デジタル課税とは?概要や導入される背景、株価への影響をわかりやすく解説

デジタル課税とは?概要や導入される背景、株価への影響をわかりやすく解説

デジタル課税とは、巨大IT企業をはじめとする世界規模の多国籍企業に対して、適切な税負担を求める国際的な課税ルールです。デジタル課税が適用されることによって、対象企業の利益や株価にどのような影響を与えるのでしょうか。

今回は、デジタル課税の概要や導入の背景などをわかりやすく解説します。

デジタル課税の概要

デジタル課税は、海外現地に支店や工場などの恒久的施設を持たない多国籍企業に対して課税が可能になる仕組みです。

2021年10月8日にOECD(経済協力開発機構)加盟国を含む136か国・地域で合意され、2021年10月13日にはG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明で採択されました。2023年中の導入を目指しています。*1

「恒久的施設がないと課税できない」という約100年前の国際課税原則を見直す枠組みであることから、歴史的な改革といえます。*1

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デジタル課税が導入される背景

企業が海外に進出する場合、従来は現地に工場や販売拠点を作ってビジネスを展開するのが一般的でした。

近年では経済・社会のデジタル化に伴い、現地に恒久的施設を持たなくても、インターネットを通じてさまざまな国・地域でサービスを提供することが可能になっています。

デジタルコンテンツは、一度作成すれば複製や増産が簡単で、在庫を持つ必要がありません。コストを抑えられ利益率は高く、巨大IT企業は世界中で莫大な利益を得ています

しかし、消費者がいる国に恒久的施設を持っていないため、市場国(消費が行われている国)で課税ができないことが問題となっていました。デジタル経済の実態に対して、国際課税ルールが追いついていないのが現状です。

今回のデジタル課税の導入によって、恒久的施設を持たない一定規模以上の多国籍企業グループに対しての課税が可能になります。

また、低い法人税率や優遇税制によって、外国企業を誘致する動きがあることも課税上の問題の1つです。今回の国際課税ルールの見直しでは、この問題への対策も盛り込まれています。*2

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デジタル課税の2つの柱

今回の合意では、国際課税上の問題に対する解決策として、次の2つの柱が盛り込まれています。

市場国への新たな課税権の配分

第1の柱は、市場国へ新たな課税権を配分することです。

多国籍企業に対する課税権の一部を、その企業の本拠地がある国から、恒久的施設の有無にかかわらず事業活動によって利益を得ている市場国へ再配分します。

世界全体の売上が200億ユーロ超、かつ利益率10%超の多国籍企業がこの新しいルールの対象であり、収益の10%を超える利益(残余利益)の25%が、市場国へ再配分されます。
この新しい国際課税ルールにより、毎年1,250億米ドル超の利益に対する課税権が市場国へ再配分される見込みです。*3
2023年前半に多国間条約の署名、2024年の条約発効を目標としています。*3

最低法人税率15%の導入

第2の柱は、「グローバル・ミニマム課税」と呼ばれる、15%の世界的な最低法人税率を導入することです。*2

売上が7億5,000万ユーロ超の企業が対象で、世界全体で年間約1,500億米ドルの追加税収が発生すると推定されています。*3

このルールによって、法人税率が低い国に子会社を設立している企業への課税が強化されることになります。子会社が実際に負担している税率が15%を下回る場合、追加税を収益に適用すると規定しています。*4
こちらは、2022年に各国国内法改正、2023年(一部は2024年)の実施が目標です。*2

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デジタル課税が企業利益や株価へ与える影響は?

デジタル課税の対象になると税負担が増加するため、巨大IT企業をはじめとする対象企業にとっては不利なルールといえます。利益やキャッシュフローの減少要因となり、株価が下がるなどのマイナスの影響があるかもしれません。

デジタル課税の対象になる多国籍企業の多くは米国企業であることから、当面は日本企業への影響は少ないと考えられます。ただし、対象企業の拡大や制度変更が実施されることがあれば、日本企業の税負担が増えるかもしれません。
したがって、デジタル課税の今後の動向を注視することが大切です。

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まとめ

デジタル課税の導入により、今後は恒久的施設を持たない多国籍企業に対して、市場国で課税が可能になる見込みです。対象企業は税負担の増加により、利益や株価にマイナスの影響が出る恐れがあります。

導入にあたっては、多国間や国内での調整が必要になるため、予定通りに導入されるのかまだ不透明な部分もありますが、今後のデジタル課税の動向を注視しておきましょう。

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