ガソリン税とは?ガソリン価格が高騰する理由や激変緩和補助金、トリガー条項についても解説

ガソリン税とは?ガソリン価格が高騰する理由や激変緩和補助金、トリガー条項についても解説

近年はガソリン価格が高騰しており、経済や家計に大きな影響を与えています。そもそもガソリン価格はどのように決まるのでしょうか。ガソリン価格には税金も含まれているため、価格が上がる理由を理解するには、ガソリン税の仕組みを押さえておく必要があります。

今回は、ガソリン税の概要やガソリン価格の決まり方、値上がりする理由について解説します。

ガソリン税とは

ガソリン税とは、ガソリンに対して課される以下2つの税金の総称です。*1

  • 揮発油税(きはつゆぜい)
  • 地方揮発油税(ちほうきはつゆぜい)

いずれも揮発油に課税され、揮発油の製造者や保税地域から引き取る者に納税義務があります。揮発油税と地方揮発油税は併せて徴収されます。揮発油税は国の一般財源で、地方揮発油税は税収の全額が都道府県及び市町村(特別区を含む)に譲与される仕組みです。*1

一般的に揮発油はガソリンを指し、揮発油税法では「温度15度において0.8017を超えない比重を有する炭化水素油」と規定されています。*2

ガソリン税の税率

ガソリン税の税率は以下の通りです。

出所)財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成

ガソリン税

ガソリン価格には1リットルあたり53.8円のガソリン税(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)が含まれています。*3

租税特別措置法により、当分の間、特例税率が適用されることになっています。*1

本体価格

ガソリンは原油から製造されるため、本体価格は原油価格によって変動します。原油価格に影響を与える要因には、世界経済や産油国の増産・減産計画、産油国の政情不安、季節による需要増減などがあります。

石油石炭税・地球温暖化対策税

石油石炭税は、ガソリンなどの石油製品や石炭などに課税される税金です。石油製品の場合、本則税率は2,040円/㎘(1リットルあたり2.04円)となっています。*4

平成24年10月1日には、租税特別措置法に「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が設けられました。平成28年4月1日からは、地球温暖化対策税として760円/㎘(1リットルあたり0.76円)が石油石炭税に上乗せされて2,800円となっています。*4

消費税

ガソリン価格には、本体価格、ガソリン税、石油石炭税、地球温暖化対策税の4つの合計額に消費税率10%が適用されます。

ガソリン税などの税金にも消費税がかかっているため、「二重課税ではないか」と疑問を感じるかもしれません。しかし、ガソリン税や石油石炭税、地球温暖化対策税は石油メーカーなどが納税し、その負担は商品価格に組み込まれていることから、消費税の課税対象となっています。

ガソリン価格が上がる要因

ガソリン価格が上がる主な要因として考えられるのは次の2つです。

  • 原油価格の上昇
  • 円安

2020年以降、ロシアのウクライナ侵攻など、世界情勢が不安定となる出来事が発生しました。「原油が手に入りにくくなるのではないか」と考える人が増え、需要が急増したことで原油先物価格が上昇しました。*5

特にウクライナ侵攻はロシアが一大産油国であることに加えて、実際にパイプラインの破損などが発生したことが投資家の不安を招き、原油価格の高騰につながりました。

また、円安が続いていることもガソリン価格が上がる理由の1つです。日本はエネルギー自給率が低く、国内で使用する原油のほとんどを輸入に頼っています。

海外の通貨に対して円が安くなると輸入品の価格は上がるため、原油価格のさらなる上昇の原因となっています。

ガソリン価格の抑制が期待できる制度

ここでは、ガソリン価格の抑制が期待できる制度を2つ紹介します。

燃料油価格激変緩和補助金

燃料油価格激変緩和補助金とは、新型コロナ下や世界情勢不安などからの経済回復の重荷となる燃料油価格の高騰を抑制するための対策です。燃料油価格を抑えて小売価格の急騰を抑制することにより、消費者の負担を低減することを目的としています。*6

1リットルあたりの全国平均ガソリン価格が一定の基準を超えた場合に、燃料元売りに対して補助金を支給します。消費者に直接補助金が支給されるわけではありませんが、ガソリン価格の抑制が期待できます。

補助金の効果は以下の通りです。

引用)資源エネルギー庁「燃料油価格激変緩和補助金
※2024年2月22日現在

この措置の実施期間は令和6年4月末までとなっています。*6

ガソリン税のトリガー条項

ガソリン税のトリガー条項とは、ガソリンの平均小売価格が3ヵ月連続で1リットルあたり160円を超えた場合に、揮発油税および地方揮発油税について特例税率の適用が停止され、本則税率が適用される規定です。*7

トリガー条項が発動されると、1リットルあたりのガソリン税が25.1円引き下げられるため、ガソリン価格の抑制が期待できます。*7

ただし、平成23年に東日本大震災が発生し、復旧・復興に必要な財源確保に影響が出ることが懸念されたことからトリガー条項は凍結され、現在もその状況が続いています。*7

原油価格の高騰を受けて、国会等ではトリガー条項の凍結解除の必要性が指摘されており、今後の検討課題となっています。*7

まとめ

ガソリン価格には本体価格のほかにガソリン税などの税金が含まれており、価格形成に影響を与えています。国は補助金を支給してガソリン価格を抑制したり、トリガー条項の凍結解除を検討したりしていますが、ガソリン価格の値上がりの今後は不透明な状況です。

物価上昇の対策として、少しでも家計への負担を減らすために「生活費などを見直して無駄な支出を減らす」などの対策を検討しましょう。

*1 出所)財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料

*2 出所)e-GOV「昭和三十二年法律第五十五号 揮発油税法

*3 出所)総務省「自動車税

*4 出所)国税庁「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例等について」<PDF>

*5 出所)農林水産省「原油価格高騰対策

*6 出所)資源エネルギー庁「燃料油価格激変緩和補助金

*7 出所)参議院「揮発油税等の「トリガー条項」-主な経緯と論点-」<PDF>

関連記事

人気ランキング