諸外国の利上げをきっかけに円安が進んでいることから、外貨投資への注目度が高まっています。外貨で投資することで、分散投資によるリスク軽減や為替差益が期待できます。
ただし、外貨投資には特有のリスクもあるため、損益が生じる要因を理解して投資判断を行うことが大切です。
今回は、外貨投資のポイントや種類について解説します。
(目次へ戻る)
外貨投資とは
外貨投資とは、日本円を米ドルやユーロといった海外の通貨(外貨)に交換して預金したり、海外の資産に投資したりすることです。世界はグローバル化が進んでおり、海外への渡航や輸出・輸入などの場面では、必ずお互いの国の通貨が交換されています。*1
2022年の外国為替市場取引額の通貨別シェアは、1位米ドル(44.2%)、2位ユーロ(15.3%)に次いで、日本円は3位(8.3%)となっています。日本円は世界の主要通貨ではあるものの、世界の通貨取引シェアは1割に満たない状況です。*2
(目次へ戻る)
外貨投資のポイント
外貨投資には以下のようなポイントがあります。
日本以外への地域の分散投資
分散投資とは、投資対象となる資産や銘柄、地域などを分散することによってリスク軽減を図る方法です。*3
投資対象の資産や株式等の銘柄に様々なものがあるのと同様に、投資する対象が存在する地域も日本に限りません。投資対象の資産や銘柄の価格は、投資の対象となっているものが存在している国や地域の状況、為替変動などによって、様々な値動きをすることになります。*3
こうした投資対象地域の性質による値動きの違いに着目して、異なる状況にある地域の資産や銘柄、通貨を組み合わせて投資を行うのが「地域の分散」の手法です。 複数の地域や通貨を組み合わせて投資を行うことにより、特定の地域の資産・銘柄が値下がりした場合に、他の地域の資産・銘柄の値上がりでカバーできる可能性があります。*3
為替差益・為替差損
日本円で外貨建て商品に投資する場合、外貨を日本円に戻すタイミングによっては為替差益が期待できます。例えば、1ドル=100円のときに10万ドル(1,000万円)を投資した場合、円安になって1ドル=120円のときに日本円に戻すと、200万円の為替差益を得られます※。
ただし、逆に円高になった場合は為替差損が生じるため注意が必要です。
※税金・手数料等を考慮していません。
出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国為替について(円だけで大丈夫?)」
高い金利を享受できる
外貨預金では、日本円よりも預金金利が高い通貨があります。預金金利が高いと利息も高くなるため、お金が増えやすくなります。*1
外国債券も、通貨によっては円建て債券に比べて高い金利が期待できます。*4
ただし、為替レートが円高になると、為替差損が生じます。外貨での元本は変わらなくても、円建ての金額が減ることもあります。
また、日本円と外貨を交換する際に為替手数料がかかります。
為替手数料は金融機関によって異なり、投資成果に影響を与えます。外貨投資を行う場合は、コストも考慮して投資方法や投資先を選ぶことが大切です。
図【世界の10年国債利回り】
データ基準日:2023年12月22日
出所:Bloombergのデータを基に三菱UFJアセットマネジメント作成
経済や国際情勢への関心が高まる
投資を始めると、自分のお金を投入し、その値動きを見守らなくてはなりません。外貨投資を行えば、為替相場や国際情勢といった海外の動向に注目する必要があります。投資対象国の政治・経済ニュースなどを日々チェックすれば、自然と経済や国際情勢への理解が深まるでしょう。*1
(目次へ戻る)
外貨投資の主な種類
外貨投資には複数の方法があり、それぞれ仕組みが異なります。ここでは、外貨投資の主な種類と特徴を見ていきましょう。
外貨預金
外貨預金とは、日本円を外貨に換えて預ける銀行預金です。3ヵ月、1年などの定期で預ける「外貨定期預金」、普通預金で預ける「外貨普通預金」があり、利息も外貨で受け取ります。*5
なお、日本円の定期預金や普通預金は、万が一金融機関が破綻した場合、預金保護制度により1金融機関ごとに合算して預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されますが、外貨預金は預金保護制度の対象外です。*6
FX(外国為替証拠金取引)
FXとは、一定の証拠金(保証金)を担保に、その数倍の金額の外国為替取引が可能になる仕組みです。*7
為替手数料が安く、インターネットで簡単に取引できます。一般的には少額から取引でき、高いリターンを得られる場合がある一方で、為替相場が予想と反対方向に動くと大きな損失が発生する可能性があります。*7
外国株式
外貨で外国企業の株式を購入する方法です。外貨そのものだけでなく、外貨で金融商品を購入することも外貨投資に含まれます。*1
企業は資金調達のために株式を発行しており、株式を保有すると銘柄によっては配当金を受け取れます。また、購入時より株価が上がったときに売却すれば値上がり益を得られます。*1
外国株式は世界的な大企業や成長著しい企業などに投資できるため、国内株式よりも多くの配当金を得られたり、大きな利益を目指せたりする可能性があります。一方で、国内株式に比べると手数料が高くなりがちで、投資先企業の情報を入手しにくいなどのデメリットがあります。*1
外国債券
外国債券は発行市場、発行体、通貨のいずれかが外国(外貨)の債券を指します。*8
債券は、国や自治体、企業などの団体が資金調達のために発行するものです。債券を購入すると、その団体にお金を貸すことになります。債券を保有している間は利息を受け取れ、満期になると元本が返ってくるのが一般的です。*1
外国債券は、主に米国やユーロ圏などの国が発行する「国債」、企業が発行する「社債」、公的機関が発行する「国際機関債」があります。*1
国債は国が破綻しない限り返済されるため、基本的に株式よりリスクが低いとされています。ただし、政治や経済情勢が不安定でリスクが高い国もあります。リスクが高い国ほど国債の利回りは高いため、リスクとリターンを見極めて投資先を選ぶことが大切です。*1
投資信託
外国株式や外国債券を投資対象とする投資信託も、外貨投資の1つです。投資家から集めたお金を1つにまとめ、運用会社を通じて複数の外国株式・外国債券などに分散投資を行います。プロの投資家が投資対象を選定するのが特徴です。*7
なお購入したファンドが円建て(基準価額が日本円で表示)であっても、商品の中身が外国資産であれば「円以外の資産」を保有していることになり為替変動の影響を受けます。
(目次へ戻る)
資産形成に外貨投資をうまく取り入れよう
外貨投資は、分散投資によるリスク軽減や為替差益が期待できる一方で、国内への投資とは違った特徴やリスクには注意が必要です。外貨投資には複数の方法があるので、特徴を理解して自分に合った方法を選び、資産形成へ活用してみるのはいかがでしょうか。
*1 出所)三菱UFJ銀行「将来的なリスクヘッジに!外貨投資の基本を解説」
*2 出所)国際通貨研究所「2022 年 BIS 世界外国為替市場調査について P3」< PDF>
*3 出所)金融庁「投資の基本」
*4 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国為替について(円だけで大丈夫?)」
*5 出所)全国銀行協会「外貨預金の特徴を知る」
*6 出所)預金保険機構「預金保険制度の概要」
*7 出所)auじぶん銀行「為替のきほん (7)外貨投資の商品はどう選ぶ?」
*8 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国債券ガイドブック」