「人生100年時代」という言葉に象徴されるように、長い老後生活が予想される昨今、資産形成の重要性が高まっています。
この資産形成を実現するための手段のひとつに投資信託があります。
しかし投資信託に投資をするのであれば、その仕組みをしっかり理解しておくことが欠かせません。
日々値段が変動し、利益になることも損失になることもあるので、投資信託の値段(基準価額)についてはしっかり押さえておきたいところです。
そこで今回は、これから投資信託での資産運用を検討している人に向けて、投資信託の値段がどう決まるのかについて基本的なところから解説していきます。
投資信託の仕組み
出所)三菱UFJ銀行「投資信託とは?銀行員が解説!」
投資信託とは、多くの投資家から資金を集めて、それをあらかじめ決められた投資方針に基づいて運用会社が運用する商品のことです。
投資家が自分の運用スタイルに合った商品を選んで、そのときの値段(基準価額)に基づいて希望の金額(口数)だけ購入すると、その購入した資金を運用会社が自分の代わりに運用してくれることになります。
投資のリターンの回収方法には、一般的に「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」があります。投資信託で利益を得られる方法として挙げられるのは、大きく以下の2通りです。
- 基準価額が高くなったところで売却する
- 分配金(利益 利子 配当金等による)を受け取る
投資信託の基準価額は、運用会社が行う運用の結果などによって日々変動していきます。
基準価額が高くなったところで売却(解約)して得られる売却益は、「キャピタルゲイン」と呼ばれる利益です。
また、投資信託に投資をしていると、運用によって増えた資金が投資家に分配金という形で還元されることがあります。
これは投資信託を保有することによって得られるもので、「インカムゲイン」と呼ばれる利益です。分配金には、運用利益から分配される「普通分配金」と元本から払い戻される「特別分配金」があります。詳細は後述の「分配金」に関する記載をご覧ください。
このように、投資信託は運用会社に日々の運用を代行してもらう商品で、投資している株や債券等が値上がりすることによって利益を得ることができます。
この基本的な構造を踏まえた上で、基準価額がどのように算出されるのか見ていきましょう。
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投資信託の基準価額の計算式
「基準価額」とは、投資信託の1口あたりの値段のことで、1口1円で運用が開始された投資信託は、1万口あたりで表示されています。*1
1口あたりの値段は以下の計算式で算出されます。新聞やホームページで見ることのできる基準価額の値は、一口あたりの価格×10,000口にて公表されます。
出所)投資信託協会「投資信託の基礎知識」
純資産総額とはファンドの大きさのことで、組み入れられている株式や債券等の資産の時価総額のことです。
集まった資金を使って運用会社は運用を行いますが、資金が流出入することによって純資産総額は増えたり減ったりします。また、組み入れられている資産の価格変動によっても増減があります。
総口数とは、投資信託の商品を保有している全ての投資家の受益権口数合計のことです。
この総口数は、新たに投資家がその商品を購入すれば増え、すでにその商品を保有していた投資家が売却すれば減っていきます。
純資産総額や総口数は日々増減します。上記の計算式に基づいて基準価額も日々算定・公表されます。
リアルタイムで刻々と価格が変わっていく株式相場や為替相場と違い、投資信託の場合、基準価額は1日に1回だけ算出されます。*2
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基準価額が変動する3つの主な要因
基準価額は日々変動していくことになりますが、その主な要因として押さえておきたいのは以下の3つです。
- 運用成果
- 信託報酬
- 分配金(普通分配金・特別分配金)
投資信託に投資する際には、それぞれの価格変動要因の影響を意識しながら基準価額の推移を見ていくといいでしょう。
では、それぞれについて詳しく説明していきます。
運用成果
基準価額の増減において最も重要な要素が、運用会社による運用成果です。
投資信託は株式や債券等の有価証券に投資しますので、それぞれの市場の変動の影響を大きく受けます。加えて海外への投資の場合には為替の変動についても影響があります。
運用がうまくいけば純資産総額は増えて基準価額は上昇し、逆に運用がうまくいかなければ純資産総額は減って基準価額は下落していきます。
投資信託で利益をあげるには基準価額の上昇は欠かせませんが、その鍵を握るのがこの運用成果です。
自分が保有している商品の運用成果の動向が市場平均と比べて良いのか悪いのか、購入後もしっかりチェックしておく必要があります。
信託報酬
信託報酬とは、運用会社をはじめとする関係会社が投資信託を運営するにあたって行う各種業務に対して支払われる手数料のようなものです。
投資信託の商品ごとに信託報酬がどれだけ支払われるかはあらかじめ料率が決められています。
そのため、もし同じような運用成果が見込まれる商品同士で比べた場合、信託報酬の率によって基準価額にも変化が生じます。
日々の信託報酬の影響は小さいのですが、運用期間が長くなれば影響も大きくなるため考慮が必要です。
なお、信託報酬率をチェックする際には、その商品がインデックス型かアクティブ型なのかも確認してみましょう。
両者を比較すると、一般的にインデックス型の方が信託報酬率は低く、アクティブ型の方が高い傾向があります。
信託報酬は純資産総額から毎日差し引かれており、基準価額にも影響を与えています。
分配金(普通分配金・特別分配金)
分配金は投資信託が株式や債券に投資し、運用して得た収益を、ファンドの決算時に保有口数に応じて投資家に分配するお金です。
分配金はファンドの財産(純資産総額)から支払われますので、分配金を支払うとそのぶん基準価額は下落することになります。
出所)投資信託協会「投資信託の基礎知識」
なお、分配金はそれぞれの投資家の購入金額(個別元本)に応じて課税の取り扱いが異なることがあります。
- 普通分配金
- 特別分配金
普通分配金とは追加型株式投資信託の分配金のうち、受益者の個別元本を上回る部分から支払われる分配金のことです。分配金支払後の基準価額と受益者の個別元本を比較し、個別元本を上回っている場合には、全額普通分配金になります。分配金支払後の基準価額が個別元本を下回る場合は、支払前の基準価額と個別元本との差額部分が普通分配金、支払後の基準価額と個別元本との差額部分は元本払戻金(特別分配金)になります。普通分配金は配当所得として課税されますが、元本払戻金(特別分配金)は元本の一部払い戻しとみなされ、非課税扱いとなります。
また、投資信託の分配金の支払い頻度は毎月支払われるものから年1回だけのものまでと投資信託によってさまざまです。分配金額も決算や分配方針によってさまざまであり、状況によっては支払われないこともありますので注意が必要です。
自分が受け取った分配金がどちらのタイプの分配金なのかは、しっかり把握しておくことが大切です。
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まとめ:基準価額の仕組みをしっかりと理解しよう
今回は、投資信託の基準価額について解説してきました。
基準価額の計算方法や変動要因について投資信託に投資するのであれば、基準価額についてはしっかり理解しておきましょう。
*1 出所)投資信託協会「投資信託の基礎知識」
*2 出所)三菱UFJ銀行「1.投資信託の選び方 -基準価額の変動要因/ファンド選びの注目ポイント/基準価額の変動要因」