コモディティ投資とは、貴金属などのコモディティ(商品)に投資する方法です。株式や債券とは異なる値動きをする傾向があるため、分散投資先としての活用が期待されます。個人がコモディティ投資を行う場合は、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
今回は、コモディティ投資が注目される理由やメリット・デメリット、投資方法を解説します。
コモディティ投資とは
投資の世界におけるコモディティとは以下のようなものを指します。
- 貴金属(金、プラチナなど)
- エネルギー(原油、天然ガスなど)
- 穀物(トウモロコシ、大豆など)
コモディティは現物に価値がある「実物資産」と言われ、株式や債券といった「伝統的な金融資産」とは異なる値動きをする傾向があるため、資産の一部に組み込むことで分散投資効果が期待できます。*1
最近では、商品価格に連動する公募投資信託やETF(上場投資信託)など、個人が使いやすい投資商品も増えています。
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コモディティ投資が注目される理由
新型コロナウイルスをきっかけに、投資対象として金が注目を浴びたのも記憶に新しいところです。金の価格は、2020年8月に2,000ドルを超えて史上最高値をつけました。コロナ禍で世界的な金融緩和が進み、多くの国で金利がゼロ以下となったため、実物資産へ投資マネーがシフトしたと考えられています。
また、新型コロナウイルスの蔓延やロシアのウクライナ侵攻等により、世界的にインフレ(物価上昇)が加速したことも理由の1つです。「インフレ時にはモノへの投資が有利」という理由で、コモディティ投資に注目する人が増えています。
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コモディティ投資のメリット
コモディティ投資のメリットは以下の通りです。
インフレ対策になる
インフレは、モノの価値が継続的に上がり、貨幣価値が下がっていく状態です。お金を現金のまま持ち続けた場合、インフレが進行すると、金額は同じでもその実質的価値は目減りします。*2
図1【年0~3%のインフレが進行した場合の1,000万円の価値の推移】
出所)三菱UFJ銀行「どうして資産形成が必要なの?」
仮に物価上昇率が2%の場合に、現在の1,000万円を現金のまま保有し続けると、20年後には「1,000万円」という金額自体に変化はないものの、その実質的価値は約672万円に目減りします。
コモディティは、インフレ時に強いとされている実物資産の1つです。インフレ時には商品価格も上がるため、資産の一部にコモディティを組み入れることで、物価上昇による保有資産の目減りを抑える効果が期待できます。
資産分散効果が高い
コモディティ投資は、資産分散効果が期待できるのもメリットです。
「景気拡大期には株式が買われ、債券は売られる」など、伝統的資産である株式と債券は基本的に異なる値動きとなる傾向があるため、分散投資にふさわしいと言われています。
しかし、コロナショックのような急落場面では、株式も債券も同じように下落しました。大きな損失を避けるには、株式と債券のみでポートフォリオを構築するのではなく、伝統的資産との値動きの相関関係が低く、別の動きをするオルタナティブ資産(代替資産)を組み入れることで、資産分散効果が期待され、リスクを軽減することができます。
コモディティは代表的なオルタナティブ資産の1つであるため、株式や債券と組み合わせて保有することで、分散投資によるリスク軽減が期待できるでしょう。
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コモディティ投資のデメリット
一方で、コモディティ投資には以下のようなデメリットもあります。
インカムゲインを得られない
資産運用で得られる利益には、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つがあります。*3
- インカムゲイン:資産を保有することで定期的に得られる利益(配当金、利子など)
- キャピタルゲイン:資産の価格が上昇し、売却したときに得られる利益
株式は保有中に受け取る配当金がインカムゲイン、株価の値上がりによる売却益がキャピタルゲインです。債券は保有中に受け取る利子がインカムゲイン、売却により得られる利益がキャピタルゲインとなります。
コモディティは価格が変動するため、売却益を得ることは可能です。しかし、商品それ自体は配当や利子を生まないため、インカムゲインは得られません。
変動率が高い
コモディティは、変動率(ボラティリティ)が高い傾向にあります。
例えば、原油の代表的な指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格は、2020年初めは61ドル台でしたが、新型コロナウイルス感染拡大による世界景気の下落懸念で、2020年4月には一時▲37ドル台と史上初のマイナスとなりました(WTI原油先物価格がマイナスとは、売り手が買い手に金銭を支払ったうえで原油を引き取ってもらうような状況です。)。その後、2021年2月には60ドル台まで戻しています。
コモディティの保有比率によっては、保有資産の価値の増減が大きくなる恐れがあります。
為替変動リスクがある
為替変動リスクとは、外貨建て資産の円換算額に損益が生じる可能性のことです。換金・償還時に円安になっていれば為替差益を得られるため、円での受取金額が増えます。逆に円高になると為替差損が生じて、円での受取金額が減ってしまいます。*4
コモディティは海外市場でドルベースでの取引が中心であるため、為替相場の動向によっては為替差損が生じる可能性があります。
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個人がコモディティ投資を行う方法は?
個人がコモディティ投資を行う場合は、投資信託やETFが選択肢となります。
コモディティに投資する投資信託は、商品の種類が多く、比較的安心して手軽に投資することができます。最近では、ETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)も増えてきており、日本で上場しているものだけでも、原油、天然ガス、金、銀、銅等に投資すること出来ます。コモディティETFについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
投資対象資産を広げたい方におすすめ!コモディティETFとはどんな商品?商品性を分かりやすく解説
投資信託は数千円程度の少額から購入でき、運用をプロに任せられるため、コモディティ投資に取り組みやすいでしょう。
また、貴金属に投資する場合は、現物を購入する方法もあります。金やプラチナなどの現物を扱う貴金属店で購入でき、積立投資も可能です。
ただし、現物保有は紛失・盗難のリスクがある点に注意しましょう。*5
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まとめ
コモディティはインフレに強く、株式や債券と組み合わせることで資産分散効果が高まるのがメリットです。一方で、保有中にインカムゲインを得られず、値動きが大きい傾向にあります。分散投資先としてコモディティ投資を検討する場合は、少額から始められる投資信託を検討してみてはいかがでしょうか。
*1 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 コモディティ」
*2 出所)三菱UFJ銀行「どうして資産形成が必要なの?」
*3 出所)Money Canvas「今さら聞けない投資の基本 キャピタルゲインとインカムゲインとは?利益にかかる税金も解説」
*4 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 為替変動リスク」
*5 出所)三菱UFJ銀行「有事の「金」に投資するには?」