リスキリングに有効活用しよう!「教育訓練給付制度」ってなに?どう利用する?

リスキリングに有効活用しよう!「教育訓練給付制度」ってなに?どう利用する?

新たな技術習得を目指す労働者を支援するための「教育訓練給付制度」に注目が集まっています。
厚生労働大臣が指定する教育訓練(講座)を受講すれば、国が受講料の一部を補助する仕組みで、雇用保険加入者であれば最大で70%支給されます。
講座数は2022年時点で14,000に上り、オンライン講座や夜間・週末に受講できる講座もあるため、働きながらスキルアップすることが可能です。

この制度の背景と概要、申請についてわかりやすく解説します。

リスキリングの推進と「教育訓練給付制度」

この制度が注目されている背景として、現在、国がリスキリングを推進していることが挙げられます。
リスキリングとは、以下のように定義されます。*1

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

現在は世界的にDX(進化したデジタル技術を活用した社会改革)が推進されており、必要とされるスキルの代替が急速に進んでいます。
こうした状況から、欧米でも社員の学び直しへの投資・「リスキリング」が経営の最重要課題になるなど、リスキリングは世界的な潮流になっています。*2

また、日本では現在、国が推進しつつある「人的資本経営」の文脈からもリスキリングの必要性が高まっています。
「人的資本経営」とは、企業競争力の源泉は人材であるという認識に基づくコンセプトで、人への投資を奨励するものです。*3
2023年6月に公表された「骨太方針」では、「リスキリングによる能力向上支援」として、在職者への学び直し支援策が掲げられています。*4

こうした状況から、リスキリングに取り組む人への支援制度として、「教育訓練給付制度」が注目されているのです。

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「教育訓練給付制度」とは

「教育訓練給付制度」は、働く人の能力開発やキャリアアップを支援するため、厚生労働大臣の指定した教育訓練講座を受講した際の費用の一部が、ハローワークから支給されるものです。*5

その概要をみていきましょう。

対象者と受給率

支給対象者は、一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者等(在職者)または一般被保険者等であった離職者で、2021年の受給者数は126,700人、支給総額は163.8億円でした。*6

対象となる講座は、2022年10月時点で約14,000講座に上り、身につけられる内容やスキルのレベルによって、「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3つに分かれています(図1)。

図1【教育訓練給付の対象となる資格・講座のイメージ】
出所)厚生労働省「教育訓練給付」p.4

給付率は、次の表1のように、種類によって異なります。*7

表1【「教育訓練給付制度」の種類と給付率および対象講座の例】
出所)厚生労働省「教育訓練給付制度のご案内*7_p.1

次に、この3種類の教育訓練給付について、それぞれどのようなものかみていきましょう。
なお、以下に示す対象講座数は2022年10月時点のデータ、受給者数と支給額は2021年度の実績です。

「一般教育訓練給付金」

「一般教育訓練給付金」は、雇用の安定・就職の促進を支援する対象講座の受講者に支給されます。対象講座数は11,431講座、受給者は89,458人、支給額は34.0億円です。*6

支給要件は、以下の2点。

  • 「在職者又は離職後1年以内(妊娠、出産、育児、疾病、負傷等で教育訓練給付の対象期間が延長された場合は最大20年以内)の者」(すべての「教育訓練給付金」に共通)
  • 雇用保険の被保険者期間3年以上 (初回の場合は1年以上)

給付率は上述のように受講費用の20%(上限10万円)で、受講修了後に支給されます。

「特定一般教育訓練給付金」

「特定一般教育訓練給付金」は、労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成を支援する対象講座の受講者に支給されます。対象講座数は517講座、受給者は2,407人、支給額は1.6億円です。*6

支給要件は、「一般教育訓練給付金」と同じで、以下の2点。

  • 「在職者又は離職後1年以内(妊娠、出産、育児、疾病、負傷等で教育訓練給付の対象期間が延長された場合は最大20年以内)の者」(すべての「教育訓練給付金に共通」)
  • 雇用保険の被保険者期間3年以上 (初回の場合は1年以上)

給付率は受講費用の40%(上限20万円)で、受講修了後に支給されます。

「特定一般教育訓練給付金」を受けるためには、専門の研修を受けた訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項を記載した「ジョブ・カード」の交付を受け、受講開始日の1か月前までにハローワークで手続を行う必要があります。*5
これは、次にみる「専門実践教育訓練給付」も同様です。

「専門実践教育訓練給付」

「専門実践教育訓練給付」は、労働者の中長期的なキャリア形成を支援する対象講座の受講者に支給されます。対象講座数は2,670講座、受給者は34,835人、支給額は128.2億円です。*6

支給要件は、以下の2点。先にみた2つの種類とは初回の支給要件が異なるため、注意が必要です。

  • 「在職者又は離職後1年以内(妊娠、出産、育児、疾病、負傷等で教育訓練給付の対象期間が延長された場合は最大20年以内)の者」(すべての「教育訓練給付金」に共通)
  • 雇用保険の被保険者期間3年以上 (初回の場合は2年以上)

給付率は受講費用の50%(上限年間40万円)を6か月ごとに支給し、さらに訓練修了後1年以内に資格を取得し就職した場合には、受講費用の20%(上限年間16万円)を追加支給します。つまり、最大70%(上限年間56万円)となります。

ちなみに、「専門実践教育訓練給付」が受給可能な人のうち、受講開始時に45歳未満で離職しているなど、一定の条件を満たす場合には、訓練受講をさらに支援するための「教育訓練支援給付金」が支給されます。ただし、「教育訓練支援給付金」は、2025年度までの暫定措置です。*5

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受給に向けて

教育訓練給付金を受給するためにはどのようなことをする必要があるでしょうか。

受給までの流れ

受給までの流れは以下の図2のとおりです。*5

図2【教育訓練給付金を受給するまでの流れ】
出所)政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します

申請までの手続き

図2の「④支給申請」をするためには、まず「①受給資格確認、支給要件照会」が必要です。*5
この照会では、受講開始(予定)日時点での受給資格の有無、受講する訓練講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうかなどを確認します。

支給要件照会は、ハローワークや教育訓練施設で配布する「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入し、運転免許証や住民票の写しなど本人確認ができる書類とともに、ハローワークに提出して行います。

受給対象の講座は、以下の検索システムで検索することができます。*8

「教育訓練給付制度」は、一度利用すると、次回の利用は雇用保険の加入期間(支給要件期間)が再び一定の要件を満たすまで待たなければなりません。教育訓練の機会をいかすために、受講する訓練・講座はよく検討してから決定するのがよいでしょう。*5

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おわりに

国によるリスキリングの推進は現在、待ったなしの急務となっており、個人にとっても市場価値の高い新たなスキルを身につけることは、キャリアアップに欠かせない要素になりつつあります。
「教育訓練給付制度」の利用を視野に、改めてキャリアプランの見直しをしてみるのはいかがでしょうか。

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