仕組債は、一般的な債券にはない特別な仕組みを持つ債券です。比較的高い利回りが期待できる一方で、特有のリスクも存在します。仕組債への投資については、商品の特徴を理解しておくことが大切です。
今回は仕組債の特徴や代表的な種類、メリット・デメリット、リスクについてわかりやすく解説します。
仕組債とは
仕組債とは、スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を組み込んで運用を行う債券です。*1
スワップは金利や通貨を交換する取引、オプションはあらかじめ約束した価格で将来(1ヵ月後、1年後など)に売買できる権利を意味します。
債券にデリバティブを組み合わせ、元本や利金の支払いに一定の条件を設定することで、一般的な債券よりも高い利回りが期待できます。
多くの仕組債では、参考指標(特定銘柄の株価、株価指数など)の変動により償還日や償還金額、適用利率が変わります。具体的には以下のようなイメージです。
仕組債の対象が株式の場合には
- 対象株式の株価が設定範囲内で値動きすれば満期まで運用される
- 対象株式の株価が設定範囲より上昇した場合は早期償還となる
- 対象株式の株価が設定範囲を超えて下落した場合は元本割れすることがある
*上記はあくまで仕組債の一例であり、すべてを網羅するものではありません。
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仕組債に関する用語の意味
仕組債には専門的な用語が多く出てきます。仕組債の特徴を理解するために、関連用語の意味を確認しておきましょう。
ノックイン
ノックインとは、参考指標の価格が一定の水準(ノックイン判定水準)以下になることです。
ノックイン判定水準は「対象指数の行使価格×70%」のような形で設定されます。*2
ノックインとなった場合、償還金が額面より少ない金額で支払われたり、株式などで償還されたりする可能性があります。
ノックアウト
ノックアウトとは、参考指標の価格が一定の水準(ノックアウト判定水準)以上になることです。仕組債は一定期間ごとに判定日が設定されており、判定日でノックアウトとなった場合は満期前に元本が返還されます(早期償還)。
ノックアウトの判定水準(早期償還判定水準)は「対象指数の行使価格×110%」のような形で設定されます。*2
行使価格(当初価格)
行使価格とは、参考指標となる株式や株価指数などの受渡日の価格です。たとえば、仕組債の受渡日が2021年10月1日であれば、参考指標の2021年10月1日の価格を意味します。行使価格はノックインやノックアウト(早期償還)の判定基準に使われます。
デジタルクーポン
デジタルクーポンとは、参考指標の価格が一定の水準を上回るか下回るかで決定される利率のことです。具体例は以下の通りです。*3
利率決定日の対象株式の終値が
- 利率決定価格以上の場合は年10%
- 利率決定価格未満の場合は年1%
※利率決定価格は当初価格の80%
以上のようにデジタルクーポン債券は、参考指標の値動きに応じて何通りかの利率が適用されます。
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仕組債の代表的な種類
仕組債には具体的にどんな商品があるのでしょうか。ここでは、仕組債の代表的な種類である「EB債」と「リンク債」を紹介します。
EB債(他社株転換可能債券)
EB債とは、投資資金が金銭ではなく、現物株式に転換されて償還される可能性のある債券です。*3
ノックインとなった場合、その後も対象株式の株価が上昇しない場合は、満期償還日に投資資金が現物株式に転換されて償還されます。
株式に転換されて償還となった株式の時価によっては、実質的に元本割れして損失が生じることがあります。また、償還後株式にて継続保有した場合、株価がさらに下落して損失が拡大する恐れもあります。
リンク債(株価連動債)
リンク債とは、特定の株価指数などに連動して償還条件が変わる債券です。*4
日経平均リンク債の場合、日経平均株価が指定範囲内で推移すれば満期償還します。早期償還判定水準を上回れば早期償還となり、いずれも元本が返還されます。
ノックインとなった場合、日経平均株価がそのまま上昇しなければ下落率に応じて算出された金額で償還されるため、元本割れとなります。
基本的な仕組みはEB債と大きく変わりません。ノックインが発生した際にEB債は株式に転換されるのに対し、リンク債は金銭で償還されるのが相違点です。
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仕組債のメリット・デメリット
仕組債は、比較的高い利回りが期待できるのがメリットです。対象株式や株価指数の値動きによっては、一般的な債券よりも高い利回りでの運用ができる可能性があります。
一方で、仕組債はデリバティブが組み込まれており、償還や適用利率についてさまざまな条件が設定されているので構造が複雑でわかりにくく、対象株式や株価指数の値動きによっては利率が変わったり、元本割れする可能性があります。
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仕組債特有のリスク
一般的な債券には「信用リスク」「価格変動リスク」「為替変動リスク」「流動性リスク」などのリスクがあります。仕組債は上記に加えて、以下のような特有のリスクも存在します。
クーポン(利子)の減少リスク
仕組債の中には、参考指標の値動きに基づいて利率が変わるものがあります。デジタルクーポン債の場合、条件を満たせば高い利率が適用されますが、参考指標の価格が一定水準を下回ると低い利率が適用されてしまいます。
適用利率の条件等について確認しておくことが大切です。
償還金の減額リスク
参考指標の値動きに基づいて償還金額が決定される仕組債の場合、償還金額は参考指標の値動きに応じて変動します。値動きの状況によっては、投資資金よりも少ない金額で償還され、元本割れとなる可能性があります。
債務不履行(デフォルト)リスク
仕組債は債券にデリバティブが組み込まれており、複数の取引関係者が存在します。債券の発行体以外の取引関係者に債務不履行(デフォルト)が生じた場合にも、損失が生じる恐れがあります。
まとめ
仕組債はさまざまな条件が設定されており、仕組みが複雑な金融商品です。目論見書などに目を通し、償還や適用利率などの条件を十分に理解したうえで購入しましょう。
「どんなときに利益が出るのか」「どうなると損失が生じるのか」「どれくらい損失が出る可能性があるのか」などを確認しておくことが大切です。
利回りの高さだけに注目せず、特徴やリスクを十分に理解したうえで投資判断を行うことが大切です。
*1 出所)日本証券業協会「仕組債」とは?」
*2 出所)日本証券業協会「日経平均リンク債の特徴やリスクとは?」
*3 出所)日本証券業協会「EB債(他社株転換可能債券)の特徴やリスクとは?」
*4 出所)日本証券業協会「日経平均リンク債の特徴やリスクとは?」