ESG投資の魅力や問題点は?メリット・デメリットをわかりやすく解説
ESG投資は、環境や社会に配慮した企業を重視・選別する投資方法です。気候変動問題などへの関心が高まっていることから、資産運用ではESG投資が注目されているテーマになっています。
ESG投資にはメリットもありますが、デメリットや課題もあるため、特徴を理解した上で投資を始めることが大切です。
今回は、ESG投資の概要やメリット・デメリット、グリーンウォッシュ問題について解説します。
(目次へ戻る)
ESG投資とは
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をつなげた言葉です。
投資先の価値を測る際に、売上や利益といった財務情報に加えて、非財務情報であるESG要素を考慮する投資のことを「ESG投資」といいます。*1
ESG要素の具体例は以下の通りです。
出所)三菱UFJ銀行「投資の新トレンド「ESG投資」とは?環境や社会に配慮する企業が成長する」
ESG投資は、「気候変動や人権などの社会問題の解決に積極的に取り組んでいる企業は持続可能性があり、長期的な成長が期待できる」という考え方に基づいています。
ESG要素に配慮した企業に投資することで、長期的に安定したリターンが期待できます。
ESG投資の市場規模
世界と日本におけるESG投資の市場規模は以下の通り拡大しています。
出所)財務省主計局「ESG投資について(令和3年12月1日)」P12
2016年から2020年までの4年間で、世界のESG投資残高は1.5倍、日本は5.8倍に拡大しています。
2020年の日本のESG投資残高は2.9兆米ドル、全運用額の約24%です。
ESG投資が注目される理由
ESG投資が注目される背景には、「SDGs(エスディージーズ)の浸透」があります。
SDGsとは、2015年9月に採択された「国連の持続可能な開発目標」のことです。
持続可能で多様性のある社会を実現するために、2030年までに17の目標達成を目指しています。*2
SDGsとESGの課題には、多くの共通点があります。SDGsには企業の積極的な関わりが求められており、ESGの課題に対処することが不可欠であることから、ESG投資に注目が集まっています。*3
(目次へ戻る)
ESG投資のメリット
ESG投資のメリットは以下の通りです。
SDGsの達成に貢献できる
ESG投資では、環境問題や社会問題の解決、企業統治に取り組む企業を重視して投資を行います。
持続可能な社会の実現には、企業の社会的問題への取り組みが不可欠です。
ESG要素に配慮した企業に投資を行うことによって、間接的にSDGsの達成に貢献できます。
長期的な企業価値の向上が期待できる
ESGに積極的な企業であれば、法改正や規制強化による事業環境悪化リスクや倫理的問題などのビジネスリスクが少ないうえ、長期にわたり事業を継続しやすいと考えられます。つまりESG投資は、長期的に安定した収益が望めるのが魅力です。また投資によって社会貢献につながる点も、個人投資家にとっては大きなメリットといえるでしょう。
ESG投資のデメリット
一方で、ESG投資には以下のようなデメリットもあります。
ESG投資は、従来の財務情報のみを基にした投資ではないため、短期的なリターンはあまり期待できません。そのため短期的な収益を望んでいる方には、適した投資とはいえないかもしれません。
また、事業利益に直結する行為ではないため、コストが増えて利益の圧迫要因となる恐れがあります。思うような成果を出すことができず、長期的な企業価値の向上につながらない場合もあるでしょう。
有望な投資先を見つけるのが難しい
売上や利益などの財務情報とは異なり、ESG課題への取り組みや成果は数字で評価できない部分があります。
また、ESG投資には複数の分析手法があり、専門的な知識も求められます。
初心者が企業のESG課題への取り組みを分析・評価して、有望な投資先を見つけるのはハードルが高いといえます。
(目次へ戻る)
ESG投資の始め方
初心者がESG投資を行う場合は、投資信託を活用するのが一つの方法です。
投資信託の中には、ESGをテーマとするファンドもあります。ファンド名称に「ESG」「社会課題解決」ということを謳い、ESG要素を考慮して投資銘柄を選定するのが特徴です。*4
また、ESG指数との連動する成果を目指して運用される投資信託(インデックスファンド)もあります。
ESG指数とは、ESGの課題に取り組む企業で構成される株価指数です。運用目的としてESG指数への連動した成果をめざすインデックスファンドを購入すれば、実質的にESGの課題に取り組んでいると評価されている上場企業に少額から分散投資ができます。
代表的なESG指数には、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」などがあります。
(目次へ戻る)
ESG投資は「グリーンウォッシュ問題」に注意
グリーンウォッシュとは、「グリーン(環境的な)」と「ホワイトウォッシング(ごまかす)」からできた造語のことで、環境への取り組みを行っていると表面的に見せかけることを意味します。ESGを謳っているにもかかわらず、実際にはそれほどESG投資を実践していない状況を表します。
たとえば、低炭素を謳うファンドの投資銘柄に、温室効果ガスの排出量が多い企業が含まれているようなケースです。ESG投資のグリーンウォッシュ問題は、各国で指摘されています。
海外では、大手金融機関のESG投資への取り組みについて、実際よりも誇張された開示がなされていた疑いがあると報道されています。
「運用資産残高の半分以上はESGインテグレーション(ESG投資の手法の1つ)のプロセスを経ている」とレポートで公表していましたが、実際にはごく少数しか行われていなかったとの指摘がありました。
また、商品の名称に「ESG 要因」が含まれるが、その投資目的には主に世界の株式に投資することで値上がりを目指すとのみ記載される。
商品の名称には「サステナビリティ」の言葉が含まれるが、その投資目的では財務実績にしか言及しない。
商品名に「ESG」を含むが、問題となっている武器への投資を排除するネガティブスクリーニング戦略の使用は限られており、他の投資戦略においても ESG 要因を大きく考慮していない。等の事例が報告されています。*5
ESGファンドのグリーンウォッシュを見分けるには、目論見書などで運用方針を確認することが大切です。
しかし、専門知識がない初心者が、グリーンウォッシュを見分けるのは難しいかもしれません。グリーンウォッシュが心配な場合は、ESG指数との連動を目指すファンドを選ぶのも1つの手です。
(目次へ戻る)
まとめ
ESG投資は、投資を通じて社会貢献ができ、投資先企業の長期的な企業価値の向上も期待できます。
一方で、必ずリターンを得られるとは限らず、グリーンウォッシュ問題にも注意が必要です。
メリット・デメリットを理解した上で、ESG投資を始めるか検討しましょう。
*1 出所)三菱UFJ銀行「今、注目のESG投資とは?」
*2 出所)国際連合広報センター「持続可能な開発目標」
*3 出所)経済産業省「「SDGs経営ガイド」を取りまとめました」
*4 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「三菱UFJモルガン・スタンレー証券で始めるESG投資」
*5 出所)日本証券業協会「IOSCO「資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言」<PDFP26>