ポイント
海外ETFは、海外の株式市場に上場しているETF(上場投資信託)です。資産形成のために国際分散投資に取り組む場合は、海外ETFも選択肢の一つとなります。海外ETFと投資信託にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、海外ETFの概要や投資信託との違い、向いている人の特徴を解説します。
海外ETFとは
海外ETFとは、海外の証券取引所に上場している投資信託です。*1
投資信託は、投資家から集めたお金を1つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。その運用成果は、投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みになっています。*2
多くの海外ETFは、特定の指数や価格指標などに連動するように設計されています。個別に投資銘柄を選ぶのが難しい場合、海外ETFを活用すれば、少額からさまざまな銘柄に分散投資が可能です。
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海外ETFと投資信託の違い
海外ETFと一般的な投資信託の比較表は以下の通りです。
出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国株式(海外ETF一覧)」より三菱UFJ国際投信作成
海外ETFは上場しており、購入価格は市場取引に応じて変動します。株式の個別銘柄と同じように、指値注文や成行注文が可能です。市場が開いている間は、値動きを確認しながら価格を指定して売買できます。
一方、一般的な投資信託は上場していません。基準価額は、投資信託が組み入れている株式や債券などの時価評価をもとに、1日に1つの価額として公表されます。投資家は、当日の基準価額がわからない状況で投資信託の購入・換金の申し込みを行います。*3
海外ETFは外国委託取引のため、購入時に現地委託手数料と国内取次手数料がかかります。*1
外国委託取引とは、国内の証券会社が投資家の注文を海外の証券会社を通じて市場に取り次ぎ、投資家の代わりに注文を執行することです。*4
投資信託も、購入時に手数料を払うのが一般的です。しかし、中には購入時手数料がかからない「ノーロード」と呼ばれる商品もあります。*5
また、海外ETFと投資信託は、どちらも保有中に「信託報酬(運用管理費用)」がかかります。
その中でも、特定の指数との連動を目指す「インデックスファンド」は信託報酬が低いものもあり、保有コストを抑えることが可能です。
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海外ETFを購入するにあたってのポイント
少額から分散投資が可能
海外ETFは投資信託の一種であることから、少額から分散投資が可能です。
例えば、NYダウやS&P500に連動するETFなら、1つのETFで米国市場に上場する複数の銘柄に投資できます。米国市場に上場するETFの場合、基本的に1株単位で売買できるので、比較的少額から投資を始められます。*6
保有コストを相対的に低く抑えられる
海外ETFはマーケットで取引を行うため、販売会社を介することで発生する費用がなく、一般的な投資信託と比較して信託報酬が低い傾向にあります。保有コストを抑えられるため、長期投資に適しています。*6
リアルタイムで売買できる
海外ETFは上場しているので、市場が開いている取引時間中であればリアルタイムで売買できます。投資信託は購入・換金申し込み前に基準価額を確認できませんが、海外ETFなら値動きを確認しながら価格を指定して注文を出すことも可能です。*6
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海外ETF購入時に注意すべきこと
積立投資に対応していないことが多い
海外ETFは、積立投資に対応していない証券会社が多く、積立投資を実行する場合、自分で取引タイミングを決め、売買のたびに注文を出す必要があります。
課税頻度が増える可能性がある
例えば、米国ETFを通じて全世界株に投資する場合、ファンドスキームによって課税面に以下のような違いが生じる可能性があります。
出所)三菱UFJ国際投信「ブロガー・ミーティング 世の中の投資に関するウソホントクイズ!」P27より三菱UFJ国際投信作成
配当課税について、課税頻度が多くなる場合は、国内ファンドから直接投資している投資信託を選ぶほうが税制メリットは大きくなる可能性があるでしょう。
一般的な投資信託には発生しない手数料が発生する
一般的な投資信託は購入時手数料がかからない商品が多数あります。しかし、海外ETFは、購入時に現地委託手数料と国内取次手数料がかかります。したがって、購入時の手数料が、一般的な投資信託より高くなる場合があります。
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海外ETFと投資信託はどっちがいいのか
海外ETFと一般的な投資信託はコストや取り得る取引手法等に違いがあります。したがって、ご自身の運用方針や好みに応じて、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
海外ETFが向いている人
海外ETFはリアルタイムで売買できるため、自分のタイミングや裁量で取引したい人に向いています。また、海外ETFの中には一般的な投資信託では取り扱いのない商品性のものもあり、資産運用に特徴あるエッセンスを取り込みたいといったニーズにも合致します。
一般的な投資信託が向いている人
一般的な投資信託は、積立投資はじめ様々な投資手法が実践可能で、設定すれば自動的に再投資も行ってくれます。そのため、毎月の収入から少しずつ投資に回したい人、なるべく手間をかけずに運用したい人は一般的な投資信託が向いています。
また、ノーロードの商品を選び、購入時の手数料を抑えたい人も一般的な投資信託が向いています。
海外ETFと投資信託の違いを理解して投資に取り組もう
海外ETFは海外の証券取引所に上場しており、値動きを確認しながら自分のタイミングで売買でき、国内の一般的な投資信託では提供していない商品性の商品もあるなど特徴ある運用の実践に向いています。ただし、積立投資に対応していない証券会社が多い、課税上で不利になる可能性があるなど、予め商品の制約は把握しておいた方が良いでしょう。
海外ETFと一般的な投資信託の違いを理解して、自分に合った投資方法を選択しましょう。
*1 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国株式(海外ETF一覧)」
*2 出所)投資信託協会「そもそも投資信託とは」
*3 出所)投資信託協会「投資信託の基礎知識」
*4 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国株式(外国株式お役立ち情報)」
*5 出所)auカブコム証券「金融/証券用語集」
*6 出所)auカブコム証券「米国株式 ETF」