昨今、様々なニュースで取り上げられる機会が多くなったNFTや暗号資産(仮想通貨)ですが、その仕組みや意味について、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。
どちらもブロックチェーンによって成り立っており、注目を集めている技術です。
アディダスやナイキなどのファッションブランドがNFT市場に参入したり、国の法定通貨にビットコインを採用する国が出てきたりと、日々存在感を増しています。
そこでこの記事では、ますます活用が期待されるNFTや暗号資産の仕組み、それぞれの違いを解説していきます。
ブロックチェーンとは
まずはブロックチェーンの仕組みを解説していきます。
ブロックチェーンはNFTや暗号資産を作り出すベースの技術なので、この仕組みを理解しておくことは重要です。
ブロックチェーンとは、一つ一つの取引(ブロック)が暗号技術によって、1本の鎖(チェーン)のように連結され、記録されていく仕組みです。*1
この仕組みの特徴の1つとして、データの改ざんや破壊が非常に困難な点が挙げられます。
出所)経済産業省 平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備p.3 を筆者加工
上記の図がブロックチェーンのイメージ図です。
真ん中の青いブロックには、これまでの全ての取引履歴が記録されている左側の黄緑のブロックの情報に加えて、新たな取引が記録されています。そして次の取引が記録される際には、今までの全ての取引履歴が記録されている青いブロックに、今回の記録が追加されたオレンジのブロックが連結されます。
ブロックチェーン上でデータの改ざんを試みると、その取引以降の全てのブロック情報も改ざんしないといけないため、データの改ざんが非常に困難となります。
また、ブロックチェーンには「分散型台帳技術」という管理システムが採用されています。
通常の管理体制は、集中管理型システムという、第三者機関が一括で取引履歴を管理して信頼性を担保している形をとっていました。
しかし、ブロックチェーンにはこの第三者機関が存在せず、全ての取引を全員で同期し共有することで、信頼性を担保しています。
出所)経済産業省 平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備p.3
分散型台帳のメリットは、一部のシステムに障害が起きても、システム全体に対する影響を抑制することができる点です。*2
以上がブロックチェーンの主な特徴です。この仕組みを理解することで、NFTや暗号資産の理解をより深めることができます。
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NFTとは
NFTとはNon Fungible Tokenの略称で、日本語では「非代替性トークン」と訳される、読んだだけでは理解が難しそうな言葉です。
簡単に解説すると、デジタルデータに唯一性を持たせて、偽造や改ざんが出来ないデータにするということです。*3
具体的にどのように活用されているのかを、アメリカのNBAがDapper Labs社と共同で提供しているサービスである”NBA Top Shot”というサービスを例に挙げて紹介します。*4
これは、有名選手のシュート動画などをパッケージでNFTとして発行し、販売をしているサービスです。このデータには唯一性がありますので、購入者は世界に一つだけの動画を手にしたこととなります。
この「世界に一つ」という点が非代替性であり、替えが効かないという意味です。そして、この非代替性に価値を見出し、レブロン・ジェームズのダンクシュート動画が23万ドルなどの高額で取引される事例もありました。
ブロックチェーンが誕生するまでのデジタルデータは、たとえ上記のレブロン・ジェームズのダンクシュート動画を手に入れたとしても、その所有権が自分にあるという証明や、偽造データの判別が困難でした。
しかし、NFTとして発行することで所有者が明確になり、かつ取引履歴も記録されるので、所有者の改ざんも困難となります。
また、売買時の手数料はNBAや選手会に配分されるので、クリエイターやアーティストの収益多元化という観点においても可能性が見出されています。
音楽データなどがネット上でコピー品や違法ダウンロードとして出回り、アーティストの収益に繋がらないという問題点が解決されるからです。
このようにNFTとは、デジタル化が進む現代において、デジタルデータに所有権を持たせることで、唯一性を担保するという将来性のある仕組みです。
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ブロックチェーンとNFTの関係性
ブロックチェーンとNFTの概要を解説したところで、改めてどの点において両者の関係性が成り立っているかを解説します。
一言で表すと、
「ブロックチェーンによって、NFTとして発行するとデータの唯一性が担保される」
ことです。
先ほどのNBA動画の例を再度使い、レブロン・ジェームズの動画が次々と売買されて所有者が変わっていくケースを考えましょう。この時、ブロックチェーンによって取引履歴が残されていくので、「現在の所有者が誰であるか」が明確になります。また、この取引履歴は分散型台帳によって同期され、データの改ざんを試みても他の管理者の目に留まり、改ざんが困難であるため、NFTとしての価値が高まるのです。
このように、ブロックチェーンがあるからこそ、NFTに唯一性があり、価値が見出されるという関係性になっています。
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NFTと暗号資産の違い
最後に、NFTと暗号資産の違いを解説します。
どちらもブロックチェーンによって成り立っている点は同じです。違いは、NFTが非代替性トークンであるのに対し、暗号資産は代替性トークンであるという点です。
一時期話題になったニュースとして、Twitter創業者のジャック・ドーシーが初ツイートをNFT化し、販売したところ、約291万ドルで落札されたという出来事がありました。
このジャック・ドーシーのツイートは非代替性があり、他の人が同じ内容でツイートしても価値が全く異なります。
つまり、替えが効かないという非代替性が働いています。
このような替えの利かないNFTに対して、ビットコインのような暗号資産は替えが効きます。
Aさんの持っている1ビットコインとBさんの持っている1ビットコインの価値は同じです。もしAさんが1ビットコインの商品を買う際、持ち合わせがなく、引き出せない状況であったとしても、Bさんに1ビットコインを借りることで購入が出来ます。
このように、NFTと暗号資産の違いは「替えが効くかどうか」という点です。
つまり、何度か登場している「唯一性」がポイントとなります。
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まとめ
今回はNFTと暗号資産に採用されているブロックチェーンから、NFTの仕組み、暗号資産との関係性を解説してきました。近年ではNFTを用いたゲームで稼ぐPlay to Earnや、移動距離によって稼ぐMove to Earnなど様々な場面でNFTが利用されています。デジタル化が進むなか、改ざんされにくく、データに唯一性を持たせることができるのは非常に意味のある技術です。ファッション業界、アート業界もこの技術に注目しているため、仕組みをしっかりと理解し、どのように活用されているかを考え、今後の発展に注目していきましょう。
*1 出所)一般社団法人 全国銀行協会「ブロックチェーンって何?」
*2 出所)一般社団法人 全国銀行協会「ブロックチェーンって何?」
*3 出所)経済産業省 事務局説明資料(デジタル時代の規制・制度のあり方について)p.11
*4 出所)経済産業省 事務局説明資料(デジタル時代の規制・制度のあり方について)p.11