経済ニュースでは、FRBの政策金利がテーマとして取り上げられることがよくあります。
FRBの決定が経済に与える影響は大きく、例えば利上げの決定が株式相場や為替相場の流れを大きく変えることもあります。
そのため今後の経済を見ていく上で、FRBについて正しく理解しておくことは非常に重要でしょう。
そこで今回は、FRBとは何かという基本的なところから、経済に与える影響や過去の政策金利の推移まで分かりやすく解説していきます。
資産運用においても有益な内容なので、ぜひ最後までチェックしてください。
FRBとは何か?
FRBとは米国における中央銀行のことで、正式には「Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会)」といいます。
FRBの主な役割は、米国の経済が安定的に発展していくように、政策金利をはじめとする金融政策を決定することです。
そのためにFRBは年8回、金融政策を決定する「FOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)」と呼ばれる会合を開催することになっています。
このFOMCを構成するのは、FRB理事7名と地区ごとの連邦準備銀行総裁5名の最大計12名です。*1
決定された金融政策はFOMCの開催最終日に公表され、FRB議長による定例記者会見も行われます。
また、その3週間後には議事録が公表され、FOMCメンバーによってどのような議論が行われたのかを知ることができます。*1
これらの情報は市場関係者の大きな注目を集め、FRBの動向についてのさまざまな憶測を呼ぶこともあります。
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FRBが「利上げ」を行う理由
経済が安定的に発展していくためには、景気が適度な水準を続けることが大切です。
そのため、景気は過熱しすぎても低迷しすぎても好ましくありません。
FRBは各種経済指標の推移を確認するなどして米国の経済状況を見守りながら、景気が適度な水準を保つように金融政策を決めます。
一般論として、中央銀行が行う金融政策の代表的な手段の1つとして、政策金利を調整することが挙げられます。
これが、いわゆる「利上げ」「利下げ」と呼ばれるものです。
出所)三菱UFJ銀行「利上げとはどのような政策?為替・株価・物価に与える影響とは?」
例えば景気が良いときは、企業や個人は儲かっているケースが多く、たくさんのお金を持っています。
価格が多少高くてもモノやサービスが売れるので、物価が上昇しインフレーションが起こりやすい環境です。
米国に話を戻すと、このとき、FRBは政策金利を引き上げることで、民間銀行の貸し出し金利が上がるように調整をかけます。
貸し出し金利が上がれば、企業や個人は借り入れをしにくくなっていきます。
すると投資や消費を控えるようになり、物価も安定して景気が落ち着いていくわけです。
逆に景気が低迷し、モノやサービスが売れず物価が下落してデフレーションに陥りそうな環境では、これとは反対の流れが起こります。
FRBは政策金利を引き下げることによって、民間銀行の貸し出し金利を下げ、企業や個人がお金を借り入れやすくします。
これによって景気を引き上げようとします。
このように、FRBは「利上げ」「利下げ」を使い分けることで景気や物価のブレを押さえ、米国経済が安定に発展する環境を整える役割を担っています。
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FRBによる利上げの影響
FRBが利上げを決定した場合、その影響は広範囲におよびます。
- 米国経済
- 為替
- 日本を含む世界経済
ここでは上記の3つに分けて、FRBの利上げによる影響を見ていきましょう。
米国経済
FRBの利上げは、景気の過熱やインフレーションの進行を抑えるために行われるものです。
ただし利上げは、米国の株式市場を押し下げる要因となりやすいところがあります。
例えば、利上げによって個人が消費を控え、企業が投資を抑えれば企業業績は落ち込み、株価も下落しやすいでしょう。
また利上げを行えば債券の利回りが高くなりますが、これによって株式市場から債券市場に資金が流出していくことも考えられます。
さらに金融機関に目を向けてみると、この債券利回りの上昇による影響を強く受ける可能性があります。
債券利回りが高くなるということは債券価格が下落するということであり、債券を保有している金融機関の含み損拡大が懸念されるからです。
このように、FRBの利上げは米国経済に対して悪影響を及ぼす側面もあります。
そのため、悪影響が拡大することのないように、FRBは米国内の経済状況を細かくチェックしながら、利上げのタイミングや規模などを慎重に決定しているわけです。
為替
FRBが利上げを行うと、主に債券をはじめとする米国の金利が上昇します。
すると、投資家は米国建て資産への投資が魅力的になるため、米ドルに対する需要が高まることが考えられるでしょう。
通貨の価値は需要と供給のバランスによって決まるため、米ドルの需要が高まれば、相対的に他の通貨に対する米ドルの価値が高まり、米ドルの上昇圧力が強まることが予想されます。
ただし、為替レートの変動において金利は非常に重要な要素ですが、為替レートはその他にもさまざまな要素が複雑に絡まり合って決まります。
そのため、FRBの利上げが必ず米ドル高につながるとは限らない点は、頭に入れておきましょう。
日本を含む世界経済
米国は、名目GDPが約25兆米ドル(2022年)であり*2、現代のグローバル経済において世界全体に大きな影響を及ぼします。
FRBの利上げによって米国経済が低迷すると、その他の国々に波及していくことも十分に考えられます。
例えば、米国の消費が減少すれば、日本などの輸出国の製品に対する需要が減少し、輸出国の経済に悪影響が出るかもしれません。
また、米国の金利上昇により、新興国から資金が流出し、新興国経済にも打撃を与えることもあるでしょう。
このように、FRBによる利上げは米国経済だけでなく、日本を含む世界経済全体に大きな影響があるわけです。
そのため、FRBの動向は世界中から注視され、時にはFRBを構成するメンバーの発言が市場関係者の憶測を呼び、相場変動のきっかけとなることもあります。
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直近の政策金利の推移
上のグラフは、2018年3月以降における米国・ユーロ圏・英国・日本の政策金利の推移を示しています。
このうち米国の政策金利(上限)は、青のラインです。
もともと米国では、リーマンショックに端を発した金融危機により、2008年12月からゼロ金利政策を導入していました。
その後、約7年間のゼロ金利を経て、経済状況が回復したとFRBが判断して、2015年12月からは利上げ局面に入り、上のグラフへとつながっていきます。
しかし2019年には、トランプ政権下における米中貿易摩擦や世界経済の不透明感などにより、利下げ局面に入ります。
そんな中で、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが発生し、緊急的対応としてFRBは再びゼロ金利政策を導入することになりました。
このゼロ金利政策が解除されたのが2022年3月で、上のグラフからはその後に急ピッチで利上げが行われていることが読み取れます。
FRBの利上げによる影響も踏まえて、これからの経済動向を注視することが重要となりそうです。
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まとめ:世界経済の大きな流れを把握しよう!
今回はFRBの利上げをテーマに、基本的なところから直近の政策金利の推移まで解説してきました。
FRBは、米国経済や世界経済の動向を把握する上で、無視することのできない重要な存在です。
利上げの目的や影響を理解することは、世界経済の大きな流れの理解にもつながるでしょう。
FRBの政策を学ぶことは、長期的な資産形成においても非常に有益です。
世界経済の大きな流れを理解して、変化に対応できる知識をしっかりと身に付けていただければと思います。
*1 出所)三菱UFJ銀行「解説!知っておきたい経済指標 - FOMC」
*2 出所)IMF「 World Economic Outlook Database April 2023」