新NISAをまず勉強しましょう
それが「金融リテラシーの高い人」の行動です。
新NISAという制度は、このとんでもなく難しい、投資という行為を、素人でも扱えるように政府が整備してくれているのです。
NISAが理解できないなら、他の金融商品は決して理解できません。
それくらい、簡単になっているのがNISAです。
そして、ここが一番大事なのですが、NISAは短期的には全く儲かる実感はないものです。
というのも、NISAは、長期・分散投資を前提として、計画的に資産を形成することを前提としているからです。
これがなぜ、投資初心者にとって有利なのか、NISAについての詳細な解説は、このサイトにも良い記事が他にたくさんありますので、そちらを参考にしてください。
ただ、繰り返しになりますが、金融リテラシーの高い人は「わからないものに投資しない」という方針を貫く人です。
3.手元には現金を置いておく
金融リテラシーの高い人は、手元に一定程度の現金を置いておくことの重要性をよく知っている人です。
すくなくとも、3か月の生活資金が手元にないと、事故や病気、予期せぬ職場のトラブルなどに対応できません。
結局、積み立ててきたNISAの投資信託などを解約せざるを得ない状況になると、損をする可能性が高くなってしまいます。
ですから、金融リテラシーの高い人は次の順番を守ります。
↓
貯蓄(生活費3か月分)
↓
貯蓄に回していた金額を投資に回す
また、子供が既にいる人は、子供の就学や進学という予測しやすいイベントを、貯蓄の計画に織り込んでおかねばなりません。
このあたりは、頭の中だけで想像することはほぼ不可能ですから、紙にかきおこすなり、あるいは必要に応じて金融の専門家に相談するなどしたほうが良いでしょう。
自分一人で集められる情報には限界がありますから、「他の人に聞ける」という事も含めて、金融リテラシーだと理解しておく必要があります。
4.めんどうくせえなあ、を乗り越える
ここまでの話を見て、「めんどうくせえなあ」と思う人、いますよね。
私ももちろん、該当します。
そうです。お金の話は面倒くさいんです。とてつもなく。
記録をすること、出費を抑制すること、将来のことを想像すること、天引きの手続き、口座の開設、NISAの勉強、人への相談、……
お金の話は様々な意思決定と行動を含んでおり、考えただけで嫌になります。
でも、それを実施することこそ、「金融リテラシー」の本質です。
実は、金融リテラシーとは、知識の話ではない、と私は思います。
「やればいいこと」を、実行する能力こそ、金融リテラシーの本質です。
ですから、お金の話は金融リテラシーという言い方よりも、金融遂行能力、というべき能力ではないかな、と私は思います。
ぜひ「学び」ではなく「実行」をしてみてください。
少なくとも、将来の不安は、待っているだけでは解消しないはずですから。