シェアリングエコノミーのメリットや課題は?市場規模や事例とあわせて確認しよう

シェアリングエコノミーのメリットや課題は?市場規模や事例とあわせて確認しよう

シェアリングエコノミーは遊休資産を活用することによって貸主は収入を得られ、借主は所有せずに利用ができるなどのメリットがあります。貸主・借主の双方のニーズをマッチングする便利なシステムであり、シリコンバレーを拠点にグローバルに成長してきています。*1

シェアリングエコノミーは社会に革命的なインパクトをもたらしつつあるといわれています。

シェアリングエコノミーの仕組みと拡大する市場の動向および経済波及効果についてみていきましょう。

シェアリングエコノミーの定義と分類

シェアリングエコノミーとはどのようなものでしょうか。

「シェアリングエコノミー 活用ハンドブック (2022年3月版)」は、デジタル庁と一般社団法人シェアリングエコノミー協会が連携して、シェアリングエコノミーによる効果や活用のポイントをまとめたものです。
デジタル庁とシェアリングエコノミー協会では、シェアリングエコノミーを以下のように定義しています。*2

「個人・組織・団体等が保有する何らかの有形・無形の資源(モノ、場所、技能、資金など)を売買、貸し出し、利用者と共有(シェア)する経済モデルのこと」

シェアリングエコノミーは主に空間・移動・スキル・お金・モノの5つに分類されます。

図【シェアリングエコノミーの5分類】
出所)デジタル庁・一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー 活用ハンドブック [2022年3月版] 」p.9

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地域課題解決のメリット

自治体等が主体となり、シェアリングエコノミーを活用した地域課題の解決に向けた取組みがされてきています。シェアリングエコノミーの活用により解決が期待される地域課題は以下のように分類されます。

図【シェアリングエコノミーで解決できる地域課題】
出所)デジタル庁・一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー 活用ハンドブック [2022年3月版] 」p.21

利用されずに放置されているものや、これまで活用するのが難しいとされていた資源、個人がもっている技能なども、インターネットを介したシェアリングエコノミーの仕組みを利用すれば、利用者の多様なニーズとマッチングできる可能性が高まります。

マッチングが成立すれば、サービス提供者は収入を得ることができますし、利用者は欲しいものを所有しなくても、安く利用できる、利便性が高まるなどのメリットがあります。

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脱炭素社会の構築に向けた貢献

気候変動は、中長期的に、経済・物価・金融情勢に大きな影響を与える可能性があるグローバルな問題です。
日本銀行も、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命に沿って気候変動に関する取り組みを進めるため、市場中立性に配慮しつつ、さまざまな取り組みをしています。
たとえば、日本銀行が保有する外貨資産については、安全性と流動性を重視する方針にて管理されていますが、今後は従来からの保有外貨資産に関する方針の下で、外貨建てのグリーン・国債等の購入を行っていくとしています。*3

シェアリングエコノミーは、社会の脱炭素化、つまり気候変動問題の解決に貢献する経済モデルであることがわかっています。
2022年4月に、シェアリングエコノミー協会と情報通信総合研究所が共同で、移動におけるシェアサービス(カーシェア・シェアサイクル)の脱炭素社会への貢献を調査しました。*4

その結果、CO2排出削減効果は、カーシェアサービス(電気自動車シェアカー含む)によるものが280万t-CO2、自動車移動を自転車で代替えするサイクルシェアサービスによるものが43万t-CO2で、これらを合わせると、323万t-CO2に上ることがわかりました。
これは、国内小売業全体の排出量330万t-CO2にも相当するとのことです。
また、2020年度の日本全体の自動車からのCO2排出量8,440万t-CO2に対する減少率は3.8%でした。

図【移動のシェアサービス利⽤によるCO2削減効果】
出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー × SDGs 〜モビリティのシェアリングによる脱炭素社会への貢献を調査〜

このように、移動のシェアリングサービスに限ってみても、脱炭素化、気候変動問題の解決に貢献しています。

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社会問題解決への貢献

シェアリングエコノミーは脱炭素社会構築以外にも、さまざまな社会問題解決に貢献していることがわかっています。

シェアリングエコノミーがSDGsに該当する項目は、主に以下の通りです。

出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー × SDGs 〜モビリティのシェアリングによる脱炭素社会への貢献を調査〜

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シェアリングエコノミーの市場規模と経済波及効果

シェアリングエコノミーの市場規模は着実に拡大しつつあり、社会に革命的なインパクトを
与えています。
その市場規模と経済波及効果をみていきましょう。

拡大する市場規模

ここで取り上げる市場調査も、シェアリングエコノミー協会と情報通信総合研究所が共同で行ったものです。*5

この調査によると、2022年度シェアリングエコノミーの市場規模は、過去最大の2兆6,158億円で、2032年度には最大15兆1,165億円に拡大すると予測されています。

図【シェアリングエコノミーの市場規模】
出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「2022年日本のシェアリングエコノミー市場規模 過去最高の2兆6,158億円を記録

なお、この調査の対象サービスはインターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるもの、利用したいときにすぐ取引が成立するもの、市場規模は資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額であって、プラットフォーマーの売上ではありません。

また、図中の「課題解決シナリオ」とは、シェアリングエコノミーの認知度が低い点や、個人が提供するサービス利用への不安などの課題が今後解決する状況を想定した場合の市場規模です。

経済波及効果

同調査で、シェアワーカー(シェアリングエコノミーのプラットフォームを通じた働き方をしている個人)の収入から既存産業への経済波及効果を試算したところ、2022年度で1兆6,992億円に上りました。

図【シェアリングエコノミーの経済波及効果】
出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「2022年日本のシェアリングエコノミー市場規模 過去最高の2兆6,158億円を記録

また、2032年度はベースシナリオで5兆4,960億円、課題解決シナリオで9兆9,045億円と、今後もシェアリングエコノミーの成長は既存産業にも好影響を与えると推測されています。

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おわりに

既存のリソースを活用するシェアリングエコノミーは、個人や企業にメリットをもたらすだけでなく、環境への負荷を減らし、社会問題の解決や経済成長にも貢献することが期待できます。

シェアリングエコノミーの市場は今後もさらに拡大していくでしょう。
シェアリングエコノミーの動向に注目してみましょう。

*1 出所)総務省「第2部 ICTが拓く未来社会 シェアリングエコノミーとは

*2 出所)デジタル庁・一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー 活用ハンドブック [2022年3月版] 」<PDF>p.8, p.9

*3 出所)日本銀行「気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について」(2021年7月16日)

*4 出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「【Press release】シェアリングエコノミー × SDGs 〜モビリティのシェアリングによる脱炭素社会への貢献を調査〜

*5 出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会「2022年日本のシェアリングエコノミー市場規模 過去最高の2兆6,158億円を記録

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