ラップ口座は、資産運用を金融機関に一任するサービスの1つです。ラップ口座は投資経験のない人や投資にあまり時間をかけられない人に適している金融商品とされています。投資信託も運用をプロに任せられる金融商品ですが、投資信託とはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、ラップ口座の特徴と投資信託との違いを解説します。
ラップ口座とは
ラップ口座とは、信託銀行や証券会社などの金融機関と投資一任契約を締結することで、資産運用から管理までを任せられるサービスです。
「資産運用の方法が分からない」
「定期的に運用資産を見直したい」
「管理に不安がある」
といった悩みを解決するために、自身の運用方針のプランを提案してもらい、投資のプロに運用から管理までを一任することができます。*1
日本投資顧問業協会の資料によると、2023年3月末のラップ業務の契約資産は14兆9,161億円です。前年比で9,039億円(+6.5%)増加しています。*2
日本におけるラップ口座の多くは、「ファンドラップ」と呼ばれるサービスです。
顧客一人ひとりの投資方針に基づいて、投資信託(ファンド)を組み合わせた資産配分を提案し、お客さまに代わって金融機関が、運用計画に基づき投資信託を買い付け、投資環境に応じた運用を行います。
ここからはラップ口座の特徴などを紹介していきます。
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ラップ口座の特徴
ラップ口座には以下のような特徴があります。
自分に合った投資先・資産配分を提案してもらえる
個人で数多くある金融商品の特徴やリスクを理解し、投資先を選択するにはある程度の知識が必要です。
ラップ口座を利用し、専門家に投資に関する希望や考え方を伝えることで、自分に合った投資先や資産配分を提案してもらえます。
資産運用をプロに任せられる
資産運用は投資先を選んで終わりではありません。運用状況に応じて投資先の配分比率を変更したり、投資先を見直したりする必要があります。
ラップ口座では、運用によって偏りが生じた資産配分を調整する「リバランス」や組入ファンドの見直しや入替などを一任します。プロが金融商品の特性などに基づいて投資判断を行うため、リターン向上やリスク低減となる資産の運用が期待できます。*1
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ラップ口座と投資信託の違い
投資信託も運用をプロに任せられる金融商品ですが、ラップ口座と投資信託では商品性や仕組みが違います。ここでは、ラップ口座と投資信託との違いを4つ解説します。
資産配分
ラップ口座では、投資家の運用方針に合わせてポートフォリオ(資産配分)を決定します。例えば、ハイリスク・ハイリターンの運用を希望する場合は株式の割合が多く、リスクを抑えた運用を希望する場合は債券の割合が多いポートフォリオが提案されることがあります。*1
一方、投資信託のバランス型などは「国内外の株式および債券に25%ずつ」など、ファンドの投資方針としてあらかじめ資産配分が決まっているものや、機動的に資産配分の変更を行うものもあります。投資信託を購入する場合は、自分の投資方針に合った資産配分の投資信託を選ぶ必要があります。
サービス内容
ラップ口座では、金融機関から資産の運用状況が定期的に報告されます。運用によって当初の資産配分に偏りが生じた場合には、資産の売買によるリバランスが行われます。*1
金融機関によっては、投資資産の定期払戻や利益の払出が可能です。また、あらかじめ指定した基準まで利益が出た場合に、自動的に利益を確定する「プロフィットロック」などを備えたサービスもあります。*1
一方、投資信託は、決算時に運用会社が発行する「運用報告書」が販売会社を通じて交付されます。リバランスも行われますが、あくまでも投資信託の投資方針に則ったものです。
費用
ラップ口座と投資信託では、運用コストに以下のような違いがあります。
投資信託は購入時に買付時手数料、売却時に信託財産留保額がかかるものがあります。(銘柄によっては無料の場合もあります。)その他に、ファンドの運用・管理に必要な信託報酬の費用が必要です。
ラップ口座では購入時の手数料は無料ですが、投資顧問料、残高手数料、コースによっては成功報酬がかかるものもあります。*3さらにラップ口座内で保有する個々の投資信託に信託報酬・信託財産留保額がかかることがあります。(手数料や顧問料などは各金融機関により異なりますのでお取引金融機関にご確認ください。)資産運用を専門家に一任するため、一般的には投資信託よりもトータルのコストが増える点に注意が必要です。
最低投資金額
投資信託は金融機関にもよりますが、1,000円程度の少額から投資ができます。
ラップ口座の最低投資金額は、こちらも金融機関により異なりますが、300万円程度からが一般的です。投資を始めるには、ある程度まとまった資金を用意する必要があります。
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ラップ口座の利用方法
ラップ口座を利用する場合の流れは以下の通りです。
- ラップ口座を取り扱う金融機関に資産運用について相談する
- 運用スタイルによって運用方針を決める
- ポートフォリオの提案を受ける
- 投資一任契約を締結する
- 運用を開始する
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ラップ口座はどんな人に向いているのか
金融機関は顧客にヒアリングを行った上で、個人に適したポートフォリオの提案を行います。提案内容に納得できれば投資一任契約を締結し、運用開始となります。
ラップ口座が向いている人の特徴は以下の通りです。
- 投資の知識に不安がある
- 資産運用に時間や手間をかけられない
- 資産運用をプロに任せたい
- まとまった資金を運用できる
ラップ口座は、個人ごとにポートフォリオの提案やリバランスなどのサービスを受けられるのが特徴です。そのため、投資の知識に不安がある人、資産運用に時間や手間をかけられない人に向いています。
また、「自分で運用するよりプロに任せるほうがいい」と考える人、数百万円程度のまとまった資金を準備できる人もラップ口座を検討するといいでしょう。
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まとめ
ラップ口座は専門家に資産運用からメンテナスまですべてを任せられるため、自身で運用状況について絶えず気にする必要はありませんが、金融機関からの運用状況についてのレポートによって以降の運用について相談していくことが重要です。短期での運用成果で判断するのではなく長期運用の視点で考えることが大切です。ただし、自分で投資信託を購入するよりも、運用コストは高くなる可能性があります。特徴やメリット・デメリットを理解した上で、ラップ口座の利用を検討しましょう。
*1 出所)三菱UFJ銀行「ファンドラップ」
*2 出所)一般社団法人 日本投資顧問業協会「統計資料(2023年3月末)」< PDF >P1
*3 出所)三菱UFJ銀行「ファンドラップ 費用・リスク」