投資に興味はあっても「損をしたくない」という気持ちが強く、なかなか投資を始められない人もいるのではないでしょうか。その場合には、株式投資よりも低リスクでの運用が可能な「債券投資」も選択肢の一つです。
ただし、債券投資も元本割れの可能性があるため、仕組みを理解したうえで投資を始めることが大切です。今回は債券投資の特徴やメリット、リスクについて解説します。
債券投資とは?
債券とは、国や企業など(発行体)が資金調達をするために発行する借用証書のようなものです。保有中は定期的に利子が支払われ、満期を迎えると元本(額面金額)が返還されるのが一般的です。*1
債券は発行時に利率や満期などの条件が決められています。基本的に元本保証の預貯金に比べて、金利水準が高い傾向にあるのが特徴です。利率は発行体の信用度や市場金利などに応じて設定されます。市場で取引されるため、中途売却も可能です。
(目次へ戻る)
債券の主な分類
債券にはさまざまな種類があり、発行体や利子の受け取り方で分類できます。ここでは、債券の主な種類と特徴を紹介します。
発行体による分類
債券を発行体で分類すると以下の3種類があります。*2
- 公共債
- 民間債
- 外国債券
公共債は、国や地方自治体などが発行する債券です。国が発行体である国債が代表的です。通常の国債のほかに、個人のみ購入できる「個人向け国債」もあります。個人向け国債は、元本部分の価格が変動しないのが特徴です。
民間債は、特定の金融機関や一般企業が発行する債券です。特定の金融機関が発行するものを金融債、一般企業が発行するものを社債といいます。
外国債券は、通貨・発行場所・発行体のいずれかが外国である債券です。国や中央政府などが発行するソブリン債、世界の公的国際機関が発行する国際機関債、外国の事業会社や金融機関が発行する外債などがあります。外国債券の多くは外貨建てで、利率は格付けや外国の市場金利等に左右されます。
利子の受け取り方による分類
債券は利子の受け取り方によって以下2つに分けられます。*3
- 利付債
- 割引債
利付債は、定期的に利子が受け取れる券です。満期を迎えると元本(額面金額)が返還されます。国内債券の多くは利付債で、利払いのタイミングや満期は債券によって異なります。
割引債は、定期的な利子がない債券です。額面金額より低い価格で発行され、額面金額で償還されます。途中の利払いはありませんが、投資金額と満期時の受取金額の差額が利子に相当します。利子の管理が不要で、複利効果が期待できるのがメリットです。
(目次へ戻る)
利率と利回りの違い
債券投資を行う場合は、利率と利回りの違いを理解しておくことが大切です。*4
- 利率:額面金額に対して毎年受け取る利子の割合
- 利回り:投資金額に対する利子も含めた年単位の収益の割合
具体例として、年利率3%の債券を100万円購入し、3年間保有後に売却するケースについて確認しましょう(税金、手数料などは考慮外)。
103万円で売却すると、3年間のトータル収益は12万円(利子9万円+売却益3万円)です。1年あたりの収益は4万円、利回りは4%となります。
一方、97万円で売却すると、3年間のトータル収益は6万円(利子9万円+売却損▲3万円)です。1年あたりの収益は2万円、利回りは2%となります。
このように、利率は同じでも、売却損益によって債券の所有期間利回りは変動します。
なお、上記債券を単価100円で購入し満期まで保有した場合の最終利回りは3%となります。
(目次へ戻る)
債券価格と金利の関係
通常は市場金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がります。*4
市場金利が上がると新たに発行される債券の利率も上がるため、既に発行されている債券の魅力が薄れます(価格が下がる)。反対に、市場金利が下がると新たに発行される債券の利率も下がるため、既に発行されている債券の魅力が増します(価格は上がる)。
債券を中途売却する場合、市場金利の動向によっては売却損が生じる可能性があるので注意が必要です。
(目次へ戻る)
債券の格付け
債券の格付けとは、債券の信用度をアルファベットなどで表したものです。*5
格付機関がそれぞれの調査に基づいて評価しています。そのため、同じ債券でも格付会社によって評価が異なることがあります。
格付けの最上位(最も信用度が高い)が「AAA(トリプルエー)」です。一般的に「BBB(トリプルビー)」以上は、デフォルト(債務不履行)のリスクが低い投資適格債券とされています。
「BB(ダブルビー)」以下は投機的格付け債券と呼ばれ、デフォルトリスクが高まります。格付けが高いほど利率が低く最終利回りは低くなります、また格付けが低いほど利率が高く最終利回りは高くなる傾向にあります。
*上記格付けは各格付け評価機関により表記が異なります
(目次へ戻る)
債券投資のメリット
債券投資のメリットは以下の通りです。
満期保有で額面金額を受け取れる
債券は、満期まで保有すれば額面金額で償還されます。保有期間中の債券価格は変動しますが、満期保有を前提に投資する場合は価格変動を過度に気にする必要はありません。
*債務不履行(デフォルト)の場合はこの限りではありません。
一定の利子を受け取れる
債券は元利金の支払いが約束された有価証券です。発行時に将来のキャッシュフローが決まっているため、投資の見通しをたてやすいでしょう。
中途売却で現金化できる
債券を保有中にまとまった資金が必要になった場合は、中途売却によって現金化が可能です。ただし、市場金利の動向によっては元本割れの可能性があります。
(目次へ戻る)
債券投資のリスク
債券投資はメリットだけでなく、以下のようなリスクもあります。
信用リスク
債券の発行体が破綻する可能性があります。*6
債券を発行した国や会社の財務内容が悪化すると、元本の返還や利払いが予定通り行われなくなる恐れがあります。元本を大きく棄損する可能性がありますので、債券の格付けを確認し、発行体の信用度を見極めることが大切です。
価格変動リスク
債券の価格は市場金利の動向に応じて変動します。*6
多くの債券は、満期まで保有すると額面金額で償還されます。しかし、中途売却する場合は市場価格で取引されるため、売却するタイミング次第で売却価格が購入価格を下回る可能性もあります。売却損を避けるには、満期まで保有することを前提に投資を検討しましょう。
為替変動リスク
為替レートの変動によって、為替差損が生じる可能性があります。*6
外国債券の場合、償還・売却時の為替レートが購入時より円安なら為替差益を得られますが、円高になると為替差損が発生します。外国債券に投資する場合は、為替相場の動向を確認しておきましょう。
カントリーリスク
債券の発行体が所在する国や地域の政治・経済環境が悪化することで、格付けの低下やデフォルトなどによる債券価格の下落などが生じる可能性があります。*6
外国債券にはカントリーリスクがあるため、投資対象国の政治・経済の状況を確認しながら投資判断を行う必要があります。このようなカントリーリスクを軽減するため、投資対象国を選定し、その後も状況をウォッチすることが重要です。一般的には、先進国より新興国のほうがカントリーリスクは高い傾向にあります。
(目次へ戻る)
債券投資と投資信託の違い
債券投資は、債券を直接購入する以外に債券ファンド(債券を中心に運用される投資信託)に投資する方法もあります。
投資信託は、複数の投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家がさまざまな債券を組み合わせて運用を行います。運用をプロに任せられるため、自分で投資する債券を個別に選ぶ必要はありません。複数の債券に分散投資を行うことで、リスク軽減効果も期待できます。
投資信託は購入時手数料や信託報酬(保有中の運用管理費用)などのコストがかかります。商品によって手数料は異なるため、コストを確認して投資するファンドを選びましょう。
また、投資信託は分散投資によるリスク軽減が期待できますが、元本割れのリスクはあります。
*投資信託で組み入れている個別の債券が償還しても投資信託そのものが償還するわけではありません。したがって債券に投資する投資信託の償還は、額面金額が確保されるわけではなく個別債券の償還とは意味が異なる点に注意が必要です。
(目次へ戻る)
まとめ
債券は発行時に満期や利払いの条件が決まっており、投資の見通しをたてやすいのが特徴です。ただし、満期保有を前提に投資する場合であっても、格付けなどで発行体の信用度を見極める必要があります。債券投資のリスクを軽減したい場合は、複数の債券への分散投資を検討しましょう。
*1 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方(そもそも債券って何?)」
*2 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方(どんな種類がある?)」
*3 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方(利子の受け取り方で分類すると?)」
*4 出所)日本証券業協会「資産運用と証券投資 スタートブック(2022年版)」P51
*5 出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方(信用力を確認するには?)」
*6 出所)日本証券業協会「債券投資のリスクって何?」