日銀のオペレーションとは?意外と知らない仕組みを分かりやすく解説

日銀のオペレーションとは?意外と知らない仕組みを分かりやすく解説

日本銀行(以下、「日銀」)の金融政策は経済に大きな影響を与えることが多く、日銀が行うオペレーション(公開市場操作)(以下、「オペレーション」)についてのニュースを目にすることもあるでしょう。
例えば最近では、コロナ禍での中小企業を支援するためのいわゆる「コロナオペレーション」という時限措置の特別なオペレーションも行われています。

これらの日銀のオペレーションがどのような仕組みで行われているのか、なかなか理解しにくいところがあるかもしれません。
今回は、日銀のオペレーションの理解を深められるように、基本となる仕組みから解説していきます。

日銀の役割と金融政策

日銀には様々な役割がありますが、その中の一つに「物価の安定を図る」役割があります。
モノやサービスの価格が不安定に乱高下するような状態だと、私たちは安心して生活ができません。物価の安定は国民経済の健全な発展の貢献のためにとても重要です。*1

日銀がこの物価の安定を実現するために行う通貨や金融の調節は、「金融政策」と呼ばれています。*2
金融政策の主要な手段が本記事のテーマである「オペレーション」で、金融機関を相手に資金の貸付けや国債等の売買を行っています。*3

ちなみに日銀は「銀行の銀行」とも呼ばれますが、個人や一般企業が預金口座を開くことはできません。*4
主に金融機関のみが預金口座を保有することができ、オペレーションによる金融の調節もその預金口座を通じて行われます。

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オペレーションの種類

日銀が行うオペレーションは、大きく分けて以下の2種類があります。*5

  • 資金供給オペレーション
  • 資金吸収オペレーション

日銀が市場に資金を流していくオペレーションと、市場の資金を吸い上げるオペレーションです。
このそれぞれについて、基本的な仕組みを見ていきましょう。

資金供給オペレーション

資金供給オペレーションとは、日銀が市場に対して資金を供給するために行う金融政策です。買いオペレーション(買いオペ)とも呼ばれます。
一つの例が「国債買入」で金融機関から国債などを購入することにより資金供給が行われます。
日銀が金融機関から国債を購入すると、日銀は金融機関から国債を受け取り、その対価として金融機関に資金を支払うことになります。
つまり、金融機関が保有する資金量が増えることになるわけです。
これによって金融機関から市場へ通貨が回りやすくなり、市場に流通する資金量が増えることによって、物価の上昇が期待されます。

つまり資金供給オペレーションは、景気が悪化して物価が下落傾向にあるときなどに、物価の下落を抑制する目的で行われます。

資金吸収オペレーション

資金吸収オペレーションは資金供給オペレーションの逆で、日銀が市場から資金を吸収するために行う金融政策です。売りオペレーション(売りオペ)とも呼ばれます。
日銀が振り出す手形の売り出しや日銀が保有している国債の買い戻し条件付き売却を行います。

日銀が金融機関に国債を売却すると、日銀は金融機関に国債を引き渡し、その対価として金融機関から資金を受け取ることになります。
つまり、金融機関が保有する資金量が減ることになるわけです。
これによって金融機関から市場へ資金が回りにくくなり、市場に流通する資金量が減り、物価の下落が予想されます。

資金吸収オペレーションは、景気が過熱して物価が上昇傾向にあるときに、物価の上昇を抑制するために行われます。

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さまざまなオペレーション

2種類のオペレーションを紹介しましたが、日本経済が停滞する昨今において中心となるのは資金供給オペレーションでした。
今後は
その資金供給オペレーションの中でも、ここでは以下の3つを紹介しておきます。

  • 国債買入オペレーション
  • コロナオペレーション
  • 共通担保オペレーション

では、上記それぞれの目的と仕組みについて、細かく見ていきましょう。

国債買入オペレーション

国債買入れオペレーションは最も典型的なオペレーションの一つで、長期国債を買い入れて金融市場に資金を供給します
2013年4月に量的・質的金融緩和が導入されてからは、この国債買入オペレーションによって日銀が大量の国債を購入して金融市場に資金を供給してきました。

また、2016年9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和が導入されて以降は、長期金利の操作目標を実現するための手段という意味合いも持つようになっています。*6
日銀が長期国債を大量に購入すれば、通常は債券の価格が上昇して長期金利が低下すると考えられます。
このような仕組みのもと、短期金利と長期金利が良いバランスを維持しながら低く安定するように、国債買入オペレーションは運営されているわけです。

なお、2022年12月には、日銀はこのイールドカーブ・コントロールにおいて、長期金利の許容変動幅を拡大することを発表しました。*7
これに対しては「金融緩和が終わりに近づいているのでは?」といった憶測も呼びましたが、日銀はこれを否定しています。
今後もイールドカーブ・コントロールの動向は、経済ニュースにおいても重要なテーマとなりそうです。

コロナオペレーション

コロナオペレーションは正式には、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」といいます。
この名前の通り、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受けた中小企業等を支援することを目的として行われる資金供給オペレーションです。*8

なお、日銀は中小企業等に直接資金を貸し付けることはできないため、このオペレーションは金融機関を経由して間接的に行われます。
コロナオペレーションは臨時的な措置として貸付期間1年以内、0%にて借り入れを行うことができます。*9

中小企業等の資金繰りは改善傾向にあるということで、このコロナオペレーションは段階的に終了していく方針となっています。*10

共通担保オペレーション

共通担保オペレーションとは、日銀に差し入れられた国債などを担保として、金融機関に低い金利で資金を貸し出す資金供給オペレーションです。
日銀による金融調節をより円滑に行えるようにすることが趣旨とされています。*11

例えば、国債買入オペレーションであれば日銀が金融市場に資金を供給するためには、国債を保有しなければなりません。
一方で共通担保オペレーションの場合、日銀が国債を保有することなく金融市場に資金を供給することが可能です。

この共通担保オペレーションは、2023年1月18日に見直しが行われ、拡充されることが決定されました。*12
日銀の国債大量保有については、債券の価格形成に歪みが生じたり、市場の機能低下といった悪影響が指摘されることもあります。*13
共通担保オペレーションを拡充したのは、日銀が保有する国債を増やすことなく資金を供給できる共通担保オペレーションを利用しやすくすることが、目的の一つといえるかもしれません。

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まとめ

今回は、日銀のオペレーションについて基本から解説してきました。
一言でオペレーションといってもさまざまなものがあるので、それぞれの目的や仕組みを理解することが大切です。
日銀は、日本の経済が安定的かつ持続的成長を遂げていくために不可欠な基盤である物価の安定をめざし、国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っています。
今後の経済動向に大きな影響を与える日銀の金融政策は、経済ニュースにもよく取り上げられます。
オペレーションの趣旨をしっかりと理解して、経済ニュースの理解をより深めておくことが大切です。

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