GDPとはなにか?名目と実質は何が違う?日本がGDP順位を落としている理由も解説 

GDPとはなにか?名目と実質は何が違う?日本がGDP順位を落としている理由も解説 

日本の名目GDPは2022年には世界3位でしたが、2023年には55年ぶりにドイツに逆転されて4位になり、さらに2025年にはインドに抜かれて5位になる見通しです。

このように日本が順位を落としているのはなぜでしょうか。
そもそもGDPとはどのようなものなのでしょうか。

わかりやすく解説します。

GDPとは

まず、GDPとはなにか、みていきましょう。

経済状況や経済成長を測る目安

GDPとは「Gross Domestic Product」の略で、「国内総生産」ともいわれます。*1

一定期間内に国内で産出された付加価値の合計金額で、国の経済活動状況を示します。
付加価値とは、サービスや商品などを販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いた価値のことで、簡単にいえば「儲け」のことです。

したがって、GDPによって国内でどれだけの儲けが産み出されたか、国の経済状況の良し悪しを端的に知ることができるのです。

また、GDPの成長率の推移は、経済成長が続いているのか、それとも停滞しているのかを判断する目安になります。

たとえば、ある年のGDPが500兆円、次の年のGDPが550兆円だった場合、GDP成長率は(550-500)÷500×100=10%となります。
もし、前年のGDP成長率も10%だった場合、同程度の成長が続いているといえるでしょう。

このように、GDPは国の経済活動を包括的に示す指標、景気を測る指標として重要なものなので、内閣府が作成・公表しています。*2
その他に、各国のGDPに関しては、IMF(国際通貨基金)や国連による統計もあります。

「名目GDP」と「実質GDP」

GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。*2

名目GDPは、たとえば貨幣価値が下がっていたとしても考慮には入れず、実際に取引されている価格に基づいて推計されるため、物価変動の影響を受けます。*1, 2

それに対して、実質GDPは、ある年(基準年)の価格水準を基準として、物価変動要因が取り除かれています。*2
そのため、より正確な経済成長状況を把握するためには、実質GDPを用います。*1

GDPとGNIの違い

GDPと同じように一国の経済規模を表す指標にGNI(以前の「GNP」と同様の概念)があります。*3

では、GDPとGNIの違いはどこにあるのでしょうか。

その違いは統計の対象範囲です。
GDP(国内総生産)は、上述のように「国内で」一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額です。
したがって、日本企業が海外支店などで生産したモノやサービスの付加価値は含みません。*3

一方、GNIとは「Gross National Income」の略で、「国民総所得」とも呼ばれます。
GNIはGDPから外国人が稼得した所得を除き、日本人が海外で稼得した所得を加えたものです。*4

以前は日本の景気を測る指標として、主にGNPが用いられていましたが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されています。*3

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IMF統計による各国の名目GDPランキング

次に、IMF(国際通貨基金)の統計による2023年のグローバルな名目GDPランキング上位10位までをみてみましょう。(図1)
単位は百万米ドルで、各年の平均為替レートで米ドル換算されています。

第1位はアメリカ、第2位は中国、第3位はドイツ、日本は第4位となっています。

図1【2023年の世界の名目GDP 上位10ヶ国】
出所)IMF World Economic Outlook Database April 2024のデータを基に三菱UFJアセットマネジメント作成

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名目GDPからみる日本の経済

日本のGDPはどのように推移してきたのでしょうか。
また、最近の低迷の原因はなんでしょうか。

日本のGDPの推移

日本のGDPは第二次世界大戦後、順位が次第に上昇してきました。
1950年には240億米ドルで自由世界(西側諸国)中第7位、1955年には191億米ドルでインドを抜いて第6位、1960年には430億米ドルでカナダを抜いて第5位、そして1968年には1,419米億ドルで西ドイツ(当時)を抜き、アメリカについで第2位になりました。*5

その後、2009年までは第2位を保っていましたが、2010年、中国に抜かれて第3位に後退しました。
そして、2023年、ドイツと順位が逆転して第4位になりました(図2)。

図2【2005年以降の日本、中国、インドの名目GDPの推移】
出所)IMF World Economic Outlook Database April 2024のデータを基に三菱UFJアセットマネジメント作成

さらに、IMFが2024年4月に公表した推計*6によると、2025年、インドのGDPは4兆3,398億米ドルに、日本は4兆3,103億米ドルとなり、日本はインドに抜かれ、第5位になる見通しです。
予測されていた逆転時期が1年早まるという推計です(図3)。*7

図3【各国の名目GDP規模の推移(IMFによる2023年予測)】
出所)内閣府「世界経済の潮流 I>第2章 インドの発展の特徴と課題(第1節)>第1節 貿易構造と人口動態からみたインドの経済成長の特徴

名目GDPのランキング下落の原因

日本の名目GDPはなぜインドに抜かれるのでしょうか。

(1)円安の影響と長期にわたる日本経済の低迷
第1の原因は、円安の影響であることが指摘されています。*8

上述のように、名目GDPは貨幣価値が下がっていても、それは考慮しないため、物価変動の影響を受けます。
貨幣価値と物価(モノやサービスの価格)は、表裏一体の関係です。貨幣価値が下がっているということは、物価が上がっているということで、名目GDPはその影響を受けるのです。*9

2022年の為替レートは131.4円/米ドルでしたが、2023年には平均140.5円/米ドルへと6.5%も通貨が減価しました。
名目GDPの成長率はプラス5.7%でしたが、円安の影響でその成長が相殺されてしまいました。*8

その後、2024年5月14日時点でも、円安傾向は続いています(図4)。

図4【外国為替相場チャート表(米ドル/円)2023年5月からの1年間】
出所)MUFG MUFJ銀行「外国為替相場チャート表(米ドル/円)」(2024年5月14日19:48時点)

また、日本が名目GDPのランキングの順位を下げているのは、長期間にわたる経済の低迷が反映されているとも指摘されています。

(2)インドの人口増加
第2の原因として、インドの人口増加の影響があります。労働生産性が同じであれば総人口が多い国ほどGDPが高くなるため、少子化の日本に対して人口増加の続くインドは、この点で有利です。名目GDPの日本とインドの順位が予想より早く2025年に逆転することが予想されています。*8

インドの人口は1960年時点で4億4,083万人でしたが、国連の推計によると2023年には14億2,202万人に達し、世界一となりました。*10

今後もインドの人口は増え続け、2064年に16億9,704万人でピークを迎えると推計されています(図5)。

図5【インドの人口・人口増加率の推移】
出所)JETRO「インドでじわり広がる少子化」(2023年11月6日)

こうした状況から、インドの実質GDP成長率の見通しは日本に比べて相対的に非常に高くなっています。

2025年に日本の名目GDPがインドに抜かれて第5位になるのは、これまでみてきたような状況が反映しているとみられています。

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おわりに

GDPは国の経済力を把握する目安であり、個人消費・経済状況の良し悪しを端的に知ることができます。また、成長率から経済成長の状況を把握することもできます。
また、日本のGDPの順位が下がり続けている要因として、円安と人口増減について取り上げました。GDPの変動には必ず要因があります。要因を読み解く事で経済への理解を深められるでしょう

*1 出所)OECD「国内総生産(GDP)

*2 出所)日本銀行「日本銀行について>GDP、実質GDP

*3 出所)内閣府 経済社会総合研究所「GDPとGNI(GNP)の違いについて

*4 出所)参議院「なぜ成長戦略の目標はGDPではないのか? GNI(国民総所得)

*5 出所)内閣府「昭和44年 年次経済報告

*6 出所)IMF「World Economic Outlook Database, April 2024

*7 出所)内閣府「世界経済の潮流 I>第2章 インドの発展の特徴と課題(第1節)>第1節 貿易構造と人口動態からみたインドの経済成長の特徴

*8 出所)第一生命経済研究所「日本の経済規模5位転落のリスク~ドイツの次はインドに抜かれる~」(2024年2月15日)

*9 出所)金融広報中央委員会 知るぽると「IIお金の知恵>1.お金の特徴

*10 出所)JETRO「インドでじわり広がる少子化」(2023年11月6日)

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