テーマ株(銘柄)とは? 個人投資家が押さえるべき基礎知識を再確認しよう

テーマ株(銘柄)とは? 個人投資家が押さえるべき基礎知識を再確認しよう

東京証券取引所は経済産業省などと共同で、個人投資家向けに特定のテーマや指標をベースに「テーマ銘柄」を抽出し、公表しています。
目的は、株式投資を考えるきっかけの1つ、あるいは関心材料を提供するためです。*1

テーマ銘柄には、女性活躍推進に優れた上場会社を選定した「なでしこ銘柄」の他、「健康経営銘柄」、「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄」などがあります。

こうした「テーマ銘柄」の概要や意義、銘柄企業の業績パフォーマンスなどについて解説します。

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東証の「テーマ銘柄」とは

東証の上場企業の中から選定された、「なでしこ銘柄」、「健康経営銘柄」、「デジタルフォーメーション銘柄」(以後、「DX銘柄」)は、どのようなものでしょうか。
それぞれについて、概要をみていきましょう。

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「なでしこ銘柄」

「なでしこ銘柄」の選定は、東証と経済産業省が共同で、平成24(2012)年度から実施しています。*2

その目的は、女性活躍推進に優れた上場企業を「中⾧期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することで、企業への投資を促進し、各社の取組みを加速化していくこと。

東証の上場企業の中から、女性が働き続けるための環境整備など、女性人材の活用を積極的に進めている企業を紹介しています。*3

令和5(2023)年度の「なでしこ銘柄」・「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」

12回目の選定となった令和5(2023)年度の「なでしこ銘柄」についてみていきましょう。

この年は、「なでしこ銘柄」として27社が選定されました。*3

また、新たに「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」が特に優れた上場企業「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」を、合計16社選定しました。*3

令和5年度「なでしこ銘柄」・「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」

銘柄企業の業績パフォーマンス

では、「なでしこ銘柄」に選定された企業の事業パフォーマンスはどうでしょうか。
以下の図1は、選定企業27社と東証プライム銘柄全体の事業パフォーマンスを比較したものです。

図1 【「なでしこ銘柄」選定企業の業績パフォーマンス】
出所)経済産業省「令和5年度「なでしこ銘柄」レポート」(2024年3月)p.12

令和5年度選定(令和4年度通期)の「なでしこ銘柄」は、売上高営業利益率(営業マージン)がプライム市場の平均値を3.2%ポイント、配当利回りも2.5%ポイント上回っています。

このように、「なでしこ銘柄」に選定された企業は、実際に業績パフォーマンスが優れていることがわかります。

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「健康経営銘柄2024」

東証は経済産業省と共同で「健康経営銘柄」を選定し、公表しています。

「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に企業の収益性を高める投資であると考え、従業員の健康管理を経営的な視点から捉えて、戦略的に実践することを指します。

健康経営の推進は、従業員の活力や生産性の向上など、組織の活性化をもたらし、結果的に業績や企業価値の向上につながります。*4

「健康経営銘柄」の選定は、健康経営推進企業を投資家にとって魅力ある企業として紹介することによって、「健康経営」の取組みを促進することを目指しています。*4

「健康経営銘柄2024」の選定要件

2024年3月に公表された「健康経営2024」は第10回目で、27業種から53社を選定しました。*5

「健康経営銘柄2024」選定企業

健康経営度の評価モデルは、令和5年度健康経営基準検討委員会での検討を経て決定されています。*6

これは、健康経営の実践度合いを、以下の5つのフレームワークから評価するものです(図2)。

1. 経営理念・方針
2. 組織体制
3. 制度・施策実行
4. 評価・改善
0. 法令遵守・リスクマネジメント

図2 【「健康経営銘柄2024」の選定要件】
出所)経済産業省・日本取引所グループ「2024 健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」<PDF>p.3

それぞれのフレームワークには、健康経営の取り組み度合いに関する社会的な現状を踏まえて図2の右表のような評価配点のウェイトを設定し、最終評価を算出しています。

投資家への開示

では、銘柄選定企業は、投資家との対話において健康経営をどのように位置づけているのでしょうか。

銘柄選定企業の89%が「成長戦略の中に位置づけ説明」、85%が「ESG投資の一環として健康経営を位置づけ説明」と回答しています(図3)。
これらの割合は、銘柄選定企業以外の上場企業がそれぞれ41%であるのと比較すると、とても高いことがわかります。

図3 【投資家との対話】
出所)経済産業省・日本取引所グループ「2024 健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」<PDF>p.46

国際展開

企業を持続的に発展させ、企業価値向上を実現するためには、国内にとどまらず、海外赴任者や現地雇用者などを含めた健康経営の実践が必要です。 

海外グループ企業がある銘柄選定企業のうち、自社の健康経営推進方針に基づき、全世界で健康経営を推進している企業は48%、海外の一部で健康経営を推進している企業は34%で、それらを合わせると82%になります。*6

このように、健康経営銘柄は、投資家との対話という面でも、海外展開という面でも優れた取り組みを推進しているのです。

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「DX銘柄」

東証と経済産業省は共同で2015年から、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を、「攻めのIT経営銘柄」として選定してきました。*7

目的は、日本企業の戦略的IT利活用の促進に向けた取組みの一環として、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化を図るためです。

2020年からは、デジタル技術を前提として、ビジネスモデルを抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を、「DX銘柄」として選定しています。

「DX銘柄2023」

東証と経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構は共同で、「DX銘柄2023」と「DX注目企業2023」を選定し、2023年5月31日に公表しました。*7*8

また、企業のDXに向けた取組みを強く後押しするため、銘柄選定企業の中から“デジタル時代を先導する企業”として「DXグランプリ企業」2社を発表しました。

さらに、2023年度から新たに設けた「DXプラチナ企業2023-2025」として、制度開始当初から特に傑出した取組みを継続している企業を3社選定しました。*7

「DXグランプリ企業」「DX銘柄2023」「DX注目企業2023」「DXプラチナ企業2023-2025」

デジタルガバナンスコードの実践

経済産業省は、 DXに関する企業の取組みを促進するため、デジタル技術による社会変革を目指した経営ビジョンの策定・公表など、経営者が対応すべきことを取りまとめ、2020年に「デジタルガバナンス・コード」を策定しました。*9

また、2022年にはその改訂版「デジタルガバナンス・コード2.0」を策定しました。

「DX銘柄」の選定にあたっては、デジタルガバナンス・コード2.0に紐づく「DX認定」が前提条件になっていて、「DX銘柄」との有機的な連動を図っています。
では、「DX銘柄」は実際にデジタルガバナンス・コードを実践しているのでしょうか。

「デジタルトランスフォーメーション調査2023」によると、「DX銘柄」は回答企業全体の平均値と比べると、デジタルガバナンス・コードに関する回答スコアが高く、どの項目でも100%近い割合を示しています(図4)。

図4 デジタルガバナンス・コードに関する回答スコア
出所)経済産業省、日本取引所グループ、独立行政法人 情報処理推進機構「デジタルトランスフォーメーション銘柄2023」p.106

このことから、「DX銘柄」は実際に、デジタルガバナンス・コードを実践している企業と考えられます。

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おわりに

これまでみてきたように、東証と経済産業省などが共同で選定しているテーマ銘柄は、それぞれの分野で、中長期的な企業価値の向上を重視する個人投資家にとって、魅力的な取組みをする企業がラインナップされています。

株式投資を考える際の参考資料として、注目してみてはいかがでしょうか。

*1 出所)日本証券取引所グループ「テーマ銘柄の選定

*2 出所)経済産業省「令和5年度「なでしこ銘柄」レポート」(2024年3月)p.4, p.12

*3 出所)日本取引所グループ令和5年度「なでしこ銘柄」「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」の公表について」(2024年3月21日)

*4 出所)日本取引所グループ「「健康経営銘柄2024」の公表について」(2024年3月21日)

*5 出所)経済産業省「「健康経営銘柄2024」選定企業(27業種53社、業種順)

*6 出所)経済産業省・日本取引所グループ「2024 健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」<PDF> p.3, p.46

*7 出所)経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)

*8 出所)日本取引所グループ「「デジタルトランスフォーメーション銘柄2023」の公表について

*9 出所)経済産業省、日本取引所グループ、独立行政法人 情報処理推進機構「デジタルトランスフォーメーション銘柄2023 」(2023年5月31日)p.2, p.106

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