- 2023.10.13
- mattoco Life編集部
投資拡大が見込まれるグリーンボンドとは メリットと懸念点、最新の動向を確認しよう
「グリーンボンド(Green Bond)」とは企業や地方自治体などが国内外のグリーンプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券のことです。
グリーンボンドの概要と意義、市場の動向についてわかりやすく解説します。
グリーンボンド投資の概要
まず、グリーンボンド投資の基本を押さえていきましょう。
グリーンボンドの定義と特徴
グリーンボンドとは、地球温暖化をはじめとする環境的問題の解決に資する事業(グリーンプロジェクト)に要する資金を調達するために発行する債券のことで、再生可能エネルギーや省エネルギー事業等、地球環境への貢献が期待されるプロジェクトに限定されている債券を指します。*1
グリーンボンドには以下のような特徴があります。*2
- 調達資金の使途がグリーンプロジェクトに限定される。
- 調達資金が確実に追跡管理される。
- それらについて発行後のレポーティングを通じ透明性が確保される。
主な発行主体と投資家
グリーンボンドは主に次のような組織が発行します。*2
- 自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者
(専らグリーンプロジェクトのみを行う特別目的会社を含む) - グリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関
- グリーンプロジェクトのための原資を調達する地方自治体
次に、グリーンボンドへの投資家は以下のような組織や個人です。
- ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家
- ESG投資の運用を受託する運用機関
- 資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家
グリーンボンド投資の意義とメリット
ここでは、グリーンボンド投資の意義とメリットについてみていきます。
投資リターンと社会的貢献の両立
グリーンボンドへの投資は、適切なリスク・リターンを確保しつつ、環境・社会・経済にポジティブなインパクト(事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果)をもたらすことを意図したインパクトファイナンスの1つです。*3
グリーンボンドは調達資金の使途を環境改善効果のあるグリーンプロジェクトに限定して発行される債券のため、発行体・投資家の取り組みが組み合わさることで、明示的にグリーンプロジェクトに向かう資金の流れを作りだすことができます。*4
金融市場の関係者にとって、投資機会を得るとともに、地球環境に対する自らの基本的な責務を果たすことのできる道筋になると期待されています。
また、グリーンプロジェクトに対して積極的に資金を供給し、支援していることをアピールすることができるため、社会的な支持の獲得につながります。*2
リスクヘッジ
グリーンボンドは、一般的にボラティリティ(価格変動の度合い)が低いカテゴリーに属し、価格変動リスクを抑制したい投資家にとって、有効な投資先の1つとなるでしょう。
また、投資の対象が再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業の場合には、「パリ協定」を踏まえて世界各国が脱炭素化に取り組む中、今後発生することが予想される投資家の「移行リスク」を回避する手段として有効となる可能性もあります。*2
移行リスクとは、低炭素社会を目指す過程で、技術革新や政策変更などによって情勢が変化することによってもたらされるリスクのことです。*5
移行リスクが企業経営や投資に影響を与えた例として、世界銀行が再生可能エネルギーの普及を目的に、石油や天然ガスの探査・採掘・開発などへの投資から2019年以降撤退したことがありました。
投資とは関わりの薄かった層の掘り起こし
地方自治体や地域の事業者が地域のグリーンプロジェクトのためにグリーンボンドを発行すれば、資金が地域内で循環することになり、新たな資金の流れにつながることがあります。*4
このように、グリーンボンドによって、これまで投資とは関わりの薄かった層を掘り起こすことも期待されています。
エンゲージメントの実施
グリーンボンドは発行体から開示される環境改善効果などに関する情報を分析・評価することによって、発行体のサステナビリティ/ESG戦略への理解が向上し、エンゲージメントの実施が容易になります。発行体のサステナビリティの向上、投資家にとっての中長期的な投資成果の向上という好循環が生まれます。*2
このことが投資を通じた環境インパクトの実現、持続可能な社会の構築につながると考えられます。
グリーンボンド市場の拡大
グリーンボンドの発行・投資は、海外を中心に急速に拡大しています。*6
世界のグリーンボンド発行実績を地域別にまとめたものが以下の図です。
これはClimate Bonds Initiative “Climate Bonds Partner Zone”から2023年7月14日に取得したデータを基に環境省が作成したもので、2023年の発行額はその時点のものです。
図1【世界のグリーンボンド発行体の地域別発行実績】
出所)環境省「グリーンファイナンスポータル>国内におけるグリーンボンドの発行・投資への期待」
このグラフをみると、近年、欧州やアジア太平洋地域を中心に、グリーンボンドの発行が拡大していることがわかります。
次に国内の発行件数と発行総額をみてみましょう。
図2【国内企業などによるグリーンボンド発行件数と発行総額】
出所)環境省「グリーンファイナンスポータル>国内におけるグリーンボンドの発行・投資への期待」
国内でもグリーンボンドの発行件数は増加しており、2020年には年間発行総額が1兆円を突破、その後も増え続け、2022年には2兆円を超えています。
このようにグリーンボンド市場は急速かつ大幅に拡大しているものの、海外と比較するとまだ発展途上であり、CO2の排出量削減のために民間資金を大量に導入していくことが不可欠であるとしています。*4
健全な投資のために
環境省は国内のグリーンボンド市場を健全かつ適切に拡大させていくことを目的とした「サステナビリティ・リンク・ボンド原則」を「グリーンボンド原則」に加えて2020年6月に策定しています。*7
同ガイドラインでは、グリーンボンドに対する社会的な信頼性を確保するために、国際的な動向を踏まえつつ、市場に対する透明性を確保し、グリーン性に関する考え方を明確にしています。*4
グリーンボンドに投資する個人の投資家は、グリーンプロジェクトに関する動向を注視しながら情報収集に努め、国際的な動向にも注意しましょう。
*1 出所)日本証券業協会「 金融・証券用語集 グリーンボンド」
*2 出所)環境省「グリーンファイナンスポータル>グリーンボンド概要」
*3 出所)環境省「インパクトファイナンスの基本的考え方/グリーンから始めるインパクト評価ガイド」
*4 出所)環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン 2022年版 」
*5 出所)MURC「 用語集 移行リスク」
*6 出所)環境省「グリーンファイナンスポータル>国内におけるグリーンボンドの発行・投資への期待」
*7 出所)環境省「サステナビリティ・リンク・ボンド原則」