フリーアドレス化は健康経営に繋がる|健康経営優良法人認定制度のポイントを解説

フリーアドレス化は健康経営に繋がる|健康経営優良法人認定制度のポイントを解説

経済産業省は、「健康経営」を行う優良法人の認定制度を設けています(2022年度は日本経済新聞社が、補助事業者として健康経営優良法人認定制度の事務局を運営)。*1
健康経営優良法人として認定を受けることができれば、企業イメージの向上に繋がるでしょう。

オフィスにおける「フリーアドレス」の導入は、健康経営優良法人としての認定を受けるにあたってプラスに働く可能性が高いと考えられます。
そこで今回は、健康経営優良法人認定制度の概要・認定基準や、フリーアドレス化が健康経営に寄与し得る理由などをまとめました。

フリーアドレスとは

「フリーアドレス」とは、従業員がオフィスの中で固定された座席を持たず、ノートPCなどを持ち歩いて仕事をする場所を自由に決められるスタイルです。

フリーアドレスには、オフィススペースを有効活用できることに加えて、従業員間の有機的な交流を促すメリットがあると考えられます。その一方で、フリーアドレスにより仕事場所が流動的になると、特定の従業員と対面で交流する機会が減る点や、部下が仕事をしているかどうかの確認が難しくなる点などがデメリットです。

ただし、近年ではチャットアプリなどの発展により、オンラインでも効率的にコミュニケーションをとることができるようになりました。また、在籍確認ツールなどの発展により、オンライン上で部下の稼働状況を管理することも可能となっています。
そのため、オフィスにおいてフリーアドレスを導入する抵抗は、従来に比べると少なくなったといえるでしょう。

健康経営とは

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを意味する考え方です。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力増進や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価上昇につながると期待されます。*2
1992年にアメリカの研究者によって提唱された”Healthy Company”の概念が、2006年に健康経営研究会によって「健康経営」と定義される形で輸入されました。

会社にとって、従業員の健康を維持することは、安定的に労働力を確保する観点からきわめて重要です。健康経営を徹底することにより、既存従業員の離脱リスクを抑えられるほか、企業イメージの向上によって新規採用への好影響も期待されます。

また、特に日本では高齢化によって社会保障費が急増しており、医療費などの抑制が社会的な課題となっています。そのため、経済産業省が中心となって、健康経営を積極的に奨励している状況です。

健康経営優良法人の認定制度

経済産業省は2014年度から「健康経営銘柄」の選定を開始し、さらに2016年度からは健康経営優良法人認定制度」を創設しました。2022年度は日本経済新聞社が、補助事業者として健康経営優良法人認定制度の事務局を運営しています。*1

健康経営優良法人認定制度の申請区分は、「大規模法人」と「中小規模法人」の2つに分かれています(業種と従業員数に応じて申請区分が決まります*3)。
各企業は、申請期間中に該当区分の認定を申請すれば、健康経営優良法人としての認定審査を受けることができます

健康経営優良法人の認定基準

健康経営優良法人(2023年認定分)の認定要件は、大規模法人部門・中小規模法人部門のそれぞれについて、定められています。*4,5

そのうち、中小規模法人部門の認定要件は以下のとおりです。

1. 経営理念(経営者の自覚)
※必須
・健康宣言の社内外への発信および経営者自身の健診受診

2. 組織体制
※いずれも必須
・健康づくり担当者の設置
・(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供

3. 制度・施策実行
(1)従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討
 ●健康課題に基づいた具体的な目標の設定
 ※必須
  ・健康経営の具体的な推進計画

 ●健康課題の把握
 ※(a)~(c)のうち2項目以上
  (a)定期健診受診率(実質100%)
  (b)受診勧奨の取り組み
  (c)50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施

(2)健康経営の実践に向けた土台づくり
 ※(d)~(g)のうち1項目以上
 ●ヘルスリテラシーの向上
  (d)管理職または従業員に対する教育機会の設定

 ●ワークライフバランスの推進
  (e)適切な働き方実現に向けた取り組み

 ●職場の活性化
  (f)コミュニケーションの促進に向けた取り組み

 ●病気の治療と仕事の両立支援
  (g)私病等に関する両立支援の取り組み((m)以外)

(3)従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策
 ※(h)~(o)のうち4項目以上、受動喫煙対策に関する取り組みは必須
 ●具体的な健康保持・増進施策
  (h)保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
  (i)食生活の改善に向けた取り組み
  (j)運動機会の増進に向けた取り組み
  (k)女性の健康保持・増進に向けた取り組み
  (l)長時間労働者への対応に関する取り組み
  (m)メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み

 ●感染症予防対策
  (n)感染症予防に関する取り組み

 ●喫煙対策
  (o)喫煙率低下に向けた取り組み
  ・受動喫煙対策に関する取り組み

(4)評価・改善
 ※必須
 ・健康経営の取り組みに対する評価・改善

(5)法令遵守・リスクマネジメント(誓約書による自主申告)
 ※必須

 ・定期健診を実施していること、50人以上の事業場においてストレスチェックを実施していること、労働基準法または労働安全衛生法違反により送検されていないことなど

※ブライト500(中小規模法人部門の上位500社)の認定を受けるためには、(a)~(o)のうち13項目以上を満たす必要あり

フリーアドレス化は健康経営に寄与する可能性あり

オフィスにおいてフリーアドレスを導入することは、以下の観点から健康経営に寄与する可能性があります。
■適切な働き方実現に向けた取り組み
フリーアドレス化や、それと親和性の高いフレックスタイム制などを併せて導入することにより、各従業員のライフスタイルに合った働き方を実現することに繋がります。

■メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
フリーアドレスの導入は、職場におけるハラスメントなどから逃げる道を用意することに繋がります。なお、メンタルヘルスについての相談窓口を設置するなど、不調者の支援体制を併せて整備することも大切です。

■感染症予防に関する取り組み
固定の座席を設けず、各自の判断で距離をとって仕事場所を確保することを推奨すれば、コロナ対策としての取り組みと認められる可能性があります。

健康経営優良法人の認定を受けるか否かにかかわらず、フリーアドレスに関連する上記のような取り組みは、従業員の健康増進、ひいては雇用の安定に繋がる可能性が高いでしょう。
経営者の方々は、「健康経営」の観点も踏まえた上で、フリーアドレスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

*1 出所)健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「 ACTION!健康経営

*2 出所)経済産業省「健康経営

*3 出所)健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「部門の区分

*4 出所)健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「 健康経営銘柄2023選定基準及び健康経営優良法人2023(大規模法人部門)認定要件

*5 出所)健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「 健康経営銘柄2023(中小規模法人部門)認定要件

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