円安は生活にどんな影響を与える?メリット・デメリットと個人ができる対策を紹介

円安は生活にどんな影響を与える?メリット・デメリットと個人ができる対策を紹介

2022年10月に1米ドル=152円に迫る水準を記録し、約30年ぶりの円安水準となりました。*1
その後も継続的に円安傾向が続いていますが、円安は私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょうか。

大切な資産を守るには、円安になる理由を把握したうえで、家計への影響を最小限に抑える対策を講じることが有効です。

今回は、円安になることで考えられる影響やメリット・デメリット、個人ができる対策などを紹介します。

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そもそも円安とは?

円安とは、外国の通貨に対する円の価値が相対的に低くなることです。*2

具体例として、1米ドル=100円のときに、1ドルのジュースを購入するケースについて見てみましょう。

この状況において、円でジュースを1本購入するには100円が必要です。しかし、為替レートが1米ドル=110円に変動すると、円でジュースを1本購入するのに必要なお金は110円に増えます。同じものを購入するのに、今までより多くの円が必要になってしまうため、円の価値が低くなったといえます。

反対に、円の価値が相対的に高くなることを円高といいます。*2

上記のケースで為替レートが1米ドル=90円に変動すると、100円だったジュースが90円で買えるようになるため、円の価値が高くなったといえます。

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円安になる理由

円安になる主な原因として、需要と供給のバランスのほかに、日米の金利差や貿易収支などが考えられます。*3

米国では、インフレ(物価上昇)を抑制するために2022年から金融引き締め政策に転換し、長期金利が上昇しています。それに対して、日本では、景気回復を図るために金融緩和政策が続けられており、長期金利が長期間にわたり低水準に抑えられています。

2023年12月15日時点で米国の長期金利(10年国債利回り)は3.915%ですが、日本は0.708%です。*4

金利の高い米ドルで運用すれば、より多くの利息収入が見込めます。米ドルの需要が高まり、日本円が売られることによって、円の価値が下がって円安が進みやすくなっています

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円安のメリット

円安になると円の価値は相対的に低くなりますが、悪いことばかりではありません。ここでは、円安のメリットを3つ紹介します。

外貨建て資産の価値が高まる

円安のときに外貨建て資産を保有していると、外貨での資産価値が高まります

例えば、1米ドル=100円のときに10万円を1,000米ドルに交換して外貨預金とし、その後為替レートが1米ドル=110円に変動すると、円換算で11万円(1,000米ドル×110円)となります。預入時より円安になったことで、資産価値が1万円増えることになります。(利息は考慮せず)

また、外貨預金では、預金中に外貨で利息が発生します。円安が進むと、この利息の円換算額も増えることになります。

輸出企業は売上増加につながる

円安は、輸出企業にとっては売上増加が見込まれます。

海外企業は、円安になると日本の製品を安く買うことができます。輸出先の海外市場では日本製品の価格が下がるため、販売が伸びていけば輸出の増加につながります。

3,000円の商品を米国企業が輸入する場合、1米ドル=100円なら30米ドル必要です。しかし、円安が進んで1米ドル=150円になると20米ドルで済みます。米国企業にとっては輸入コストが下がり、現地の販売価格を下げることが可能になります。

日本の製品が海外での価格競争で有利になることから、輸出企業は売上増加が見込めることになります。

インバウンド需要が期待できる

円安になると、外貨を持っている人はより多くの円に交換することが可能です。外国人観光客にとっては、円安のタイミングで日本を訪問することによって、日本で安く買い物ができるようになります。そのため、円安は外国人観光客の増加につながり、インバウンド需要が期待できます*5

外国人観光客が増えれば、ホテルや土産店などの観光施設で働いている人は仕事が多くなり、収入が増える可能性もあるでしょう。

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円安のデメリット

一方で、円安には次のようなデメリットもあります。

輸入企業はコストが増加する

円安は、輸入企業にとっては海外製品の輸入コストが増加するため、デメリットとなります。

商品や原材料の価格はもちろん、燃料などの価格も上昇することになります。輸入コストが上がっても、そのすべてを販売価格に転嫁するのは簡単ではないでしょう。円安による輸入コストの増加は、輸入企業の利益を圧迫する要因となります。

輸入商品の価格が高くなる

円安の進行は、輸入商品の価格上昇につながります。円高になると輸入企業が負担するコストが増えるため、利益を確保するために店頭での販売価格が上がるかもしれません。輸入商品の価格が高くなれば、家計の負担が増える要因にもなります。

海外旅行の費用が高くなる

円安は、海外旅行の費用が高くなるのもデメリットです。外貨に比べて円の価値が低くなっているときは、ホテル代や飛行機代が通常より高くなり、現地でのショッピング代や飲食代も割高になります。

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円安に備えて個人ができる対策は?

為替レートは常に変動しており、円安になるときもあれば、円高になることもあります。将来の為替レートを予測するのは困難ですが、適切な対策を行うことで、大切な資産を守ることが可能になります。

ここでは、円安に備えて個人ができる対策を2つ紹介します。

外貨建て資産を保有する

円安時には外貨建て資産の資産価値は高まります。外国株式や外国債券、外貨預金といった外貨建て資産を保有しておけば、円安になったときに円の資産価値が減少するリスクを回避できるでしょう。

ただし、外貨建て資産だけを保有すると、円高になったときには円での資産が減ってしまいます。為替レートが円安・円高のどちらになっても資産を守れるように、円建て資産と外貨建て資産を保有することが大切です。

国内製品を利用する

円安のときには、国内製品を利用する機会を増やすことも家計の負担を軽減する方法の一つです。国内製品は、国内の原料を使用し、国内で製造されているものであれば、為替変動の影響を受けにくい傾向にあるからです。ただし、国内の原料を使って国内で製造する場合でも、製造過程や運搬過程で用いる石油などの燃料を外国に頼っている場合には、円安の影響を受けて価格が上昇することがあります。例えば、朝食をパンからご飯に変えるなど、身近なところから国内の食品や製品に目を向けていきましょう。国内製品の利用機会を増やすことで、家計への為替要因での値上がりの影響をある程度抑えることができるでしょう。

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まとめ

円安は、輸出企業の売上増加やインバウンド需要などが期待できる一方で、輸入企業のコスト増加や輸入製品の物価上昇などのデメリットがあります。

円建て資産だけを保有していると、現在の日本の低金利ではなかなか資産を増やすことは困難です。為替変動のリスクを考えながら、円建て資産と外貨建て資産をバランスよく保有することを考えてみましょう。

*1 出所)三菱UFJアセットマネジメント「投資戦略マンスリー2022年11月

*2 出所)知るぽると「円高・円安とは

*3 出所)三菱UFJモルガンスタンレー証券「外国為替について

*4 出所)三菱UFJアセットマネジメント「投資環境ウィークリー(2023年12月18日)P2」<PDF>

*5 出所)経済産業省「我が国経済の成長のけん引役として期待されるインバウンド需要

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