現物の株式投資では、株価が安いときに株を買い、高いときに売ることで売買差益を得られます。株価は日々上がったり下がったりしていますが、どのようなことから影響を受けて変動しているのでしょうか。現物の株式投資で資産形成に取り組むなら、株価を動かす変動要因を理解しておくことが重要です。
この記事では、株価の決まり方や株式投資で資産形成に取り組むときの注意点を紹介します。
株価は需要と供給のバランスで決まる*1
株価はモノやサービスと同じように、需要(株を買いたい人)と供給(株を売りたい人)のバランスで決まります。
通常、買い手は「少しでも安く買いたい」と考え、売り手は「少しでも高く売りたい」と考えます。この買い手と売り手の希望が一致する価格で売買が成立し、その企業の株価となります。
引用)なるほど!東証経済教室「会社の株価の決まり方」
株を買いたい人が増えれば「現在より高い株価でも買いたい」と考える人も増えるため、株価は上昇しやすくなるでしょう。一方で、株を売りたい人が増えると「現在より低い価格でも売りたい」と考える人が増えるので、株価の下落につながります。
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株価の変動要因は2種類*1
株の需要と供給を決める要因は、大きく次の2つに分けられます。
- 内部要因(その企業自体に関係すること)
- 外部要因(株式市場全体に関係すること)
内部要因には、その企業の業績や投資家からの人気などがあります。その企業自体に関係することであるため、株価を決める大きな要因となります。
外部要因には、金利や外国為替、景気などの動向があります。その企業に直接関係することではありませんが、株式市場全体に関係するため株価に影響を与えます。
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株価を動かす内部要因*1
まずは、株価を動かす内部要因について説明します。
企業業績
株価を決める最大の要因は、その企業の売上や利益の額などを示す業績です。売上や利益の増加が予想されると、それに伴う配当や一株当たり利益の増加などが期待され、株価は上昇しやすくなります。そのため、商品がヒットしてその企業の業績好転が見込まれると、株価が上がることがあります。
反対に、赤字続きで配当も払えないような状態に陥ると、その企業の株を買う人が減少し、結果として株価低迷につながります。
その他の要因
事件や事故など、企業にとってマイナスの出来事が生じると株価は下がりやすくなります。
人気や好感度も株価を動かす要因の1つです。多くの人がよい企業だと思えば、支持する投資家も増えて株価も上がりやすくなります。*2
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株価を動かす外部要因*1
続いて、株価を動かす外部要因について見ていきましょう。
金利
金利とは、預金や借入金に対する利息の割合のことです。金利水準は、経済状況や国の政策によって調整されます。事業会社は通常、事業資金を借り入れたのちに原材料や物品やサービスを購入し、自社の事業活動を行っているため、一般的には、金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる傾向にあります。
引用)なるほど!東証経済教室「会社の株価の決まり方」
金利が下がると利息の負担が軽減されるため、企業は資金調達しやすくなります。調達した資金で事業拡大が可能になり、結果として売上や利益が増加します。
反対に、金利が上がると利払いが増えて資金調達しにくくなります。そのため、事業を縮小する企業が増加し、結果として売上や利益の減少につながります。
外国為替
円やドルなどの交換レートを決める外国為替相場の動きも、株価を動かす要因です。一般的に円安は輸出企業に、円高は輸入企業にメリットをもたらします。*3
引用)投資の時間「株価を動かす要因ってなに?」
輸出企業は、円安になると円での販売額が増加し、円高になると円での販売額が減少します。*3
例えば、日本で生産した車を1台1万ドルで輸出している企業があります。現在の為替レートが1ドル=100円なら、円での販売価格は1台100万円(1万ドル×100円)です。1ドル=120円(円安)になると販売価格は120万円(1万ドル×120円)に増えるので、売上は増加します。一方、1ドル=80円(円高)になると販売価格は80万円(1万ドル×80円)に減るため、売上の減少につながります。*1
輸入企業は円高になると海外から安く製品や原料を輸入できるので、業績アップにつながります。反対に、円安になると海外からの仕入れ価格が上がるため、企業の業績にはマイナスとなります。
景気
好景気のときは、企業の活動が活性化されて収益が増えやすくなるため、株価上昇につながりやすくなります。反対に、不景気になると企業の活動が鈍化して収益が低下し、株価下落につながりやすくなります。
政治
増税や減税、公共事業などの財政・経済対策は政治によって決まります。これらは景気に影響を与えるため、株価を動かす要因です。株式市場は、国会議員の選挙結果や予算案、政策に関する首相や大臣の発言に注目しています。
国際情勢
日本経済は世界経済とも密接な関係があるため、国際情勢は株価を動かす要因となることがあります。
過去には「ブラックマンデー(1987年)」「リーマン・ショック(2008年)」など、日本を含む世界の株式市場で株価が急落する出来事が起きています。戦争のように、経済以外の要因によって株式市場が影響を受けることもあります。*4
天候、自然災害
天候や自然災害も、株価を動かす要因となることがあります。
例えば、猛暑が続くとエアコンやアイスクリーム、冷たい飲み物などを取り扱う製造業は売上アップが期待できるので、株価が上がりやすくなるでしょう。
また、地震などの自然災害で被害にあった企業は、営業や製造などに影響が出て業績が悪化する恐れがあるため、株価が下がりやすくなるでしょう。
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株式投資で資産形成に取り組むときの注意点
ここまで見てきたように、株価はさまざまな要因で変動します。株価の動きに振り回されることなく資産形成に取り組むには、次のことを心掛けるとよいでしょう。
投資銘柄を分散する*5
株式投資では、1つの銘柄だけではなく、複数の銘柄に投資先を分散させるのが有効です。1つの銘柄に投資した場合、その銘柄の株価が高いときに買ってしまう可能性があります。また、投資後に株価が暴落すれば、資産が大幅に目減りするかもしれません。
違う値動きをする銘柄を2つ組み合わせれば、片方の株価が下がっても、もう一方の値上がりでカバーできる可能性があります。さまざまな銘柄にタイミングを分けて投資することで、価格変動リスクを抑えることが可能です。
長期投資を心掛ける*5
長期投資とは、一度購入した金融商品をすぐに売らず、長期にわたって保有し続ける投資手法です。明確な基準はありませんが、一般的には10年単位で運用することを指します。
長期で株式投資をすることで、複利効果を得やすくなります。複利効果とは、投資で得た利益を再度投資に回すことによって、その利益が新たな利益を生んでくれる効果です。運用期間が長くなればなるほど、得られる複利効果も大きくなる傾向にあります。株を長期保有しながら配当金を再投資することができれば、複利効果を得やすくなるでしょう。
また、常に値動きを気にせずに済むのもメリットです。10年以上先を見据える長期投資であれば、短期的な相場の上げ下げに一喜一憂することなく株式投資を継続できるでしょう。
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まとめ
基本的に株価は需要と供給のバランスで決まるため、株を買いたい人のほうが多ければ上昇し、売りたい人のほうが多ければ下落します。株価を決める最大の要因は、その企業の業績です。ただし、その他にも金利や外国為替、景気などさまざまな要因で変動します。
株式投資で資産形成に取り組むなら、リスクの抑制を狙って分散投資と長期投資を心掛けてみるのはいかがでしょうか。
*1 出所)なるほど!東証経済教室「会社の株価の決まり方」
*2 出所)金融経済ナビ「株価はなぜ動く 会社自体に関する要因②:人気」
*3 出所)投資の時間「株価を動かす要因ってなに?」
*4 出所)金融経済ナビ「株価はなぜ動く 株式市場全体に関する要因④:国際情勢」
*5 出所)三菱UFJ銀行「分散投資とは?どんなメリットがある?どんな商品が良い?」