投資にも役立つ厚生労働省の「女性活躍推進企業データベース」 どう使う?

投資にも役立つ厚生労働省の「女性活躍推進企業データベース」 どう使う?

内閣府の調査によると、機関投資家の多くが、投資判断や業務において女性活躍情報を活用しています。

厚生労働省の「女性活躍推進企業データベース」は、企業における女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約したデータベースです。 このデータベースを活用すれば、企業名を指定してその企業の取り組みを調べることも、条件を指定して該当する企業を検索することも可能です。

しかも同データベースで公表されている項目は多岐にわたります。
それらはどのような項目で、何がわかるのでしょうか。またデータを見るときのポイントはどのようなものでしょうか。

投資先の検討にも活用できる、同データベースについてわかりやすく解説します。

投資家が注目する女性活躍情報

内閣府が「日本版スチュワードシップ・コード」に賛同する227社の機関投資家を対象に実施したアンケート調査(回答119社)によると、7割近い機関投資家が、投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由として、「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」と回答しました。*1

図1【投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由】
出所)内閣府「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示 概要版」p.1

なお、「日本版スチュワードシップ・コード」とは、機関投資家に対して、企業との対話を行い、中長期的視点から投資先企業の持続的成長を促すことを求める行動原則で、金融庁が策定したものです。*2

同調査によると、機関投資家は女性取締役比率や女性管理職比率をはじめ、女性の活躍に関するさまざまな情報を参照しています(図2)。

図2【投資や業務において活用している女性活躍情報】
出所)内閣府「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示 概要版」p.3

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「女性活躍推進企業データベース」とは

「女性活躍推進企業データベース」(以後、「データベース」)の概要をみていきましょう。

2016年4月、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以後、「女性活躍推進法」)が全面施行されました。この法律は、女性が職業生活において、それぞれの個性と能力を十分に発揮できるように、女性の活躍を推進しようとするものです。*3

同法律では従業員が100人を超える事業主については義務として、「女性の活躍に関する情報公表」を求めています。
「データベース」はこれを受け、各企業が策定した行動計画や自社の女性の活躍に関する状況について公表する場として、2016年2月に運営が始まりました。*4

この「データベース」によってさまざまな情報が収集できます(図3)。

図3【「女性活躍推進企業データベース」のイメージ】
出所)厚生労働省「働く場所は私が見つける!」(リーフレット)p.2

「データベース」を活用するメリットも多様です。
企業にとっては、業界内・地域内での自社の位置づけが確認できること、求職者や学生に自社の取り組みをアピールできることなどのメリットがあります。*4
また、求職者や学生にとっては、企業の「働き方」に関する情報が一元的に入手できるというメリットがあります。

冒頭で述べたように、企業における女性の活躍状況に関する情報が集約されているため、機関投資家も活用しています。*1

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「データベース」で把握できること

では、「データベース」でどのようなことが把握できるのでしょうか。

検索できる項目

企業名を入力すると、的確にその企業についての必要な情報を得ることができます。

また、検索したい項目を指定して、それを条件に、該当する企業を検索することもできます。その際、指定できるのは、業種、企業規模、都道府県、企業認定、データ項目、社内制度、そして検索対象です。*6

それぞれについて詳しくみていきましょう。

■業種

業種は30以上に大分類され、業種によってはさらに細かく分類されています(図4)。

図4【「女性の活躍推進企業データベース」で検索できる業種】
出所)厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース>詳細検索

■企業認定

企業認定としては、「女性活躍推進法」に基づいて女性の活躍促進に関する状況が優良な企業を認定する、「えるぼし認定・プラチナえるぼし認定」が検索できます(図5)。

図5【えるぼし認定・プラチナえるぼし認定】
出所)厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(リーフレット)p.1

この他、女性の活躍推進企業データベースでは、「イクメン企業アワード」「ダイバーシティ経営企業100選」「100選プライム」など、さまざまな認定・表彰を受けた企業を検索することができます。

■データ項目

データ項目にもさまざまなものがあります。
「女性活躍推進法」は2022年に改正され、大企業(従業員301人以上)に対して「男女の賃金の差異」の公表が追加で義務づけられました。*7
「データベース」はこの「男女の賃金の差異」も含め、2023年9月末日現在、以下の15項目について検索することができます。*6

  • 男女の賃金の差異

<働きがいに関するデータ>(8項目)
  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 採用における男女別の競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種または雇用形態の転換実績
  • 男女別の再雇用または中途採用の実績

<働きやすさに関するデータ>(6項目)
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 男女別の採用10年前後の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率
  • 1月あたりの労働者の平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの1月当たりの労働者の平均残業時間
  • 年次有給休暇取得率

■社内制度

検索できる社内制度は以下のとおりです(図6)。

図6【「女性の活躍推進企業データベース」で検索できる社内制度】
出所)厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース>詳細検索

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データを読み解くポイント

次に、データ項目を読み解くためのポイントをみていきましょう。*8
全般的なポイントには以下のようなものがあります。

・企業の女性活躍推進に向けた姿勢を読み取る
⇒現時点の数値だけでなく、「その他関連する取組」の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」などによって、改善に向けた取り組み状況や今後の目標も併せて見る

・その企業で男女問わず能力に応じて力を発揮できているかを読み取る(1)
⇒「残業時間」や「年休取得率」「育休取得率」「くるみん認定の取得」など、働きやすさに関する指標だけではなく、「管理職に占める女性比率」「男女の賃金の差異」「総合職や正社員への転換実績」「えるぼし認定の取得」など、活躍に関する指標も併せて見る

・その企業で男女問わず能力に応じて力を発揮できているか読み取る(2)
⇒「男女の賃金の差異」のみに着目するのではなく、その差異の要因となる「採用に占める女性比率」「競争倍率」「労働者に占める女性割合」「管理職に占める女性割合」「平均継続勤務年数」「10年目定着率」を併せて見る

・その企業の女性活躍推進に対する姿勢を読みとる
⇒どのくらい多くの項目を公表しているかを見る
⇒「認定企業」を見る

おわりに

女性が労働市場で活躍できる環境を整備することは、社会的責任投資(ESG)の一環として高く評価されています。「データベース」は、その点からも貴重な情報ソースです。

女性の活躍を推進している企業への投資は、「データベース」にアクセスし、諸々のデータを活用することも大切です。

*1 出所)内閣府「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示 概要版」p.1, p.3

*2 金融庁「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」< PDF >「責任ある機関投資家」の諸原則<日本版スチュワードシップ・コード>

*3 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」< PDF >(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行について)

*4 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース トップページ

*5 厚生労働省「働く場所は私が見つける!」(リーフレット)

*6 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース>詳細検索

*7 厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」(2022年7月8日掲載 2022年12月28日更新)p.4

*8 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース>データを見るときのポイント!

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