米国債の買い方や金利動向は?投資の魅力やリスクとあわせて詳しく解説

米国債の買い方や金利動向は?投資の魅力やリスクとあわせて詳しく解説

米国債は、個人でも投資できる外国債券の1つです。インフレによる金利上昇に伴い、米国債の利回りも上がっていることから投資家の注目が高まっています。米国債に投資する場合にはどんなことに注意すればよいのでしょうか。

今回は、米国債の特徴やメリット、リスク、買い方について解説します。

米国債とは

米国債とは、米国政府の信用に基づいて、米国財務省が発行する債券です。「米国財務省証券」とも呼ばれます。信用度や流動性が高く、取引が活発に行われているのが特徴です。*1

世界の国々が、外貨準備として米国債を保有しています。2023年1月の国別保有残高は、1位が日本の約1兆1,044億米ドルです。2位は中国の約8,594億米ドル、3位は英国の約6,683億米ドルとなっています。*2

米国債の利回りは上昇傾向にある

新型コロナウイルスやウクライナ情勢を背景に、世界的にインフレ(物価上昇)が加速しています。インフレ抑制のために、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを進めていることから、米国債の利回りは上昇傾向にあります。

米国国債10年の利回りは、2022年4月1日には2.390%でしたが、2023年3月31日では3.474%となっています。*3

新規発行の債券の場合、金利が上昇すると受け取れる利子も増えるため、米国債に対する魅力が高まっています。

目次へ戻る

米国債の種類

米国債は、利子の受け取り方で分類すると「利付債」と「割引債」の2つに分けられます。*4

利付債

利付債とは、保有中に利子が支払われる債券です。額面金額で発行され、デフォルトがなければ、償還期限(満期)を迎えると額面金額(元本)が戻ってきます。満期を迎えるまで年2回、半年ごとに利子を受け取るのが一般的です。*4

例えば、「額面金額1万米ドル、利率年4%、満期10年」の米国債(利付債)に投資する場合、保有中は年400米ドル(1万米ドル×4%)の利子が支払われ、10年後の満期時に1万米ドルが戻ってきます(税金、手数料等は考慮外)。

利付債は、定期的に利子収入を得たい場合に向いているでしょう。

割引債

割引債とは、表面上は利子が付かない債券のことです。額面金額から一定額を差し引いた価格で発行され、満期時に額面金額が戻る仕組みになっています。途中の利払いはありませんが、額面金額と購入金額の差額が利付債の利息に相当します。*4

例えば、「額面金額1万米ドル、満期10年」の米国債(割引債)を7,000米ドルで購入する場合、10年後の満期時に1万米ドルが戻るため、額面金額と購入金額の差額3,000米ドルが利益となります(税金、手数料等は考慮外)。

割引債は利子の受取等の管理を考える必要がなく、「複利運用効果」も期待できるため、長期の資産形成に向いているでしょう。*4

米国割引債の場合、利付債の元本部分と利子(クーポン)部分を切り離し、それぞれをゼロクーポンの割引債として販売する「ストリップス債」が代表的です。*5

目次へ戻る

米国債の税金

米国債の税金は、利付債と割引債で取り扱いが異なります。

<利付債>

<割引債>

出所)auカブコム証券「債券の基礎知識

利付債の利子は支払時に税金が源泉徴収されるため、申告不要で課税関係が終了します。

利付債と割引債の譲渡益・償還差益は、「特定口座(源泉徴収あり)」で保有していれば金融機関が源泉徴収してくれるため、確定申告は不要です。ただし、「特定口座(源泉徴収あり)」以外の口座での株式、公社債および投資信託の売買による損益の譲渡損との損益通算や「特定口座(源泉徴収あり)」口座での損益と他社との損益の合算をする場合には確定申告が必要です。「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の場合は、確定申告が必要になります。*6

目次へ戻る

米国債のメリット

米国債に投資するメリットは以下の通りです。

購入時に外貨ベースでの利回りがわかる

米国債は、あらかじめ利率や利払い日、償還期日などの条件が決まっています。発行体が破綻しない限りは、条件通りに利子や額面金額の支払いが行われます。満期まで保有する場合は、購入時に外貨ベースでの利回りがわかるため、投資判断がしやすいでしょう。

手間がかからない

米国債は、株式などのように値段を絶えず気にしたりする手間がかからないのもメリットです。満期まで保有すれば、発行体が破綻しない限り額面金額が戻ってくるため、日々の値動きや金利動向などを過度に気にする必要はありません。利付債は定期的に利子が支払われ、割引債は額面金額と購入価額の差が利益となります。

目次へ戻る

米国債のリスク

一方で、米国債には以下のようなリスクもあります。

為替変動リスク

米国債は米ドル建ての外国債券であるため、為替変動リスクがあります*4

「1米ドル=100円」のときに、米国債を1万米ドル(100万円)購入するケースについて確認しましょう。

満期時あるいは中途換金時に「1米ドル=120円」の円安になれば、20万円の為替差益(1万米ドル×(120円-100円))を得られます。一方で、「1米ドル=80円」の円高になると、20万円の為替差損(1万米ドル×(80円-100円))が発生します。

米国債は購入時に米ドルベースの利回りが確定しますが、為替相場の動向によっては円換算後の金額が元本割れする可能性もあるので注意が必要です。

価格変動リスク

米国債は、満期を迎える前に売却することも可能です。途中売却の場合は、売却時の市場価格で取引されます。発行時より金利が上がると債券価格は下がり、発行時より金利が下がると債券価格は上がるのが一般的です。*4

金利動向によっては購入時より債券価格が値下がりし、途中売却で元本割れする恐れがあります。

デフォルトリスク

米国債は、米国が発行体であるため信用度が高いといえます。しかし、債券にはデフォルト(債務不履行)リスクがあります。*4

将来何らかの理由で米国の財政が悪化すれば、元本が戻らない可能性もゼロではないことを理解しておきましょう。

目次へ戻る

米国債の買い方

米国債を取り扱う金融機関で口座開設し、購入資金を入金すると取引できます。取扱銘柄は金融機関によって異なるため、ホームページ等で確認するといいでしょう。

利回りや償還期日、発行価格などの条件を比較・検討し、投資銘柄を選んで発注します。注文が成立すると、取引報告書が交付されます。

基本的には日本円のまま購入できますが、金融機関によっては手持ちの米ドルを直接入金して購入することも可能です。

目次へ戻る

まとめ

米国債は信用度や流動性が高く、購入時に米ドルベースの利回りが確定するのが特徴です。満期まで保有(デフォルトなし)すれば元本が戻ってくるので、値動きの確認等の手間をかけずに投資に取り組めます。ただし、米ドル建てなので、為替変動リスクがある点には注意が必要です。

米国債を保有することによって格付けの高い米ドル建て債券への投資が行えます。分散投資の中の1つの資産として保有を検討してみてはいかがでしょうか。


*1 出所)auカブコム証券「米国国債

*2 出所)U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY(米国財務省)「 Major Foreign Holders of U.S. Treasury Securities(米国財務省証券の主要な外国人保有者)」< データ>

*3 出所)三菱UFJ 国際投信 「投資環境ウィークリー(2022年4月4日号)(2023年4月3日号)」P2

*4 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方

*5 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「ストリップス債

*6 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「特定口座

関連記事

人気ランキング