インフレ(インフレーション)とは?原因と現在の状況をわかりやすく解説

インフレ(インフレーション)とは?原因と現在の状況をわかりやすく解説

日本は2022年、2023年ともに消費者物価指数の総合指数が前年より上昇しました。

日本銀行総裁は、2024年2月22日、今後も物価上昇の動きが続くとの見方を示し、日本経済は「デフレではなく、インフレの状態にあると考えている」と述べました。

物価上昇には、さまざまな要因が絡み合っていますが、物価の上昇は貨幣価値にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

物価変動の要因とインフレ・デフレのメカニズム、現在の物価上昇の動向、物価と貨幣価値との関係をわかりやすく解説します。

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物価変動の要因とインフレ・デフレ

物価とは、「モノやサービスの価格を全体としてとらえたもの」で、モノやサービス全体の価格水準のことです。*1

まず、物価変動はどのようなメカニズムによって生じるのか、みていきましょう。

物価変動の要因にはさまざまなものがありますが、商品やサービスの値段は基本的に、それを買う動きである需要と、売る動きである供給のバランスで決まります。
一般に商品やサービスの需要が供給を上回れば物価は上がり、逆に、供給より需要が下回れば物価は下がります。

「インフレーション」(以後、「インフレ」)とは物価が上がり続けることであり、それに対して「デフレーション」(以後、「デフレ」)とは、物価が下がり続けることです。*2

インフレは、好況下でモノ・サービスに対する需要が増加し、供給を上回ることや、原材料費の上昇・人件費の高騰などにより生じます。このような場合、モノの価格が上がっていくため、消費者は買い物を先延ばしにせず「安いうちに買おう」という心理が働きます。
一般論として、消費が活発になれば、企業は売上が増えるため利益も増加します。すると、従業員の給料も上がり、社会にお金が循環して景気は上昇します。
ただし、インフレにはデメリットもあるため、それについては後述します。

一方、デフレは、不況下でモノやサービスに対する需要が減少し、供給を下回ることで起こります
「デフレ」はモノの価値が安くなるため、消費者には「もう少し待てばもっと安くなるのではないか」「もう少しお金に余裕があるときに買おう」などといった意識が働き、買い控えの心理が働くため、どんどんモノが売れにくくなります。
その結果、企業は売上が減少し、「利益の減少にともなって従業員への報酬を減らす」「設備投資を抑える」などといった対策をとるため、社会にお金が回らなくなり、景気が悪化してしまうのです。
これをデフレスパイラルと呼びます。

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物価上昇の動向

次に、最近の物価上昇の動向をみていきましょう。

日本銀行の金融政策

市場経済では、個人や企業はモノやサービスの価格を手がかりにして、消費や投資を行うかどうかを決めているため、物価が大きく変動すると、個々の価格を手がかりにして判断を行うことが難しくなり、さまざまな問題が生じます。*1
あらゆる経済活動や国民経済の基盤は、物価が安定していて、お金を安心して使うことができることなのです。

そこで日本銀行は2013年1月に、物価安定のための金融政策として「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現すると約束しました。

物価の分析

物価の変動は経済活動に大きな影響を及ぼしますが、ひとくちに物価といっても、それが企業の間で行われる取引か、企業と個人の間の取引かにより、同じ財やサービスでもいくつもの価格が存在します。たとえば、消費者が購入する財やサービスの物価として「消費者物価指数」が、企業間で取引される財の物価として「企業物価指数」が、さらに企業間で取引されるサービスの物価には「企業向けサービス価格指数」があります。 *3

日本銀行では、こうした物価指数に加えて、国内外の原油、非鉄金属、農林水産物などの市場での取引価格など、さまざまな動向に注意しながら、総合的に物価の動きを分析しています。

ただ、上述のように、金融政策として消費者物価の前年比上昇を掲げているため、特に「消費者物価指数」の動向を注視しています。

消費者物価指数

物価の動きは、比較の基準となる時点を決めて、その時の物価に対してどの程度上昇(あるいは下落)したかを比率のかたちで見るのが一般的です。*4
そのように、物価の動きを比率で表したものを物価指数といいます。
物価指数は、物価の動きを客観的に分かりやすく、数値として表したものです。

消費者物価指数とは、基準となる年の物価を100として、その時々の物価を比較計算した数値です。*5

私たち消費者が日常購入する食料品、衣料品、電気製品、化粧品などの価格の動きのほかに、家賃、通信料、授業料、理髪料などのようなサービス価格の動きも含まれます。*4

消費者物価の基調を見るために、生鮮食品を除く総合指数や生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数が用いられることもあります。*5
「生鮮食品」は天候要因で値動きが激しく、「エネルギー」(ガソリン、電気代等)は海外の要因で変動する原油価格の影響を直接受けるため、これらの一時的な要因や外部要因を除くことが、消費者物価を把握する上で有益だと考えられているからです。

消費者物価指数は、金融政策の判断材料になっているだけではなく、国民年金や厚生年金などの給付水準の見直しや、賃金、家賃や公共料金改定の際の参考に使われるなど、幅広く利用されています。

最近の消費者物価指数とインフレの要因

では、最近の消費者物価指数はどうなっているのでしょうか。

2024年1月の総合指数は、2020年を100として106.9(前年同月比2.2%上昇)、生鮮食品を除く総合指数は106.4(前年同月比2.0%上昇)、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.8(前年同月比3.5%上昇)で、いずれも日本銀行が掲げる「前年比上昇率2%」という目標を達成しています。*6

また、2021年から2024年1月までの消費者物価指数の動きは、以下の図1から図3のようになっており、2022年、2023年ともに年単位でみると、前年比を上回っています。

左から、図1【総合指数の動き】
図2【生鮮食品を除く総合指数の動き】
図3【生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の動き】

出所)法務省 報道資料「2020年基準消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)1月分」p.1

最近の物価上昇の要因として、新型コロナの5類移行による行動制限緩和の影響で、国内外の旅行客が回復するなどサービス産業を中心に消費が回復したこと、円安の進行やウクライナ情勢を背景に、海外から輸入される原材料やエネルギー価格が上昇したことなどが指摘されています。

日本銀行の植田総裁は2024年2月22日の衆議院予算委員会で、今後も物価上昇が続くとの見通しを示した上で、日本経済について「デフレではなくインフレの状態にあると考えている」と述べました。

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物価と貨幣価値の関係

では、インフレでは、貨幣価値はどう変化するのでしょうか。

インフレと貨幣価値

お金の価値と、モノやサービスの価格である物価は、表裏一体の関係です。
物価が下がっていること(デフレ)は、お金の価値(モノやサービスを買う力=購買力)が上がっていることであり、物価が上がっていること(インフレ)は、お金の価値が下がっていることです。

こうした関係は、インフレのデメリットにつながります。*2
たとえば200万円の車を購入するために200万円を貯金したとしても、インフレによって車の値段が300万円に上がってしまえば、その車を買うことはできなくなります。この状態が、お金の価値がさがるということです。

インフレが進行すると、金額が同じでもこのようにお金の実質的価値は目減りします。これをインフレリスクといいます。(図4)。*7

図4【年0~3%のインフレが進行した場合の1,000万円の価値】
出所)MUFG「どうして資産形成が必要なの?

実質的な貨幣価値を維持するためには

現金や固定金利の定期預金、債券などには、インフレリスクに弱い側面があることを理解することが大切です。
インフレでは、お金の実質的な価値を維持するためには、物価上昇率以上の利回りで増やす必要があるのです。

物価と貨幣価値のこうした関係を理解し、資産形成など、預金とは別の形でお金をいかす方法を考えるのも有益ではないでしょうか。

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