世界のトレンドWeb3.0とは今後のビジネスをどう変える?

世界のトレンドWeb3.0とは今後のビジネスをどう変える?

Web3.0はブロックチェーン技術を基盤とした、次世代の分散型インターネットとして注目されており、社会を大きく変革する可能性があります。

Web3.0はこれまでのインターネットと何が違うのでしょうか。
また、Web3.0がもたらすビジネスの変革とはどのようなものでしょうか。

本記事はWeb3.0の仕組みを明らかにし、Web3.0によって実現する新たな経済・ビジネスの姿を探ります。

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Web3.0とは

まず、Web3.0とはどのようなものでしょうか。

Web社会の3つの段階とWeb3.0

現在はデジタル技術の発展に合わせて、Web社会を3つの段階に分ける考え方があります。*1
経済産業省はその3つの段階を踏まえ、Web3.0を以下のように説明しています。*2

“次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴付けられるWeb2.0に続くもの。”

Web 1.0とは、インターネット導入初期の段階を指します。*1, 3
コミュニケーション手段としてeメールが登場し、ホームページによる発信、検索エンジンを通じた検索、eコマースによる購買活動が行われるようになりました。

それに続くWeb 2.0では、SNSが生み出され、双方向のコミュニケーションが可能になりましたが、一方で巨大な独占的プラットフォーマーに個人データが集中する仕組みになっています。

そして、Web 3.0によって実現するのは、ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性に支えられて、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由につながり、交流・取引する世界です(図1)。*3, 4

図1【Web社会の3段階とWeb3.0】
出所)経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方ー今後のトークン経済の成熟から、Society5.0への貢献可能性までー」p.11

基盤となるブロックチェーン技術

上述のとおり、Web3.0によってもたらされるのは中央集権不在、つまり巨大プラットフォーマーの支配を脱し、個々が分散されると同時に、個と個がつながった世界です。*1
それを可能とするブロックチェーン技術がどのようなものか、みていきましょう。

まず、ブロックチェーンとは、1つひとつの取引履歴(ブロック)が1本の鎖のようにつながって、情報を記録する技術*4です。

過去の特定のブロックを改ざんするには、それ以降に発生した全ての取引を改ざんすることが必要ですが、それは極めて困難であるため、安全性が高いとされています(図2)。

図2【ブロックチェーンの概念図】
出所)経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方ー今後のトークン経済の成熟から、Society5.0への貢献可能性までー」p.3

ブロックチェーンは、全ての完全な取引データを幾つかの主体が同時に管理・保存するシステムを採用しているため、もしそのうちの1つが破壊されても、別の主体が持っているデータが無事であれば、システムの稼働には問題が生じず、システム稼働の連続性が確保されます。

これまでは、信用を担保するために中央集権的な仕組みが必要でしたが、ブロックチェーン技術による新たな信用担保の仕組みが登場したため、消費者は巨大プラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながることができるようになったのです。

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Web3.0がもたらすトークン経済

では、Web3.0がもたらす新たな経済、ビジネスとはどのようなものでしょうか。

「ブロックチェーン+インターネット」のポテンシャル

ブロックチェーンは、インターネットだけでは標準実装されていなかった、仲介者を必要としない価値の共創・保存・交換を可能にし、そのことによって以下のポテンシャルをもたらしました。*4

  1. あらゆる価値のデジタル化:通貨、債券、株式や不動産などの金銭的価値だけでなく、アートやデジタルコンテンツ、証明書など今まで取引システムの構築が難しかった非金銭的価値の共創・保存・交換が可能に。
  2. ボーダーレスな価値のやりとりが容易に:誰でもアクセスできるインターネットとブロックチェーンの組み合わせによって、国境をまたぐ個人間の送金や、価値のプラットフォーム間移動も可能に。
  3. 取引時間・コストの低減:プログラムに基づいた取引の実行が容易となるため、取引にかかる時間やコストを中長期的に低減することが可能に。
  4. 価値の共創を促すインセンティブ設計:仕組みに関わる人々に経済的インセンティブを付与することが容易になるため、以前では無価値だったものに価値をつけ、流動性を与えることが可能に。

このような可能性は、「トークン」によってもたらされます。それはどのようなものでしょうか。

トークン経済とは

「トークン」とはブロックチェーン上に刻まれた表章で、「代替性トークン」(FT:ビットコイン・イーサリアムなど)と、「非代替性トークン」(NFT:唯一性が付与される機能をもつもの)に大別されます。*4

トークンはWeb3.0の価値交換媒体で、トークン価値が向上すれば、金銭的リターンにつながります。

Web3.0では1つひとつのプロジェクトが発行するトークンによってそれぞれの「トークン経済圏」が構築されると同時に、それらに互換性を持たせる動きが進み、法定通貨経済ともつながっています(図3)。

図3【法定通貨経済とつながるトークン経済圏】
出所)経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方ー今後のトークン経済の成熟から、Society5.0への貢献可能性までー」p.15

トークン化による金融商品の多様化

ブロックチェーン技術の活用によって、これまで権利移転管理などのコストが過大だったため個人投資家向けの販売が難しかった金融商品をトークン化(デジタル化)して販売することが可能になりました。*4

以下は、三菱UFJ信託銀行が構築した、セキュリティトークンを基盤とするデジタル証券プラットフォームです。*5

図4【ブロックチェーンを活用したプラットフォーム】
出所)三菱UFJ銀行「ブロックチェーンで投資に新たな選択肢を~デジタル証券プラットフォーム「Progmat(プログマ)」とは?~

経済産業省は、このような取り組みによって、個人向け金融商品の多様化が進展し、投資・経済の活性化につながり得ると考えています。*4

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今後の展望

これまでみてきたように、経済やビジネスにさまざまな変革をもたらし得るWeb3.0ですが、その推進にあたっては、税、会計、法制度、知財、消費者保護、標準などの国内制度が新たなビジネス実態に追いついていないという、政策上の課題が指摘されています(図5)。*1

図5【現行制度の課題例】
出所)経済産業省「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」 p.33

海外に目を向けると、欧米の政府はWeb3.0における自国の競争力強化・グローバルハブ化に向けた取り組みを始めたところですが、規制強化への流れもあり、規制と振興のバランスを模索している状況です。*1, 4

一方、シンガポールやアラブ首長国連邦など一部の国は、優遇税制などの支援策による企業誘致が先行し、ビジネス上有利な環境を求めて、Web3.0関連企業が集積しています。

革新的な経済、ビジネスを実現しつつあるWeb3.0。その動向に注目していきましょう。

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