- 2022.10.24
- mattoco Life編集部
今さら聞けない専門用語、レグテックってどういう意味?フィンテックとの違いは?
金融危機や経済のグローバル化を背景に、金融に関する法規制が日々拡大・複雑化しています。国や金融機関では、規制やコンプライアンスへの対応コストが大きく増加しており、その問題を解決する手段として「レグテック」が注目されています。
レグテックとはどのようなもので、私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょうか。
今回は、レグテックの概要や主要な分野、導入により期待される効果について解説します。
レグテックとは
レグテック(RegTech)とは、「Regulation(規制)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。ブロックチェーンやAI(人工知能)、ビッグデータ解析といった革新的技術を活用することで、複雑化する金融規制へより効率的に対応する動きを意味します。*1
レグテックは、欧米を中心に使われるようになった言葉です。日本ではまだ認知度が低い状況ですが、欧米諸国では取り組みが推進されています。
レグテックが注目される背景には、2008年の金融危機(リーマンショック)以後の金融規制強化や経済のグローバル化があります。
金融機関は複雑化する規制に対してスピード感のある対応を求められており、コンプライアンス(法令遵守)対応コストが肥大化しています。2019年に全世界で実施された法規制の変更は56,000件を超えるという報告もあり、テクノロジーの活用による効率的な対応が不可欠な状況です。*2
膨大な規制対応を満たすために、欧米を中心にレグテックという考え方・取り組みが広がりました。
レグテックとフィンテックの関係
レグテックと似た言葉に「フィンテック」があります。フィンテックとは、「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。金融サービスと情報技術を結びつけ、革新的なサービスを創出する動きを意味します。*3
フィンテックは日本でも広く認知されており、代表例である「インターネットバンキング」「家計簿アプリ」「クラウドファンディング」などは、個人に身近な金融サービスとして定着しています。
レグテックは金融分野における規制対応に活用される技術として発展してきたため、フィンテックの一部と理解されることもあります。確かに領域として重なる部分は多いものの、レグテックは必ずしも金融分野に限定されるものではありません。*4
たとえば、デジタル庁は以下のような法制事務のデジタル化について、レグテックの活用を検討しています。*5
- 契約書の自動作成・AIレビュー
- 契約情報の自動集約・解析(危険条項の自動検出・修正サジェスト)
- スマートコントラクトによる契約の自動執行・履行管理
レグテックは規制対応に関する技術を幅広く含むものであるため、今後は金融以外の分野での活用も期待されます。
レグテックとスプテックの違い
「スプテック(またはサプテック)」とは、「Supervisory(監督)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。革新的技術を活用して監督業務等を効率化する仕組みで、レグテックと併記されることがよくあります。*6
レグテックが規制される側(主に金融機関)の取り組みであるのに対し、スプテックは金融機関を規制する側(金融当局)の取り組みであることが大きな違いです。つまり、レグテックとスプテックは表裏一体の関係にあります。
スプテックによって金融機関の取引データなどの収集・分析能力が向上すれば、より最適なタイミングで適切な監督を行うことが可能になります。また、市場のシステミック・リスク(金融機関の支払不能、市場決済システムの機能不全など*7)を迅速に把握し、影響を最小限に抑えるといった効果も期待されます。
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レグテックが展開されている分野
金融規制は日々拡大し、複雑化していることからさまざまなソリューション(課題解決策)が生まれています。その中でも、レグテックの主要な分野として挙げられるのが以下の5つです。*8
ブロックチェーンなどの革新的技術を活用することにより、金融事業者は複雑化する金融規制に対して効率的に対処することが可能となります。
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レグテックに期待される効果
レグテックは新たな技術を活用することで、従来は手作業で行っていた規制関連業務を自動化できることが大きな特徴です。民間金融機関(被規制機関)においては、以下のような効果が期待できます。*9
- コンプライアンスコストの低減
- 従業員の生産性向上
- 事業の柔軟性向上
- リスクマネジメントやガバナンスの強化
レグテックによって報告プロセスが簡素化され、人的リソースを節約できれば、コンプライアンスコストの低減が可能です。これまで規制関連業務に充てていた時間をより付加価値の高い業務に使えるようになるため、従業員の生産性が向上し、事業拡大に注力できます。
また、内部統制手段の改善によって、リスク管理体制やガバナンスの強化にもつながります。
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まとめ
レグテックは、複雑化する金融規制に対応する手段として注目されています。国内の認知度はまだ低いものの、今後はフィンテックのような広がりを見せるかもしれません。個人向け金融サービスにも影響を与える可能性があるので、国や金融機関の動向を注視しておきましょう。
*1 出所)経済産業省「RegTechの海外・国内動向と我が国将来の規制の在り方に関する調査P3」
*2 出所)経済産業省「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2 アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」P69
*3 出所)日本銀行「FinTech(フィンテック)とは何ですか?」
*4 出所)経済産業省「RegTechの海外・国内動向と我が国将来の規制の在り方に関する調査」P4
*5 出所)デジタル庁「法令のデジタル原則への適合性確認のプロセス・体制について」P1
*6 出所)金融庁「革新的技術分野の推進に向けた施策および金融分野におけるRegTech/SupTechに関する調査報告書」P434~435
*7 出所)日本銀行「システミック・リスクとは何ですか?」
*8 出所)経済産業省「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2 アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」P69~70
*9 出所)金融庁「革新的技術分野の推進に向けた施策および金融分野におけるRegTech/SupTechに関する調査報告書」P435~436