- 2023.03.06
- 安達 裕哉
リーマンショックで大損した私が、間違いを反省してふたたび投資をはじめたあと、とても役に立った6冊
ポイント
前に書いたとおり、私はリーマンショックで数百万円損をしたのですが、それ以外にも何度か、お金の問題で困ったことがあります。
その一つが、今から20年以上前に新社会人になったときのことです。
よくある話(?)かもしれませんが、調子に乗って作ったクレジットカードを使い過ぎて、支払いを遅延させてしまったのです。
クレジットカードの利用金額も引き落とし口座の金額も把握していなかった私は、クレジットカード会社から連絡を受けて、残高が不足していることを初めて知りました。
知人に「ブラックリストに載ると、住宅ローンとか組めなくなるよ」と脅され、怖くなった私は、それ以来、家計簿をつけ、カードの利用を慎重にするようになりました。
この「家計簿をつける習慣」はお金を扱う上で、その後大変役に立ったのですが、クレジットカードで失敗しなければ、もしかしたら今でも家計簿とは無縁だったかもしれません。
そう思うと、多少のお金の失敗は、リーマンショックの時もそうでしたが、マネーリテラシーを向上させる、良いチャンスになります。
とはいえ、「お金で失敗しておきなさい」とは、万人にお勧めできるものではありませんし、できれば失敗なんてしないほうが良いに決まっています。
では、マネーリテラシーを向上させるためにどうしたらよいでしょうか。
王道ではありますが、やはり様々な書籍に触れてみるのは、悪くないと思います。
少なくとも、右も左もわからない人がいきなり投資を始めるのは、私のような失敗を繰り返しかねません。
そこで本稿では、一度大きく失敗した私が、間違いを反省するために読んで、
「投資を始める前に読んでおきたかった」
「基本中の基本の知識だった」
という内容が書かれた本を6冊、ご紹介をいたします。
その選定の基準は、以下です。
- 具体的に「何をやれ」というアドバイスが書かれたものを挙げました。
- 「こうしたほうがいい」と言うアドバイスだけではなく、なぜそうなのかを論理的に説明した「背景」も含めて説明している本を挙げました。
- 極力、本の著者が実際にやっていること(言っていることではなく)を挙げている本を選びました
- 倹約のみを勧めたり、お金に関する心がまえの話だけなど、投資に直接関係のない話題を扱う本は、除きました。
- 「不動産投資」をメインに扱う本は除きました。というのも、私が不動産投資をやっていないので、書かれていることの妥当性がわからないからです。
- 「個別株投資」も除きました。個別株投資の本はどれも、個別の企業研究をしたり、訪問して企業の調査をしたりせよと言うのですが、現実的に、私にはそれに充てる時間がなかったからです。
では、始めましょう。
なお、参考までに、私の主観で各書籍の難易度を★の数で示しました。★の数が増えるほど難しくなり、最大で5個となります。★(やさしい)~★★★★★(難しい)。
※なお、各書籍とも、書かれた時点での制度を前提に書かれているため、税率など現在の内容と異なる部分もありますので、ご留意ください。
マンガでわかるシンプルで正しいお金の増やし方(山崎元ほか、講談社)
【読書難易度 ★】
何と言ってもこの本が素晴らしいのは、「マンガ」だという点です。
投資関連の本は、内容はともかく、専門用語が多く、頭が痛くなってしまうような本も多いのですが、この本は非常にわかりやすい。
とはいえ、「マンガ仕立て」にするために、この本には若干クセがあります。
それは各章に「悪いお金のプロ」たちが登場し、それを著者がバッサリ切る点です。
例えば、
「●●が勧める投資信託なんてろくなものはありません」
「将来への備えを一度も考えたことのない素人が投資なんて始めるとカモになるだけ」
「◆◆を買うことだけはやめるべき」
「▲▲は不要かつ損」
などです。
これらの意見については賛否があるでしょう。
全ての専門家が「悪い人」ではないのですから。
しかし、今までお金のことについて考えたことのない人が最初に読む本としては、「その人の考え方次第です」といった、玉虫色のアドバイスよりは、こうしたはっきりとした「これはダメ」を言ってくれる本のほうが、役立つかもしれません。
1章、2章が投資。3章は不動産、4章は生命保険、5章はFP、そして6章は銀行と付き合う際の注意点について書かれています。
なお、私がこの本の中で、「投資」に際してのアドバイスについて、著者の山崎氏と同じように考えた部分は、次の6つです。
- 初心者は、投資信託を長期保有、分散投資から始めるべきなので、分散投資になりにくく、ブームが去ると下落する可能性の高いテーマ型投資信託は買わないほうがいい。
- 投資信託に投資するならば、インデックスファンドに投資すること。また、一切の手数料を合算して、年間に運用額の0.5%以上の手数料を払う商品はすべて避ける
- 自分がよく知らないものに投資してはいけない
- 普通の人は年金を払わないと損をする
- まずは個人型確定拠出年金(iDeDo)から始めるのが良い、投資先はインデックスファンド。ただし運用手数料が年率0.3%を超えるものはダメ。アクティブファンドは見極めが難しいので手を出さない。
- また、iDeCoに加えて、年間40万円までの投資に対する利益に20年間税金がかからない(2023年2月末時点)ので、つみたてNISAを少額でもよいので始めておくと良い。
繰り返しになりますが、とても分かりやすい本なので、投資初心者で、どの本から読もうか、と悩んでいる方には、まずこの本を読んでみることをお勧めします。
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ジェイソン流 お金の増やし方(厚切りジェイソン、ぴあ)
【読書難易度 ★★】
芸人の厚切りジェイソン氏が、「2年前に家族全員が一生安心して生活できるお金を、投資の利益だけで得ることができるようになりました」と語った根拠となる、自分の投資方法を綴った本です。
60万部※1以上売れたベストセラーで、「オリコンランキング」2022年で一番売れた本となったこともあり、だいぶ話題になりました。
読んだ方も多いのではないかと思います。
この本の言いたいことは、まとめてしまうとたった二つだけだと私は思いました。
一つ目は、「節約して、投資できるタネ銭をつくれ」。
二つ目は、「できたタネ銭を、インデックスファンドに長期、分散、積立投資せよ」。
とはいえこの本、少々物議をかもしたこともあります。
というのも、この本で勧められている金融商品が昨年に下落した時、一部批判の声がありました。
しかし、株式市場の乱高下はよくあること。
それをもって「長期、分散、積立」で投資せよ、という著者の主張を「間違っている」という根拠にはなりません。
むしろ、株が下がった時こそチャンスだという主張もあるくらいなので、彼の主張を信じるかどうかは、様々な本の主張を比較したほうが良いでしょう。
(個人的には、後述する他の本の主張と、言っていることはそう変わらないと思います)
なお、この本の特色としては、投資そのものの手法ではありません。
あくまで彼は芸人であり、専門家ではないので、「投資の各論」を学ぶなら、別の本のほうが良いでしょう。
ではこの本を読むことによるメリットは何かというと、専門家ではない、一般の人の気持ちがよくわかっている点です。
例えば、
- インデックスファンドに投資した理由は、ウォーレン・バフェットが自分の妻に向けて、自分に万が一のことがあった時は、「自分の遺産の90%はインデックスファンドに投資しなさい。長期的に見れば良い結果を残せると信じている」と伝えたということ
- 毎日お店で買う300円のコーヒーを辞めると、1年で10万円浮く。この10万円を金利5%(年利)で30年間運用すると、複利なら43万2194円にもなる。
もしこれが100万円の元手だったら30年後には約432万円になる。無駄な買い物は辞めて、副業したり、仕事を頑張って収入を増やそう。 - 一体いくらまで投資してよいのかと言うと、「3ヶ月は仕事がなくても暮らせる現金は必ず手元に置いておき、それ以外のお金はすべて投資に回す」べき。
- 個別株投資はおすすめはしない。理由としては、企業の業績や市場を自分で予測できないから。もうひとつの理由としては、個別株は日々のやりとりが面倒だから。
厚切りジェイソン氏が「自分で」「実際にやっていること」だけを述べた本であるうえに、彼は金融のプロではないことが、かえって新鮮に感じました。
読み物としてはライトなので、彼の投資手法を真似るかどうかは脇において、一度目を通しておいても良いのではないかと思います。
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マイナス金利でも、お金はちゃんと増やせます (大江英樹、KADOKAWA)
【読書難易度 ★★】
著者は大江英樹氏という、元野村證券の経済コラムニストです。
こちらは前項と異なり、「専門家」が、できるだけわかりやすく、一般の人がどのように投資に接すればよいかを記述した本だと言えます。
専門家が書いたにしては、かなり読みやすいので、「芸人ではなく、専門家の本を読みたい」と言う人は、こちらを優先して読めばよいと思います。
さて、肝心の内容ですが、最初に紹介した山崎元氏の「マンガでわかるシンプルで正しいお金の増やし方」と同様に、話題はiDeCoから財形、公的年金、NISA、保険、投資信託、ETF、リボ払い、FX、株主優待、百貨店の友の会の話題など、お金にまつわる話題を網羅しており、かなり多岐にわたります。
その中で、本書の特長を挙げるとすれば、「専門家が語るだけあって、様々な制度のメリット、デメリットに詳しい」と言う点です。
例えば、以下のような内容です。
- 個人型の確定拠出年金(iDeCo)が最強。
- 自営業、フリーランスには小規模企業共済が良い。
- 会社が対応していれば、運用益が非課税になる財形年金は良い。
- マイナス金利が適用されないMRF。
- FXで資産形成はできません。
この中でも特に、「年金のもらい方」についてのアドバイスは、他の本にはないものでした。
・70歳まで年金を受け取るのを我慢して働き、繰り下げ支給にすればどうなるかというと、今度はもらえる年金額が増えます。
仮に70歳まで5年間受け取り開始を遅らせると、0.7%×12ヶ月×5年=42%と、何と受け取る年金額が4割以上も増えるのです。
「早死にしたら無駄になるのでは」と、私は思いましたが、それについて大江氏は、
”年金は長生きした結果、お金が無くなってしまうリスクに備えるための保険ですので、公的年金は終身、つまり死ぬまでもらえます。だとすれば、損得で考えるのはあまり意味がないわけで、万が一、長生きした場合(この言い方も変ですが)のことを考えると、後で手厚く受け取れるほうが安心といえるのではないでしょうか。”
と言っており、なるほどな、と思いました。
著者は、繰り上げ支給で60歳から受け取るのと、繰り下げ支給で70歳から受け取るのとでは、支給額が2倍違う、と述べていたので、試しに「ねんきんネット」※2で試算をした結果、本当にそうなっていましたので、これは驚きでした。
また、基本中の基本として「NISAは投資による収益が非課税になるので利用しない手はない。」と述べています。
ここまでは、他の本の主張と大差はないのですが、NISAは「損失が出ても他の利益と合算して損益通算できない上に、売却したときにその枠を再利用できないので、短期売買には向いていない。また、期待リターンの高い金融商品に投資。」と述べています。
最後に、大江氏の投資に対する個人的な見解として「投資信託を買うのであればインデックス派」そして、グローバルに分散投資することが基本だと述べています。
”分散効果を考えると、インデックス型で日本の株式市場にだけ投資するというのは不十分です。国内株式のインデックス型を買うということは、別の言い方をすれば、「日本株式会社」という個別の株式を買うのと同じことです。本当の意味で分散効果を狙うのであれば、グローバルに分散投資をする必要があります。(中略)
投資の世界にも、分散投資をせずに、投資先を集中して大きな成果を挙げている投資家もいます。でも、そういう人たちは、経営者と同様、事前に投資する対象をしっかりと調査・分析して、高いリスクを取りながら、大きなリターンを得ようという努力をしています。一般の個人投資家は、そこまで調べたり研究したりするのは、手間や時間が必要なだけに、困難でしょう。 したがって、一般投資家がリスクをコントロールするためには、分散投資が合理的なのです。”
さらに、「積立」による投資の合理性についても触れています。
”毎月一定金額を金融商品の購入に充てることで、高いときは少しだけ、安くなればたくさん買うという手法です。 投資対象の分散効果は理論的に説明できますが、このドル=コスト平均法はどんな場合でも必ず有利になるという投資方法ではありません。しかし、このやり方には二つのメリットがあります。一つは心理的に惑わされずに済むこと、もう一つは計画的に資産形成ができることです。”
厚切りジェイソン氏は、米国への投資をお勧めしていましたが、大江氏は「グローバル」への分散投資、つまり「世界全体を買いなさい」とアドバイスしており、個人的にはアメリカに集中投資をするよりも、グローバルに分散投資をするほうが、より合理的だと思いました。
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投資の鉄人 (岡本和久ほか、日本経済新聞出版社)
【読書難易度 ★★★】
さて、先述した大江英樹氏を含めた、日本の複数の専門家たちの座談会形式で書かれた本が、「投資の鉄人」です。
大江英樹氏の本を読んで、「もう少し様々な専門家の意見がほしい」と思ったときに、次の1冊として選択すると良いでしょう。
さて、この本のポイントは「何に投資をすればよいか」という具体的な話だけではなく「投資」に対する考え方がきちんと公開されている点です。
その考え方は、大きく4つに分かれています。
- 情報に惑わされない
- 相場に惑わされない
- 商品に惑わされない
- 自分に惑わされない
1.情報に惑わされない
この章は、アナリストの馬渕治代氏によって書かれたものです。
タイトルの「情報に惑わされない」とは何か。
「金融機関の営業社員は、全員が全員、高度な知識と経験を持った専門家である、という考え方は捨てるべきであり、かつ専門家の見通しに何も考えずに従おう、というのは、自己責任の放棄である」という考え方です。
つまり、投資とはあくまでも自分の判断で、自分の責任において行うべきものであり、
「あなたの言ったとおりに買います」とか「信用している人のアドバイスに従います」といった発言はダメなのです。
自分できちんと考えることができなければ、投資に手を出すべきではない、という原則を改めて確認するために、読み進める前に一通り目を通しておくと良いかもしれません。
2.相場に惑わされない
投資教育家の岡本和久氏によって書かれた章です。
この章では、「短期的な市場の上げ下げに惑わされない」という考え方が紹介されています。
章の冒頭にある「投資収益とは、①そこそこの利益を、②長い時間をかけて、③リスクを取った見返りに与えてもらえるものです。これが証券投資の現実です。
(中略)
「株式投資はリスクが大きい。だから、できるだけ短期で売買したほうが安全だ」と考える個人投資家はたくさんいます。しかし、この論理は明らかに誤りです。正しくは「株式投資はリスクが大きい。だから、大きな利益を狙うのではなく、そこそこのリターンを長い時間をかけてとる」ことが重要なのです。
(中略)投機で儲かったとしても、それは「運が良かった」だけの話です。サイコロの目を当てる練習をいくらしてもうまくならないように、投機の練習をいくらしても技術は上がりません。」
との意見は一般投資家にとって重要な考え方だと思います。
実際、岡本氏はトヨタの2017年初めの時価総額は22.8兆円。同社の2017年3月期の連結当期純利益の予想が1.7兆円であり、株価が1%動くと、1日で当期純利益の約13%に相当する価値が株式市場では変動していることになるが、昨日と今日で利益の13%が増減する大事件が毎日起きているとは考えられないと述べており、「株価は影(実体ではなく)。影ではなく実体価値の成長に注目せよ」と主張します。
したがって岡本氏の考え方としては、投資の目的は「一攫千金」を狙うものではありません。
資産運用の目的は購買力維持にあり、物価上昇プラスアルファのリターンをとることが目的です。そのための具体的な施策は、株式投信と公社債投信への投資が紹介されています。
本書では、株式投信については「グローバルな株式インデックスファンドを買えばいい」と述べており、他の類書とほぼ同様の内容です。
ただ、本書の特徴としてはリバランス、すなわち「年齢によって、株の比率を変えなさい」と言うアドバイスがなされています。
その方程式は「100-年齢=株の比率」つまり、30歳の人は金融資産全体の70%を株で。50歳になったら比率を50%ぐらいに下げる。さらに80歳になったら株は20%。
高齢になればなるほど「株式のリスク」を取るべきではないとの主張ですが、「購買力の維持」が目的であれば、確かにその通りです。
3.商品に惑わされない。
この章は、ファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子氏によって書かれています。
竹川氏は「投資信託」の問題点、注意点、選び方を詳細に記述していますが、そのなかで「避けるべき行動」を7つにまとめています。
→ 分散効果がなくなるのでやめること
②分配金だけで商品を選んでいる
→ 極力分配金を出さない投信を選ぶこと
③新発売の投信が好き!
→ 過去の実績のあるものの中から選ぶこと
④テーマ型・流行の投信に目が行ってしまう
→ 長期の資産形成にメリットはない。メインの投資先には不適切
⑤手数料をあまり気にしない
→ 特に信託報酬が安いものを選ぶこと
⑥投信の規模に無頓着
→ 純資産総額が小さすぎるものはダメ。また急激な資産の増加も、運用に支障をきたすケースがあるのでダメ。
⑦実はよくわからずに買ってしまったものがある
→ 仕組みが複雑でよくわからないものは無理に買う必要はない。
また、「するべきこと」としては、基本は全世界株式型のインデックスファンドを購入することを推奨しています。
なお、その際には
②継続性は大丈夫か(信託期間は無制限)
③指数と乖離していないか(トラッキングエラーが少ない)
の3つを注意事項としています。
ただし、竹川氏は具体的な商品名をいくつか挙げていますが、この本は少し前に書かれたため、古い情報が多く、そこは注意したほうが良いでしょう。
4.自分に惑わされない
この章は、前項の「マイナス金利でも、お金はちゃんと増やせます」の著者、大江氏によって書かれています。
多くの内容は、前項と被っているため、繰り返しの内容になってしまいますが、
- テーマ型投信は買ってはいけない
- シンプルなものを買う。複雑なものは高い
- 退職金投資デビューはしない。退職金はリスクを取るお金ではない。
- 給与は天引きを使う
- ルールを決める。(特に投資の上限)
- 失敗を体験する
などのアドバイスが具体的になされており、併せて読んでも良いと思います。
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投資の大原則 (バートン・マルキール チャールズ・エリス、日本経済新聞出版社)
【読書難易度 ★★★】
投資における2大ベストセラー、『ウォール街のランダム・ウォーカー』のバートン・マルキール氏と『敗者のゲーム』のチャールズ・エリス氏の共著の本です。
今回挙げた中で「一冊だけ読むとしたらどれを勧めるか」と問われたら、迷わずこの本をお勧めします。
というのも、これまでの話が、この一冊でほぼ網羅されているからです。
例えば、本の書き出しは「まず貯蓄を始めよ」であり、厚切りジェイソン氏が述べた「倹約してタネ銭を作れ」と言う項目が最初にあります。
タネ銭を作った後は、「シンプルな投資法」によって、資産形成をしていきます。
結論としては、著者は2人とも「インデックスファンドに投資せよ、わたしもそうしている」といいます。
その理由として、主に下記を挙げています。
- インデック投資は、一般的にいえば、個々の株や債券に投資するアクティブ運用ファンドよりもリターンは高い。
- 10年以上にわたって、広範囲に株式を買うインデックスファンドは、アクティブ運用の投資信託の3分の2以上に勝っている。たしかに過去短期的に市場に勝っているマネジャーはいるが、これから市場に勝つことのできるマネジャーをどのように選ぶのか、非常に難しい問題。
- バフェットも、ほとんどの投資家はインデックスファンドに投資するのがいいと言っている
- テーマ型の投資信託は買わないこと
- 自分の良くわからないものには投資しない
また彼らは「個別株への投資」は、楽しみのためにやりなさい、という言い方をしています。
”第2のグーグルのような成長株を見つけ、ウォーレン・バフェットのようになると意気込んでいるのなら、それ以上何も言わない。あなたが市場に勝つ確率は、競馬やカジノで勝つ確率よりは高く、個別銘柄への投資は大きな楽しみなのであろう。しかし、退職後に備えての大切なお金は、やはりインデックスファンドに投資することを勧める”
また、投資の時期としては、前に取り上げた書籍と同様に「時間分散」を推奨しています。
つまり、ドル・コスト平均法です。
ここで重要なのが、「配分された資産の1つが暴落しても、決して慌てたり売ったりしてはいけない」と言う点です。
もし本当に長期投資をしようと思うなら、価格が下がれば下がるほど買うチャンスだからです。一般の投資家は、定期的に少しずつ投資することが良く、相場を見ながら売買することが、失敗の最大の原因であることが強調されています。
なお、前項で述べた「リバランス」についても、触れられており、
年齢や状況によって株式への配分を変えなさい、と同じアドバイスをしています。
- 若くて、退職するまでにそれを乗り切るだけの時間的余裕があるなら、株式への配分を多くできる。もう退職をしているなら、リスクを抑えた投資をするほうがいい。
- 経済状況が悪化しているときには、株式への投資をしないほうがいい。
- 資産が大きく目減りすることに耐えられない人は債券や預金への比重を多くするといい。
総合的に見て、一般の方が、投資を始めるのに必要な情報がすべて網羅されています。
ただし、海外の著者によって書かれたものなので、この本を元にしつつ、前項で紹介した「投資の鉄人」等を参考にすれば、ほぼ必要な知識は揃うでしょう。
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ノイズ(ダニエル・カーネマン、早川書房)
【読書難易度 ★★★★★】
さて、最後に紹介するのは、かなり最近の本です。
行動経済学の始祖、ノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン氏と、ハーバード大学ロースクール教授のキャス・サンスティーン氏による書籍です。
これはいわゆる「投資本」ではありません。
ではなぜ、この本を紹介するのかと言うと、「なぜインデックスファンドは、多くのアクティブファンドの成績を上回るのか」の理由となる見解が書いてあるからです。
正直、かなり読みにくい本であり、投資に直接触れられているわけではないので、「優先的に読むべき」だとは全く思わないのですが、より深く、専門家の意思決定について知りたい方には、これ以上の本はないと思います。
この本で読むべきは、上巻の第三部、9章の「人間の判断とモデル」の部分です。
書かれている重要な示唆を一言で言えば、「専門家があれこれ複雑に考えて下した決定よりも、単純なルールに基づく意思決定のほうが、総合的に見て優れている」です。
これは意思決定に際して、人間は「ノイズ」が入ることによって、意思決定を誤ってしまう
ことが原因だと、カーネマンらは推定しています。
これが事実だとすると、「インデックスファンド」が「アクティブファンド」に対して、上回る成績を上げている理由がわかります。
インデックスファンドはある意味、「指標」となるインデックスに追随すればよく、シンプルなアルゴリズムとルールによって運用ができます。
ところがアクティブファンドは専門家であるファンドマネジャーが、様々な要因を加味して、複雑に意思決定をしています。
しかし、研究によれば、専門家の意思決定は、アルゴリズムによる意思決定に勝つことが非常に難しい。したがって、インデックスファンドの多くが、アクティブファンドよりも良い成績を上げていることは必然だ、ともいえるのです。
「アクティブファンドではなく、インデックスファンドに投資すべき」という投資本は非常に多く、実際に成績を見てもその通りなのですが、その理由についてはっきり述べられている本はあまりありません。
「ノイズ」は、そこに光を当てていると言う点で、唯一無二の価値があります。
以上、リーマンショックで大損した私が、間違いを反省してふたたび投資をはじめたあと、とても役に立った6冊、の紹介でした。
あくまで私の個人的見解ではありますが、ご参考としていただければ幸いです。
また、以前も書籍を紹介した記事もございます。こちらもご参考になってください。
「【永久保存版】プロが勧める 初心者の金融リテラシーを劇的に向上させるスゴい7冊」
※1 出所)BOOKぴあ(電子書籍含む)三菱UFJ国際投信調べ(2023年2月22日)
※2 日本年金機構「ねんきんネット」
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