元本も利率も国が保証?安心安全な個人向け国債ってどんな商品?

元本も利率も国が保証?安心安全な個人向け国債ってどんな商品?

金融商品の中には個人では購入できないものもありますが、逆に個人でしか購入できない商品もいくつか存在します。
個人の方に購入しやすいよう工夫されたのが個人向け国債です。個人向け国債はあまり投資に詳しくない個人でも安心して保有できるよう、この商品ならではの特徴を持っています。
個人向け国債のメリットとデメリットを説明したうえで、個人の資産形成にどのように活かしていけるかを解説します。

個人向け国債は個人が国にお金を貸す仕組み

国債とは投資家に対して国が発行する債券です
国債を購入した投資家はお金を国に貸して定期的に利子を受け取る貸方、国はお金を借りて定期的に利子を支払う借方となります。
この関係においての借用証書となるのが国債です。
個人向け国債は個人の国債保有をより促進する目的で導入された商品で、一般的な国債にはない3つの特徴を備えています。
次に挙げる3つの特徴は個人向け国債のメリットであり、原則として個人投資家だけ(※)に与えられた恩恵と言えます。

(※)特定贈与信託の受託者である信託銀行及び信託業務を営む金融機関でも保有することが可能としていますが、以降は原則通りに個人向けの商品として解説します。*1

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個人向け国債が持つメリット

個人向け国債のメリットを一つずつ解説していきます。

元本保証である

一般的に債券は市場金利が上昇すると債券価格は下落し、逆に市場金利が低下すると債券価格は上昇する傾向があります。
そのため一般的な債券商品を途中で売却すると、売却益や売却損が発生する場合があります。
ところが個人向け国債では中途換金時(原則1年以上の保有後)でも債券価格自体は変動しません。
個人向け国債は購入時の額面で国が買い取ることを保証しており、一般的な債券と違って中途換金しても元本部分の価格が変動しない仕組みになっています
「元本割れしない」「価格変動リスクがない」とも言い換えることができます。

金利上昇局面では「変動10年」で上昇に追随

「変動10年」は3タイプあるうちの唯一の変動金利商品です。
基準金利×0.66と基準金利より若干控えめではあるものの、金利上昇に追随できます。
そのうえ価格変動リスクがないため、金利上昇による債券価格下落が起こる心配がありません
市場で売買できる新窓販国債(平成19年10月から導入された「新型窓口販売方式」)(※)はいずれも固定金利なので、国債商品の中で変動金利はこの「変動10年」だけです。

最低金利保証がある

近年の国債価格と長期金利は日銀の金融政策から大きな影響を受けています。日銀は13年から、銀行から大量の国債を買い入れることで市場に出回る資金量の拡大を促す「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和政策を実施してきました。国債の価格を上昇させ、長期金利の低下を促すのが狙いの1つでした。
さらに日銀は16年1月、銀行が日銀にお金を預ける際の金利の一部をマイナスにする「マイナス金利政策」を導入しました。日銀にお金を預けても損をするため、国債を購入する銀行が増加。その後、世界景気の先行き不透明感が強まったため、安全資産である国債の人気が高まりました。国債の購入が増えた結果、16年2月には国内で初めて長期金利がマイナスを記録しました。*2このような低金利の局面においても個人向け国債の最低金利は0.05%(年率)が保証されておりマイナス金利に陥ることはありません

購入単位が安く設定されている

個人向け国債は1万円から購入が可能です。
個人で購入できる「新窓販国債」は5万円単位、社債は数十万円単位となることもあります。
個人向け国債は、少額で購入しやすい商品設計となっています。
メリットをまとめましょう。

  1. 「元本保証」 額面で国が買い取り
  2. 実勢金利が上がれば受取利子が増える。(変動10年債)
  3. 「最低金利保証(0.05% 年率)」 
  4. 「少額投資」 1万円からの投資が可能

以上の点が主なメリットとなります。

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個人向け国債が持つ3つのデメリット

安全面に優れた個人向け国債にもデメリットと言える点が存在します。

1年以上経過しないと換金できない(特例を除く)

個人向け国債は原則として発行から1年間は中途換金ができません
ただし、口座名義人(特定贈与信託の受益者を含む)がお亡くなりになった場合又は災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けられた場合については、第2期利子支払日前であっても中途換金することができます。*1
このように死亡や被災といった外部要因による特例でしか1年未満の中途換金は認められていません。
購入時は最低1年以上の運用ができる資金で購入しましょう。

中途解約時に直前2回分の利子が差し引かれる

利子は半年に1回出るため、2回分の利子はちょうど1年分に相当します。
先に述べた通り最初の1年間は原則的に換金できないため2回分の利子が差し引かれても元本割れの心配はありませんが、利子収入が減ってしまいます。
中途換金可能ではあるものの、なるべく満期償還までの保有を前提とした購入がいいでしょう。

基準金利より利率がやや低くなりがち

個人向け国債には3種類の商品タイプがあり、それぞれ異なる利率が設定されています。*3

  • 変動10(変動金利型10年満期):基準金利×0.66
  • 固定5(固定金利型5年満期):基準金利-0.05%
  • 固定3(固定金利型3年満期):基準金利-0.03%

基準金利とは10年固定利付国債の平均落札利回りから求められる、文字通り算出の基準となる利率です。
利率の計算式の通り、個人向け国債では基準金利をいずれも下回る利率となります。
ただし0.05%の最低金利保証があるため、マイナス金利またはゼロ金利といった低金利下では基準金利を上回る運用が可能です。
個人向け国債はきわめて安全性の高い商品ではあるものの、メリットとこれらデメリットを比較しその商品性を十分に理解したうえで購入を検討しましょう。

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個人向け国債の賢い使い方

個人向け国債のメリットとデメリットを踏まえて、実践的な投資方法を3点解説します。

価格変動リスクのない安全資産としての利用

何種類もの金融商品を組み合わせてリスクを抑えながらリターンの獲得を目指すポートフォリオ運用を例に考えてみましょう。
相対的にリスクが高い株式ファンド100%で投資していた場合と、株式ファンド90%と個人向け国債10%の保有とした場合とを比較すると、期待リターンは株式ファンドの方が高いため、個人向け国債を10%組み込むことでポートフォリオ全体の期待リターンは低下してしまいます。
しかし、株式の価格変動がポートフォリオに与える影響が10%軽減され、株式100%の投資に比較すると価格変動が安定する効果を期待できます。
個人向け国債を組み入れる比率によってポートフォリオ全体の価格変動リスクを制御できるため、リスク管理をする方法の一つになります。

金利下落局面では「固定5年」「固定3年」で現利率をキープ

金利の下落が考えられる局面では「変動10年」では金利が下がっていってしまいます。
金利下落局面で活用したい商品が「固定5年」「固定3年」の固定金利商品です。金利が変動しても固定の個人向け国債では当初の利率が満期まで変動しません
金利が上昇していく局面と下落していく局面では選ぶべき商品タイプが変わってくることは予備知識として覚えておきましょう。

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まとめ

個人向け国債のメリットとデメリットを踏まえて、個人向け国債の投資について解説しました。
現在のような低金利の下、個人向け国債を購入することでリスクを抑えて資産を増やすことのできる商品となりうるかもしれません。
自分自身の投資方針をよく考え、安定的に運用できる商品の一つとして役立てください。

*1 出所)財務省「個人向け国債についてのよくある質問

*2 出所)財務省「国債金利情報

*3 出所)財務省「個人向け国債 商品概要

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