REIT（リート）は、オフィスビルや住宅などの不動産に投資する金融商品です。実物不動産に投資するよりも少額から投資できるため、個人でも不動産投資を始めやすいでしょう。ただし、REITには実物不動産への投資とは異なる特性がある点に注意が必要です。（以下、特に注記等の無い場合は、国内のREITのことを指します。）
今回は、REITの仕組みやメリット、リスク、実物不動産投資との違いについて解説します。
REITとは
REIT（不動産投資信託）とは、投資家から集めた資金を不動産に投資する金融商品です。不動産から得られる賃料収入や物件の売買で得られた収益などを原資に、投資家に分配を行います。*1
REITは「Real Estate Investment Trust」の略称で、もともとは米国で生まれた仕組みです。日本のREITは、JAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれることもあります。*2
株式と同じように証券取引所に上場しており、取引所の立会時間中に市場価格で売買できます。*1
REITの仕組み
国内で上場されているREITは「不動産投資法人」と呼ばれる形態をとっています。REITにおける投資法人とは、不動産の取得・運営だけを目的として作られた法人のことです。その他の業務を行うことは禁止されているため、資産運用に関する業務は以下の関係者に委託されています。
出所）三菱UFJモルガン・スタンレー証券「REIT」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成
投資法人は、投資家や金融機関から資金を調達して不動産に投資します。そして、投資不動産から賃料収入等を受け取り、分配金の支払いを行います。*1
REITの主要業種の特徴
REITの投資対象不動産にはさまざまな業種（セクター）があり、用途に応じて景気変動の影響を受ける度合いが変わります。主要業種とその特徴は以下の通りです。
出所）三菱UFJアセットマネジメント「eMAXISではじめるリート投資」をもとに三菱UFJアセットマネジメント作成
REITのメリット
・高い利回りが期待できる
REITは、配当可能利益の90％超を分配することにより、法人税が免除されます。法人税や内部留保などを差し引いてから配当を行う株式と比較して、相対的に高い利回りが期待できます。不動産賃貸料は、あらかじめ決められた金額が定期的に入ってくるので、安定した分配金につながっています。*1
・換金性が高い
REITは、証券取引所を通じていつでも売買できます。株式と同じように高い換金性があるため、資金が必要になった際は速やかに現金化が可能です。実物不動産の場合、取引相手を見つけて、金額や取引条件などの交渉を経て売却を行うため、手間と時間がかかります。*1
・分散投資によるリスク低減が期待できる
REITは、複数の不動産に投資することによってリスクを分散しています。また、株式や国債などとは異なるリスク・リターン特性(*)を持っており、一般的に他の投資商品とは相関が低いと言われています。実物不動産への投資は、資金面の制約から特定の物件への投資に限定されます。*1
（*）REITは主に不動産に投資していることから、そのリターンは組入れ不動産が生み出す収益（不動産価格の上昇、賃料収入等）に依存しており、不動産市況の影響を強く受けることになります。また、一般的には株式と債券の中間のリスク・リターンに当てはまります。
・少額から不動産への投資が可能
実物不動産への投資は、ある程度のまとまった資金が必要となります。一方、REITなら少額からの不動産投資が可能になります。
例えば、投資用マンションの購入にはある程度まとまった資金が必要ですが、REITに投資する投資信託では現物で不動産投資するよりも少額にて購入できます。最低投資金額は銘柄や金融機関によって異なります。
・インフレに強い
不動産の価値や賃貸料は、物価に連動する傾向にあります。REITでは資産価格上昇による売却利益の拡大、賃貸料上昇による分配金の上昇が想定されるため、インフレに強いといわれています。*1
REITのリスク
一方で、REITには以下のようなリスクもあります。
・不動産市場のリスク
REITは不動産の賃貸・売買市場や金利環境、経済情勢などの影響を受けます。保有物件の賃料収入の減少、物件価格の低下により、REITの価格や分配金が変動する可能性があります。*3
・金利変動リスク
REITは一般投資家から資金を集めるほかに、金融機関から借入を行って資金を調達している場合があります。金利の変動はREITの収益に影響を与えるため、価格や分配金が変動する可能性があります。*3
・災害リスク
REITの投資対象である不動産は、地震や火災などの災害で被害を受ける恐れがあります。被害状況によっては、価格や分配金に影響を与えるため注意が必要です。*3
・倒産・上場廃止リスク
REITを運営する投資法人には倒産リスクがあるため、財務内容の悪化などが表面化すると、価格が大きく下落する可能性があります。また、証券取引所が定める上場基準に抵触すると上場廃止になり、取引が著しく困難となる恐れがあります。*3
REITとREIT投資信託との違い
REITに投資する場合、REIT銘柄を上場市場にて直接売買する以外に「REIT投資信託（REITファンド）」を活用する方法もあります。REIT投資信託とは、複数のREIT銘柄に分散投資ができる投資信託です。ファンドによっては、海外REITに投資することも可能です。
REIT投資信託が向いている人は？
REIT投資信託は、複数のREIT銘柄に分散投資をしたい人に向いています。
REITへの投資金額は、銘柄によってさまざまです。また、銘柄によって投資対象不動産の業種や運用方針も異なります。REIT投資信託なら、少額から幅広いREIT銘柄に投資できるため、リスク低減が期待できるでしょう。
ただし、REIT投資信託では投資銘柄の選定をプロが行うため、信託報酬（運用にかかる手数料）が発生する点に注意が必要です。
まとめ
上場REITは実物不動産投資に比べ、少額で不動産に投資でき、比較的高い分配金利回りが期待できます。ただし、銘柄によって投資対象不動産の種類や運用方針、最低投資金額などは異なります。銘柄選びに時間や手間をかけたくない場合は、1本で複数のREIT銘柄に分散投資ができるREIT投資信託を検討してみてはいかがでしょうか。
