- 2023.04.12
- mattoco Life編集部
「ハイパーインフレ」「スタグフレーション」とは?意味や過去の事例を知って物価上昇に備えよう
新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢の影響で、世界的にインフレ(物価上昇)が加速しています。
「ハイパーインフレ」や「スタグフレーション」を懸念する声も出てきていますが、それぞれどのようなものなのでしょうか。
本記事では、ハイパーインフレ・スタグフレーションの意味や過去の事例を知って、物価上昇にどう備えるべきかを解説します。
インフレには、良いインフレと悪いインフレがある
インフレは物価が上昇し、お金の価値が下落することなので、悪い印象をお持ちの方も多いかもしれません。ですが、インフレは必ずしも悪いものではありません。インフレには、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があると言われています。
良いインフレとは、景気が拡大することで物価が上がることです。景気がよくなると、モノが良く売れて需要が上がります。物価は上昇しますが、企業業績が向上して給与も上がりやすくなるため、家計への影響は小さく済みます。
一方、悪いインフレとは、原材料やエネルギー、輸入品などの値上がりによって物価が上がることです。コスト増によって企業の利益が減少し、給与も増えないため、家計の圧迫要因となります。
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ハイパーインフレとは
ハイパーインフレとは、物価が短期間で数倍になるなど急激なインフレになることで、「悪いインフレ」に該当します。
「国家財政の極端な悪化」「通貨供給量の過度な膨張」などが主な原因で、通貨への信用が失われ、お金の価値が大きく下がってしまいます。
ハイパーインフレが発生すると、国や中央銀行でもコントロールが難しくなるため、私たちの生活に深刻な影響を与えます。*1
過去に発生したハイパーインフレの事例
日本を含め、過去にはいくつかの国でハイパーインフレが発生しています。ここでは、ハイパーインフレの事例を紹介します。
日本
日本では、第二次世界大戦後の1945年8月から1949年初めまでハイパーインフレに直面しました。1945年から1949年にかけて物価は約70倍に高騰し、預金封鎖や財産税創設、食糧確保などの措置がとられました。
米国の政治家ドッジ氏による財政均衡化政策(ドッジ・ライン)を通じてインフレが収束したと言われていますが、ドッジ氏の登場以前に、すでにハイパーインフレが解消されていたとの見方もあります。*2
ドイツ
ドイツでは、1914-18年の第一次世界大戦に敗れると、ベルサイユ条約で巨額の戦争賠償金を払うことを義務づけられ、その結果として 1922-23 年にかけて世界史に残るハイパー・インフレーションを記録しました。
1922-23 年の間、卸売物価は月間平均 322%上昇し*3、深刻な経済危機をもたらしました。
ジンバブエ
アフリカのジンバブエでは、2008年の大統領選挙を巡る混乱や過度の紙幣発行によりハイパーインフレが加速しました。*4
インフレ率は2億3,000万%と公表されています。自国通貨のジンバブエ・ドルは、約300兆ドルが日本円1円程度の価値になってしまいました。最終的には「100兆ドル紙幣」が発行されるなど、経済は大混乱となりました。*1
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スタグフレーションとは
ハイパーインフレと併せて理解しておきたい言葉として、「スタグフレーション」があります。
スタグフレーションとは、景気停滞を表す「スタグネーション」と「インフレーション」を組み合わせてできた言葉で、景気後退とインフレが同時に進行する現象です。
不景気で給与が上がらない中、モノの値段は上がり続けて家計を圧迫するため「悪いインフレ」といえます。
2023年3月発表のOECD(経済協力開発機構)の経済見通しによると、2023年のG20参加国のインフレ率は、5.9%と見込まれています。
また、2022年の世界全体の実質GDP成長率はインフレ率の上昇やロシア・ウクライナ情勢などを背景に3.2%と2021年末の予想から1%ポイント以上下回ったことに加え、
2023年の世界全体の実質GDP予想成長率が2.6%と見込まれていることから*5、
金融市場ではスタグフレーションの懸念が高まっています。
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日本もインフレが進んでいる
総務省統計局の資料によると、消費者物価指数(2020年を100とした場合)の2021年と2022年の平均は以下の通りです。
2021年に比べると、2022年は物価が上昇しています。ただし、ハイパーインフレのような極端な状態ではなく、2022年の消費者物価指数は前年比+1.1〜2.5%となっています。
今後も、物価や景気の動向を注視する必要はあるでしょう。
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ハイパーインフレやスタグフレーションに備える方法
ハイパーインフレやスタグフレーションに備えるには、現金から他のインフレに強いとされる資産を所有することです。インフレに強い資産としては、有価証券(株式、投資信託等)、実物資産(金、不動産等)、外貨資産が挙げられます。
有価証券は、物価上昇により企業の売上・利益が押し上げられ、関連する株式や投資信託の資産価値向上が期待されます。
金・不動産といった実物資産はモノ自体に価値があるため、インフレ環境下価値が極端に下がると考えづらく買われる傾向があります。
外貨資産は、インフレが進んで円の価値が下がると、米ドルやユーロといった外貨の価値は相対的に上がると考えられます。
ただし、これらの資産には価格変動リスクがあり値下がりする可能性があります。
これらの資産を保有し、インフレに備えるのは大切ですが、各資産の特徴にしっかり配慮し、自身の許容できるリスク範囲で資産を保有しましょう。
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まとめ
日本でハイパーインフレが発生する確率は低いかもしれません。しかし、世界的にインフレが加速しており、日本でも物価は上昇傾向にあります。また、景気後退とインフレが同時に進行するスタグフレーションへの懸念も高まっています。
自身のリスク許容度に考慮しつつ、インフレへの備えとして、株式や投資信託、外貨預金などを保有することを検討しましょう。
*1 出所)三菱UFJ銀行「新型コロナの影響?日本もなるかもしれない「ハイパーインフレ」に備える方法」
*2 出所)日本銀行金融研究所「戦後ハイパー・インフレと中央銀行 序文」
*3 出所)日本銀行金融研究所「物価と景気変動に関する歴史的考察 2.2 インフレの歴史的推移 」p.5
*4 出所)外務省「ジンバブエ共和国 基礎データ(経済 11経済概況)」
*5 出所)OECD「OECD Economic Outlook, March 2023」