- 2022.07.25
- mattoco Life編集部
資産形成に取り組みながら社会貢献も!ESG債投資を検討してみよう
ESG債は、資金使途が環境問題の改善などに限定されている債券です。地球温暖化やSDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりから、ESG債に注目が集まっています。
ESG債は発行体や投資家にとってどんなメリットがあり、投資する際はどんな点に注意すればよいのでしょうか。
今回は、ESG債の概要や種類、投資するメリット・デメリットについて解説します。
ESG債とは
ESG債とは、環境問題の改善や社会貢献に関連する事業を資金使途とする債券のことです。*1
日本証券業協会がSDGsに貢献する債券の統一呼称として、「SDGs債」を用いることを提唱していることから、SDGs債とも呼ばれます。*2
一般的な債券の場合、資金使途は特に限定されません。一方、ESG債は環境問題などの事業に限定して使われます。事業の進捗状況や資金管理について定期的に情報を開示することが推奨されており、第三者機関から認証を受けることもあります。
ESGは「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の3つの頭文字をとった言葉です。売上や利益といった財務情報だけでなく、ESG要素にも配慮した経営を行う企業に投資することを「ESG投資」といいます。*3
ESG投資の考え方は株式で広がりましたが、最近では債券投資においてもESGが取り入れられています。
ESG債の発行額と発行件数の推移
日本国内で公募されたESG債(SDGs債)の発行額と発行件数の推移は以下の通りです。
出所)日本証券業協会「SDGs債の発行状況」
ESG債の発行額は2016年の450億円から大きく増加し、2021年には2兆9,270億円に達しています。発行件数も2016年は3件でしたが、2021年には190件まで増えています。この結果から、国内においてESG債が急速に広がっていることがわかります。
ESG債が今後どの程度普及するかは不透明な部分もありますが、一般企業や金融機関、政府系機関などの資金調達手段として定着する可能性はあるでしょう。
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ESG債の種類
ESG債にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは、代表的なESG債を3つ(グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンド)を紹介します。なお、これらの債券には共通要素があります。いずれの債券も、国際資本市場協会(ICMA)が策定したそれぞれの債券の原則において、資金調達の使途、プロジェクトの評価と選定のプロセス、調達資金の管理、レポーティングに関する規定がされています。
グリーンボンド
グリーンボンドとは、地球温暖化などの環境問題の改善に関する事業(グリーンプロジェクト)に必要な資金調達のために発行する債券です。*4
ESG債の中でも発行額が大きく、2021年に発行されたESG債の約37%をグリーンボンドが占めています。*5
ソーシャルボンド
ソーシャルボンドは、衛生・福祉・教育など社会的課題の解決に関する事業(ソーシャルプロジェクト)に必要な資金調達のために発行する債券です。*6
ソーシャルボンドも発行額が大きく、2021年に発行されたESG債の約40%を占めています。*5
サステナビリティボンド
サステナビリティボンドは、環境問題と社会的課題双方のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券です。*7
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ESG債のメリット
ESG債は発行体と投資家の双方にメリットがあります。具体的には以下の通りです。
発行体のメリット
ESG債の発行により、ESGに絡む社会的な貢献ができることは勿論、それに加え、ESGやSDGsへの取り組みを外部にアピールできるのがメリットです。
ESG投資は機関投資家だけでなく、個人投資家にも広がっています。環境問題や社会的課題の解決に向けた活動は、企業価値を維持・向上させるうえで欠かせないものになりつつあります。
投資家のメリット
投資家にとっては、投資を通じて社会貢献ができるのがメリットです。
一般的にESG債の資金使途は、環境問題の改善や社会的課題の解決に限定されています。ESG債に投資すれば、その資金がSDGsなどの活動に使われるため、結果として社会貢献につながります。
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ESG債のデメリット・リスク
ESG債は元本保証ではなく、一般的な債券と同じように「価格変動リスク」「信用リスク」「為替変動リスク」などがあります。さらに、以下のようなESG債特有のデメリット・リスクも存在します。
グリーンウォッシング問題
グリーンウォッシングとは、実態がないにもかかわらず、広告などのイメージ戦略によって環境問題や社会的課題の解決に貢献していると見せかけるような企業行動のことです。*8
ESG債は資金使途が限定された債券ですが、資金が本当に特定のプロジェクトのみに使われているかを投資家が把握するのは簡単ではないでしょう。
ESG債の発行にはガイドラインが策定されているものの、準拠は任意となっており、すべてのESG債がガイドラインに準拠して発行されているとは限りません。
ESG債に投資する場合は「資金が適切に使われているか」「第三者機関から評価を得ているか」といった点を確認し、投資先として問題がないかを見極める必要があります。
リターン低下の可能性がある
ESG債は、プロジェクトの進捗状況や資金管理などについて定期的にレポートを作成したり、第三者機関の評価を得たりしなくてはなりません。そのため、一般的な債券に比べて手間やコストがかかる傾向にあります。
これらのコストが価格に転嫁され、通常より低い利回りで発行される場合、投資家が得られるリターンが低下する恐れがあります。*8
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ESG債に投資する方法
ESG債へ投資する場合は、ESG債を取り扱う証券会社で購入申し込みをします。ESG債を選ぶ際は、銘柄名に「グリーンボンド」「ソーシャルボンド」といった言葉が入っているかで判断するといいでしょう。
ESG債の最低購入金額や利率、利払日、償還期限などの発行条件は銘柄、発行体によって異なります。諸条件をよく確認してから購入申し込みを行いましょう。
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まとめ
ESG債は資金使途が限定されており、投資を通じて社会貢献ができるのがメリットです。一方で、その活動が実態を伴っているかを見極めるのが難しく、リターン低下の可能性もあります。メリット・デメリットを理解したうえで、ESG債への投資を検討しましょう。
*1 出所)三菱UFJ信託銀行「ESG債(SDGs債)」
*2 出所)日本証券業協会「SDGs推進に関する日証協の取組みについて」P14
*3 出所)三菱UFJ銀行「今、注目のESG投資とは?」
*4 出所)日本証券業協会「グリーンボンド」
*5 出所)日本証券業協会「SDGs債の発行状況」
*6 出所)日本証券業協会「ソーシャルボンド」
*7 出所)日本証券業協会「サステナビリティボンド」
*8 出所)三菱UFJ信託銀行「債券におけるESG投資について」P4