ポイント
インフラファンドは、太陽光発電設備などのインフラ施設に投資ができる金融商品です。近年は気候変動問題への意識が高まっており、ESG投資としても注目を集めています。
インフラファンドへの投資を検討する場合にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
今回は、インフラファンドの仕組みとメリット・デメリットについて詳しく解説いたします。
インフラファンドとは?
インフラファンドとは、再生可能エネルギー発電や空港、道路、鉄道といったインフラ施設が投資対象の金融商品のことです。多くの投資家から集めた資金でインフラ施設を保有し、その運用益が投資家に分配されます。幅広いインフラ施設が投資対象ですが、現在は太陽光発電設備を主な投資対象としております*11
2015年4月に東証インフラファンド市場が創設され、2022年3月時点で7銘柄が上場しています。*1 *2
インフラファンドは、証券口座を保有していれば株式と同じように売買可能です。保有中は年1〜2回の決算ごとに、投資金額に応じた分配金を受け取れます。
インフラ施設は生活に不可欠な資産であり、景気変動の影響を受けにくいことから投資ニーズが高まっています。また、太陽光発電などの再生可能エネルギー発電に投資できるため、ESG投資としても注目されています。
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インフラファンドの仕組み
インフラファンドは、再生可能エネルギー発電設備などをオペレーター(インフラ施設の運営者)に貸し出して賃貸料を受け取り、その賃貸料を原資に投資家に分配を行います。オペレーターは、再生エネルギーで発電した電気を電力会社などに売却して売電料を得る仕組みです。
再生エネルギー発電には固定価格買取制度(FIT制度)があり、一定期間にわたって固定価格で電気を買い取ることを国が保証しています。*3
固定価格買取制度によりオペレーターは一定の売電収入を得られるため、インフラファンドは安定した賃貸収入が期待できます。
インフラファンドには税務上の導管性が認められており、「配当可能利益の90%超を投資家に分配する」などの条件を満たすと実質的に法人税が免除される仕組みがあります。*4
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インフラファンドとJ-REITの共通点と違い
インフラファンドとJ-REITには以下のような共通点があります。
- 証券取引所に上場している(上場株式と同じように売買可能)
- 賃貸料等を原資に投資家に分配を行う
- 一定の条件を満たすと法人税が実質的に免除される(税務上の導管性)
インフラファンドはJ-REIT(不動産投資信託)と仕組みが似ていますが、
インフラファンドは主に太陽光発電設備に投資するのに対し、J-REITはオフィスビルや商業施設などの不動産が投資対象となっています。
J-REITを運営する投資法人は、不動産を貸し出して賃貸料収入を得ています。再生エネルギー発電の固定価格買取制度のようなものはなく、収益は入居率に左右されます。
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東証インフラファンド指数の算出について
東証インフラファンド指数とは、上場インフラファンド全銘柄を対象とした株価指数です。2020年3月27日を1,000(基準)とし、配当なし指数は15秒間隔のリアルタイム、配当込み指数は日次終値ベースで算出されます。*5
インフラファンド市場全体の動向を把握したいときは、東証インフラファンド指数の推移を確認するといいでしょう。
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インフラファンドのメリット
インフラファンドのメリットは以下の通りです。
少額からインフラ施設への分散投資が可能
再生可能エネルギー発電や空港、鉄道といったインフラ施設は、個人が簡単に投資できる資産ではありません。太陽光発電設備は個人でも取得することは可能ですが、まとまった資金が必要です。インフラファンドなら、少額からインフラ施設に分散投資が可能となります。
分配金利回りが比較的高い
インフラファンドは、分配金利回りが比較的高いのも魅力です。
2022年2月末現在の東証一部の株式平均利回り(加重平均利回り)は2.00%、J-REITの平均予想年間分配金利回りは3.90%です。*6 *7
一方、インフラファンドの平均予想年間分配金利回りは6.44%で、他の資産よりも高くなっています。*8
固定価格買取制度により安定した収益が期待できる
インフラファンドの収益は、再生可能エネルギー発電の固定価格買取制度に支えられています。
インフラ資産の貸付先であるオペレーターは、最長20年間にわたって再生エネルギーで発電した電気を固定価格で買い取ってもらえます。そのため、インフラファンドもオペレーターから安定した賃貸収入を得ることが可能です。
景気変動の影響を受けにくい
インフラ施設は、国民生活や経済活動に欠かせない社会基盤です。景気変動の影響を受けにくく、投資対象として安定的な収益が期待できます。個人の資産形成においても、分散投資先の1つとして活用できる可能性があります。
再生可能エネルギーの普及に貢献できる
地球温暖化などの気候変動対策として、世界の国々は温室効果ガスの排出量抑制に取り組んでいます。
2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を目指すことを宣言しました。*9
カーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの利活用に取り組んでいます。
インフラファンドの主な投資対象は太陽光発電設備なので、投資を通じて再生可能エネルギーの普及に貢献できます。
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インフラファンドのデメリット・リスク
インフラファンドには以下のようなデメリット・リスクも存在します。
元本割れの可能性がある
インフラファンドは上場しているため、株式と同じように投資口価格が変動します。値上がり益を得られる可能性がある一方で、売買タイミングによっては元本割れするリスクがあります。
インフラファンドは比較的高い分配金利回りが期待できますが、分配金収入を上回る売却損が生じれば、トータルでは損益がマイナスになってしまうので注意が必要です。
固定価格買取制度の変更・廃止リスク
固定価格買取制度は法律によって定められているので、国の政策判断によっては制度が変更・廃止される可能性があります。
また、固定価格買取制度の売電価格は年々下がっています。*10
設備の普及により発電コストも下がっているとしても、今後も現在の利回り水準が維持できるかは不透明です。
災害リスク
インフラ施設は実物資産であるため、地震や台風といった災害で被害が出る恐れがあります。被災して設備が一定期間稼働できなければ、オペレーターの収益性が低下してインフラファンドの運営に影響が出るかもしれません。
金利上昇リスク
インフラファンドは投資家から集めた資金だけでなく、金融機関の融資も利用してインフラ施設を購入しています。
変動金利で資金調達をしている場合、市場金利が上がると適用金利も上昇して返済負担が増えます。市場金利の上昇は、インフラファンドの財務状況の悪化につながる可能性があります。
インフラファンドに投資する際は、投資銘柄の借入金の状況などを確認しておくことが大切です。
税務上の導管性は20年間に限定されている
法人税が実質的に免除される税務上の導管性は、J-REITには恒久的に認められています。一方、インフラファンドは、再生エネルギー発電設備の貸付けを最初に行った日から20年間に限定されています。*11
適用期間経過後に税務上の導管性が認められなくなると、インフラファンドの税負担が増加して収益性が低下する恐れがあります。
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まとめ
インフラファンドは、分配金利回りが比較的高いのが魅力です。少額から太陽光発電設備に投資できるので、ESG投資としても活用できます。ただし、インフラファンドには特有のリスクも存在するため、仕組みを理解したうえで投資判断を行うことが大切です。
*1 出所)日本取引所グループ「概要(インフラファンド)」
*2 出所)日本取引所グループ「銘柄一覧(インフラファンド)」
*3 出所)経済産業省「固定価格買取制度(制度の概要)」
*4 出所)Jリートview(東京証券取引所)「第1回インフラファンド入門」
*5 出所)日本取引所グループ「東証インフラファンド指数」
*6 出所)日本取引所グループ「その他統計資料(株式平均・株式平均利回り)」
*7 出所)日本取引所グループ「月刊REITレポート(2022年1月版)」
*8 出所)日本取引所グループ「月刊インフラファンドレポート(2022年1月版)」
*9 出所)脱炭素ポータル(環境省)「カーボンニュートラルとは」
*10 出所)経済産業省「買取価格・期間等(固定価格買取制度)」
*11 出所)日本取引所グループ「投資リスク(インフラファンド)」