FIREをする人は注意!早期リタイア後や老後にかかる税金を知っておこう

FIREをする人は注意!早期リタイア後や老後にかかる税金を知っておこう

FIREとは、経済的自立(Financial Independence)と早期リタイア(Retire Early)を組み合わせた言葉です。一般的には、まとまった資産を作り、その運用益だけで生活していくことを意味します。*1

FIREを果たした後や定年退職後も税金はかかるため、公的負担に備えながら資産形成に取り組むことが大切です。今回は、リタイア後にかかる税金や公的負担について解説します。

退職金には所得税・住民税がかかる

会社を退職するときには、多くの企業で収入や勤続年数などに応じて退職金が支給されます。一度にまとまった金額を受け取れるので、FIRE後や老後の生活費を確保するうえで重要な役割を果たします。

給与や賞与と同じく、退職金にも所得税や住民税がかかるため、手取り額を把握しておくことが大切です。

退職金の税金計算方法

退職金の所得税額は、以下の手順で計算します。

  1. (退職金-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額
  2. (課税退職所得金額×税率-控除額)×102.1%=源泉徴収税額

1の退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。*2
2の税率および控除額は、国税庁の「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に基づきます。*3

住民税額は、上記の課税退職所得金額に税率10%をかけて計算しますが、自治体によって税率が異なる場合もあります。

仮に退職金2,500万円、勤続年数30年の場合、源泉徴収税額の合計は約58万円、手取り額は約2,442万円が目安となります。*2

勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、税金を計算して源泉徴収してくれるため、原則として確定申告は不要です。

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退職した翌年の住民税に注意する

FIREや定年退職をした後は、住民税に注意が必要です。住民税については、次の2つのポイントを押さえておきましょう。

退職金から未納分が差し引かれる

会社員は、6月から翌年5月まで毎月の給与から住民税が徴収されます。退職金については、以下の通り、退職日によって徴収方法が異なります。
転職以外の理由で1月1日から4月30日までに退職する場合には、退職月から5月までの住民税の未納分を退職金から一括で差し引かれます。
退職日が5月1日から5月31日までの場合は、通常通り5月分の住民税額が最後の給与から徴収されます。
退職日が6月1日から12月31日までの場合は、退職者の意思で、翌年5月までの住民税の納付方法を一括徴収か普通徴収か選択することができます。
退職時期によっては、退職金からまとまった金額の住民税が徴収されることがあります。

住民税は前年の所得をもとに計算される

退職した翌年は、仕事をしていた前年の所得に基づいて計算された住民税を納めます。リタイアして収入が減少しても、退職後1年間は住民税の負担が重くなるため、納税資金を準備しておくことが大切です。

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国民健康保険料がかかる

FIREをする場合、退職後は健康保険から国民健康保険に切り替えるのが一般的です。会社員は給与天引きで健康保険料を払いますが、退職後は自分で加入手続きをして保険料を納めなくてはなりません。

国民健康保険料は年齢や所得に応じて決定され、市区町村によって差があります。FIREをする前に、保険料がいくらかかるかを確認しておきましょう。

任意継続も選択肢

退職後2年間は「任意継続」を選択して、これまでの健康保険を継続することも可能です。会社員は在職中健康保険料を事業主と半分ずつ負担しますが、退職後は全額自己負担となります。それでも、国民健康保険より任意継続のほうが、保険料が安く済むこともあります。

任意継続の健康保険料は退職時の標準報酬月額をもとに決定され、原則2年間変わりません。国民健康保険と任意継続の保険料を比較し、有利なほうを選択するといいでしょう。*4

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国民年金保険料がかかる

早期リタイア後は、勤務先の厚生年金を脱退して国民年金に加入します。厚生年金保険料は給与天引きですが、退職後は住所地のある市区町村で国民年金の加入手続きを行い、自分で保険料を納めなくてはなりません。令和4年度の国民年金保険料は月額16,590円です。*5

FIREを目指す場合は、厚生年金脱退により将来もらえる年金が減ることに注意が必要です。ねんきんネットなどを活用して、将来の年金見込額を試算しておきましょう。

扶養している配偶者の国民年金保険料もかかる

会社員の場合、扶養している配偶者は第3号被保険者となるため、国民年金保険料を納める必要はありません。*6
しかし、退職後は扶養している配偶者にも国民年金保険料がかかります。年間保険料は2人分で約40万円です。
FIREをするなら、配偶者の国民年金保険料も含めて、早期リタイア後の生活費を試算する必要があります。保険料を安くしたい場合は、1年分や2年分をまとめて前払いする「前納」を検討しましょう。*7

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金融資産の売却益に課税される

FIREには、「4%ルール」という考え方があります。毎年、資産運用額の4%未満を生活費として取り崩すことで、資産を減らさず生活できるという内容です。4%ルールでは、生活費25年分の金融資産を利回り4%で運用することを前提としています。

ただし、金融資産の売却益には20.315%の税金がかかるため、利益がそのまま手元に残るわけではありません。仮に手取りリターンを4%と想定するなら、運用上は約5%のリターンが必要になります。

相場は変化するため、毎年安定してリターンを得られるとは限りません。資産運用額を取り崩して生活費を確保するなら、税金を考慮して保守的な運用計画を立てることが大切です。

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老齢年金は「雑所得」として課税される

FIRE後や定年退職後は、原則65歳から老齢年金を受け取れます。老齢年金は「公的年金等にかかる雑所得」として課税対象となり、一定額を超える年金を受け取る場合は税金がかかります。

65歳以上で年金収入のみの場合、年金額が158万円を超えると税金が源泉徴収されます。源泉徴収税額は、年金額から一定の控除額を差し引いた額の5.105%です。

年金所得者には確定申告不要制度があるため、年金額が400万円以下であれば確定申告は不要です。*8

まとめ

まとまった資産を作ることに成功し、FIREを果たしても、生活している限り納税の義務は生じます。FIREを目指して資産形成に取り組むなら、早期リタイア後や老後にかかる税金・公的負担にも備えましょう。

*1 出所)日本証券業協会「投資の時間 とうしくんの疑問(第5回)

*2 出所)国税庁「退職金と税

*3 出所)国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表

*4 出所)全国健康保険協会(協会けんぽ)「退職後の健康保険について

*5 出所)日本年金機構「国民年金保険料

*6 出所)日本年金機構「国民年金第3号被保険者の保険料について

*7 出所)日本年金機構「国民年金前納割引制度(現金払い 前納)

*8 出所)国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係

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